北陸繊維産業への期待と支援(4)北陸経済対談(1)「『モノを作り込む』モノづくりで勝ち抜く」
2008年11月27日 (木曜日)
出席者/日銀金沢支店長・森 俊彦氏、東レ北陸支店長・木下健一氏
日銀の森俊彦金沢支店長は、当社北陸支局開設に深い理解を示し、また東レの木下健一北陸支店長の全面的な協力を得て、今回の対談が実現した。森支店長は最近の金融経済見通しを示しながら、北陸の繊維産業は「『モノを作り込む』モノづくり」によって競争を勝ち抜いていく、そして世界に貢献していく」と展望。高級品を訴求する分野では「生産が日本に回帰する動きにつながっている」との認識を示した。森支店長は「現場に神宿る」を信条にしている。現場主義で北陸3県の企業を訪問して、「世界に誇る技術力・サービス力」を確信する「応援団」と言い切る。
木下 サブプライム問題に端を発した金融機関の保有証券資産の劣化の問題は、IMFの報告によると、1930年以降で最も深刻な金融危機を招き、減速傾向にある世界の実体経済を巻き込んで、世界同時不況の様相を呈しています。金融危機では比較的軽微といわれた日本経済もその例外ではあり得なく、政府も月例経済報告では景気の基調判断を「弱まっている」と下方修正しました。
また日銀も10月31日に、7年7カ月ぶりに金利の引き下げに踏み切り、同じく公表した「展望リポート」では08年、09年のGDPを大幅に下方修正するとともに、景気の先行きについて不確実性が、著しく高まっていると指摘しています。
昨今、原燃料価格の下落傾向がみられますが、当面の世界および日本の経済をどのように分析していますか。「経済のグローバル化」「資源エネルギー」「食糧」「環境問題」「新興国」といったキーワードを含めて、展望をお聞かせください。
森 海外経済は当面、減速が続くとみています。米国ではFRBが政策金利を引き下げて、住宅価格の大幅な下落が続いており、金融機関の貸し出し姿勢は厳格化しています。民間需要に対して、下押し圧力がかかっています。このように米国では、金融・実体経済の負の相乗作用が生じており、当面、成長率は低い水準に止まると見込まれます。
欧州経済も、既往のエネルギー・原材料価格高によるEU域内民間需要の弱まりに加え、輸出環境の悪化や金融環境のタイト化の影響などから減速が続くほか、アジアにおける新興国でも輸出環境の悪化などから、成長率はやや鈍化すると考えられます。
先行きは米欧の金融危機やその影響がどのように収束するかに大きく依存し、とくに米国経済の動向が重要です。米国経済については住宅市場における調整が進展し、金融システム面での対策効果が表れるにつれて、次第に持続可能な成長経路に復していく姿が見込まれますが、その時期は09年度半ば以降になるものと想定されます。これに伴い、海外経済全体の成長率の回復が明確化してくるのも、09年度半ば以降になるものと考えられます。
日本経済の認識では、景気の先行き見通しに関する不確実性が著しく高まっています。景気は来年度半ばまで停滞色が強い状態が続く。その後、エネルギー・原材料価格高の影響が薄れ、海外経済も減速局面を脱するにつれて、日本経済も回復していくでしょうが、そのタイミングは来年度半ば以降になる可能性が高い。ただ、この日本経済の見通しは、世界経済の状況に大きく依存しています。その意味で「不確実性が極めて高い」「下振れリスクも高い」という点には、十分注意する必要があるでしょう。