産資用繊維の開発が活発/次の一手に余念なし

2008年10月03日 (金曜日)

 産業資材用繊維での開発が活発だ。今や合繊メーカーの重点戦略事業に位置づけられる産業資材用繊維だが、既存ビジネスだけではいずれ限界が来るとの前提に立ち、素材開発や用途開拓を加速している。新素材で新たな市場を創造する。世界経済の減速による影響は産業資材用繊維においてはとくに予想されるものの、各社とも次の一手に余念はなさそうだ。

新素材で新たな市場創造

 東洋紡は高強力ポリエチレン繊維「ツヌーガ」を開発し、今夏から本格販売に入った。ツヌーガは同じ高強力ポリエチレン繊維で、絶好調の「ダイニーマ」の溶剤ゲル紡糸とは異なり溶融紡糸によるもの。原着も可能だ。年産200トンの規模を持つ。耐切創性に優れる特長を生かし「作業手袋や防護衣料などの用途を狙う」と佐野茂樹マテリアル事業総括部長兼スーパー繊維事業部長は言う。

 帝人テクノプロダクツは高機能樹脂、とくにフッ素系樹脂のフィラー(添加剤)としてパラ系アラミド繊維「テクノーラ」超微細パウダーを開発した。同パウダーは有機フィラーとして世界で初めて平均粒子径が5~50ミクロンという超微粒子を実現した。

 従来品の「トワロン」のパウダー(年50トン)の限界である粒子径50ミクロンをはるかにしのぐことができたのは粉砕技術の確立とテクノーラが持つフィブリル化しないなどの素材特性によるもの。2年の時間を要して開発した。価格は1キロ当たり1万円以上。「日本での展開を固めたうえで、輸出も考える」と高須良弘パラアラミド事業部長。2010年の本格事業化を目指す。

 旭化成せんいはFNB(不織布ニュービジネス)プロジェクトで研究に取り組んできた新不織布の試験設備を2009年3月に稼働させる。「これを機に開発を加速させる」。

 同不織布は研究開発拠点のせんい先端技術センターに試験設備を導入する。新設備の基本製法はスパンボンド不織布だが、従来機では製造できない原料を使用。また、既存原料を使用しても性能は異なるようで、低目付で、高分散という同社スパンボンド不織布の特徴を「よりブラッシュアップしたもの」と言う。

 カネカはアルミニウムを架橋剤として、独自技術で天然素材のコラーゲンを高純度に精製・安定化する技術を開発し、多くの機能を持つ樹脂改質用添加剤の製造に成功した。第1弾として細菌の増殖や生存に必要な栄養素の一つであるリンを吸着・除去する機能を有する添加剤を開発した。

 家電製品や文房具などの日用品や自動車内装材、壁紙などへの展開を進め、5年後には約10億円の売り上げを目指している。

 こうした具体化するもの以外でも水面下で活発な動きが見られる。

 東レは産業資材事業部の新素材マーケティンググループが中心となった新素材の探索に取り組む。伊達誠司産業資材事業部長は「PLA(ポリ乳酸)以外でもネタはいくつもある。ターゲットは全世界」と意欲を見せる。