帝人/耐熱ポリ乳酸を拡大/トヨタ自動車から設備移管
2008年10月08日 (水曜日)
帝人は高耐熱ポリ乳酸「バイオフロント」の生産を拡大する。トヨタ自動車から譲り受けたポリ乳酸(PLA)の生産設備(年間約1000トン)を来年夏ごろに稼働させるもの。唐澤佳長副社長は「次期の中期経営計画で大きなポイントになる」との認識を示すバイオフロントで、繊維やフィルム、樹脂など幅広い分野での用途開拓を進め、本格化へ一歩踏み込む。
導入する設備はトヨタ自動車が広瀬工場(愛知県豊田市)で今年3月まで活用していたもので、松山事業所(愛媛県松山市)に移設する。これまで岩国事業所(広島県岩国市)のパイロット設備で年間200トン生産し、マツダ自動車とカーシート用途で開発するなど、商品化を進めていたが「サンプルが少なく、十分な市場評価ができなかった」(唐澤副社長)。来年4月以降、松山事業所で稼働する中量産型の設備を活用し、本格展開にはずみをつけたい考えだ。
<解説>
PLAの欠点を解消する「バイオフロント」 ポリ乳酸(PLA)をはじめとした生分解性樹脂は環境配慮の観点から注目をされているものの、耐熱性や耐久性などの性能面において石油由来に及ばず、十分に普及するまでには至っていない。
とくにL―PLAと呼ばれる従来品は、耐熱性が低く、染色性が難しく、アイロンも掛けられないなど繊維での展開には限界があった。これに対しD乳酸とL乳酸ステレオコンプレックスPLAであるバイオフロントは耐熱性が210℃とL―PLAに比べ40℃も高く、PLAの事業展開の幅を広げるものと期待されている。
帝人ではバイオフロントだけでなく、L―PLAを製造する米ネイチャーワークスに昨年50%出資。L―PLAによる短繊維も商品化し、今下期から不織布用を中心に本格販売を目指している。
国内ではネイチャーワークスから原料供給を受け、東レ、ユニチカ、クラレが繊維をはじめとするPLA事業を展開。帝人は最後発になるが、バイオフロントという耐熱タイプの開発やネイチャーワークスへの出資、さらにトヨタ自動車からの設備譲渡などPLA事業で活発な動きを見せる。