伊藤忠/ベトナムに専用工場/米欧日 3市場視野に

2008年11月05日 (水曜日)

 伊藤忠商事はベトナム・ハノイ市で、デニムジーンズと婦人服を生産する既存縫製工場に出資し、専用工場として実質工場運営に当たる。ジーンズは米国と日本、婦人服は米国と欧州市場をターゲットに工場を順次拡大する。これにより伊藤忠は三国間貿易で、テキスタイルを基軸とした二次製品のパッケージ提案を強める。

ジーンズと婦人服縫製

 工場はハノイ空港から市内へ車で15分の距離に位置し、3棟の建物がすでにあり、うち2棟をジーンズと婦人服の専用ラインとして合弁事業方式で運営する。

 ジーンズは「VITガーメント」で、ベトナム側が既存の土地・建物を提供、伊藤忠が10%出資した。糸染め、製品洗いなどの工場新設が環境問題などで時間を要するため、“時間を買う”意味から既存工場を専用ライン化した。従業員は300人で、ジーンズ月産10万本、製品洗い40万~50万点(うち“ケズリ”“コスリ”10万点)の能力がある。このほど本格稼働を開始した。

 計画では、月産10万本のうち5万本を日本のナショナルブランド(NB)向けに、残り5万本を米国向けに輸出する。米国での販売は主にSPA(アパレル製造小売業)を視野に入れており、伊藤忠の米国繊維法人プロミネントUSAを窓口に、早ければ09春夏、遅くとも同秋冬から本格的に販売し、早期に米国向けだけで月産15万本規模に拡大する。

 生産する商品の小売価格は、米国で1本当たり70ドル以上、日本で6900円以上の中価格帯を想定。デニムは日本とアジアの素材を調達し、日本―ベトナム間の経済連携協定(EPA)発効後を視野に入れ、関税面でのコストメリットを追求する。

 一方、婦人服縫製(社名未定)はベトナム側と日本企業1社を併せた3者合弁方式で、伊藤忠の専用ラインとして運営する。この工場が婦人服を縫製するのは初めてで、合弁パートナーが持つ縫製・品質管理ノウハウを注入する。

 2009年1月をめどに従業員400人、初年度月産5万~6万点で立ち上げ、早期に8万点規模に拡大する。商品は婦人服のブリッジゾーンで、米国での小売価格はセットアップスーツで250~260ドル。米国向けは合弁パートナーと伊藤忠がルートを分けて販売し、伊藤忠は欧州向けで新販売チャネルを開拓する。メンズの取り扱いが多い欧州のアパレル事業会社プロミネントヨーロッパ(EUPAL)が英国、スペイン、フランスの事業所を通じて小売店向けに販売する。

 伊藤忠繊維原料・テキスタイル部は、このベトナム工場を中心に、三国間貿易でテキスタイルを基軸とした二次製品のパッケージ提案を強める。デニム生地、婦人服地の取り扱いだけでは海外顧客のニーズを満たせないため、製品化を通じて市場を広げる。ジーンズはこれまで中国での生産が多かったが、“中国プラスワン”としてベトナム工場を一方の軸に据える。伊藤忠の在ベトナム縫製関連出資工場は既存のユニフォーム、シャツに加え今回のジーンズと婦人服で4工場となる。