工場見学/東レ三島工場
2008年08月14日 (木曜日)
付加価値品生産で現役続行/日本初の合繊生産工場
日本化学繊維協会(化繊協)主催の合繊工場見学会が8日に行われ、化繊協加盟社の東レが専門紙や一般紙の記者を対象に三島工場(静岡県三島市)の繊維製造の生産工程を公開した。合繊生産では日本で最も古い歴史を誇る同工場の内部を紹介する。
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JR東海道本線三島駅北口から徒歩5分。この地に、日本初のポリエステル系合成繊維の生産工場として東レの三島工場が創業した。1958年のことである。
現在では繊維からフィルム、医薬品へと生産の幅を広げ、総合化学工場として前進を遂げた三島工場ではあるが、50年経った今でも繊維生産はまだまだ現役だ。「テトロン」(ポリエステル)長繊維の基幹工場として、高機能ストレッチ素材「フィッティ」など付加価値製品を主体に月2400~2800トンの生産を続けている。
その繊維生産で1970年に操業したのが第4工場だ。通常は6、7階に相当する4階建ての様式で、溶融紡糸により100品種ほどを生産している。
生産工程は、この高い建物の高低差を利用し、上から下へと流れていく仕組みだ。まずは原料のポリエステルチップを最上階へ。フルダルやセミダルなど6種類のチップを4階から1階部分へと乾燥させながら落下。乾いたチップを再度4階まで送り、高温で溶かした後、ろ過装置を通って口金から繊維をシャワー状に噴出させる。紡糸速度は分速1000~3000メートル。年式の古い機械でもメンテナンスを徹底することにより、分速1000メートルの速度を維持している。
チップから姿を変えた繊維は、さらに下のフロアへと運ばれていく。口金から出た複数の繊維は引取機で撚って1本に集束。この1本の繊維を、延伸機械を使って伸ばした後、ポリエステル糸が誕生する。
歴史を感じさせる外観。工場内にも最新の生産機械を導入しているわけではない。しかし、半世紀もの長きに渡り蓄積した技術が、繊維の高付加価値品を生み出している。同工場の総合研修センター内に展示するテトロン糸生産第1号機。総合化学工場への礎となったこの1号機が、誇らしげに鎮座しているように思えた。