スクールスポーツアパレルインタビュー

2008年12月05日 (金曜日)

尾崎商事営業本部副本部長・家倉 治氏/ファイテンとコラボで「カンコー」の価値高める

――現在の商況について教えてください。

 今期(2009年7月期)の第1四半期(8~10月)は、前年並みで推移しましたが、10月末から市場環境は急速に悪化しています。小売店の販売面で影響が出始めています。今後の推移を注意深く見守り、来年入学商戦で生徒数と実際の販売着数をしっかり検証することが必要です。

 昨年、先頭を切って実施した商品価格の改定は、ほぼ想定通りに取り組みが進みました。様々な製品、サービスのコストが上昇するなか、商品の納期、品質を守るために価格改定は不可欠です。今後も販売会社、エンドユーザーに状況を理解していただけるように努力を続けます。

――商品の動向はいかがですか。

 すでに累計で1000校への採用を達成した「リーボック」ブランドの商品は、今期も微増ペースで推移しています。今後は学校向けのイベントなどブランド価値を高めるための取り組みを計画しています。「アディダス」ブランドはブランド価値を理解している学校を対象に着実に採用校を伸ばしています。

 10月には「RAKUWAネック」など「phiten(ファイテン)」ブランドのアクアチタン製品で知名度の高いファイテンとのコラボレーションを発表しました。「カンコー×ファイテン」ブランドのスクールスポーツウエアとして、現在、新商品の開発を進めています。10年入学に向け、来春から本格的に営業を始めます。

 今回のコラボは、従来のブランドとは違う切り口で、「カンコー」ブランドの価値を高める取り組みの一環ととらえています。先日の展示会でプロトタイプを展示したところ、先生方の反応も良く、非常に良い感触を得ています。

――今後のポイントを聞かせてください。

 教育産業の一員としての立場を忘れず、生徒が着たいウエアを納得して着てもらえるモノ作りを進めたい。そして現場の足腰をもう一度鍛え、従来以上に販売店や学校が「困ったことがあれば尾崎商事に」と思えるような、地に足をつけたビジネスを展開します。

トンボ第一事業本部スポーツ販売部長兼スポーツ企画部長・福井正人氏/ヨネックスと提携

――現在の商況について教えてください。

 2008年6月期のスクールスポーツウエア分野の売上高は、単体が前期比0・9%増の28億2700万円、今期から発表している連結が30億8900万円でした。今期は7月から9月までの第1四半期はほぼ前年並みで推移しましたが、10月に入って商況は急速に厳しさを増しています。日本経済が後退局面に入り、消費低迷の影響で、この分野でも保護者の間に買い控え的なムードが出始めています。

 昨年16年ぶりに実施した価格改定については制服が先行し、その少し後を追う形で進んでいます。約70%の浸透率です。

――課題は何ですか。

 今期いっぱいで「カッパ」ブランドの契約を解消するため、「カッパ」のない状況でどう商戦を進めるかがポイントです。自社ブランド「トンボ・ウィン」「Victory―X」「トンボ」や、提携ブランド「コムサデモード」を中心に展開し、新規校の獲得は昨年ペースで進ちょくしています。10月末現在の校数ベースでの比較では前年を上回っています。

 本社新工場・新物流センターが10月に竣工、スポーツウエア分野でも物流体制を見直し、再整備しました。品質、納期、コスト対応力など商品のトータルなサービス力が一段と向上しています。

――今後のポイントを聞かせてください。

 9月にスポーツ用品メーカーのヨネックスと「YONEX(ヨネックス)」ブランドのスクールスポーツウエアで提携しました。学校体育衣料は価格帯に制約がありますが、機能、デザイン、着心地、耐久性にこだわったハイグレード商品を目指します。

 現在、来年6月の展示会で具体的な新商品を発表するため、企画を追い込んでいます。この3~4年の素材の進化を取り入れ、これまでにない商品を開発したいと考えています。新商品の発表と同時に営業を始め、10年4月から納品する予定です。販売会社などからの期待の声も予想以上に大きなものを感じています。シェア拡大に向け、新ブランド「ヨネックス」を着実に展開していきます。

明石被服興業スクールスポーツ部長・柴田快三氏/「デサント」ブランド

――商況について教えてください。

 今期の新企画として「デサント」ブランドのスクールスポーツウエアでレディース企画を発表、女子校向けに提案を開始しました。北海道から九州まで、全国の学校で高い評価を得て伝統校を中心に採用していただき、順調な滑り出しができたと思います。

 デサント社とのコラボレーションを発表して4年が経過した「デサント」は、今春には400校を超える学校に納入、今期も順調に採用校が増えており、来春に向けて100校以上の新規校を獲得する見込みです。

 品質重視のデサント社のこだわりが、ブランド価値を高める要因になっており、当社の自社生産力と販売力が融合した結果、学校の信頼を得ることができたと感じています。

――「日本ライフセービング(JLA)」とも取り組みを進めています。

 未来ある子どもたちの「安全・安心」を考えた「オレンジ水着」にJLAの方々が賛同されパートナー企業となりました。3年が経過した今年は全国10会場で行われた青少年育成「ウォータースポーツプロジェクト」で、水辺の安全教育に「オレンジ水着」を紹介、参加した子どもから保護者の方まで高い評価をいただきました。今後も日本中の小学校のプールがオレンジ色に染まるまで拡販に努めます。

――生産体制を強化しました。

 今秋、新工場「さくら工場」を竣工、最新鋭の設備を導入し多頻度で多品種の体育衣料の生産効率アップと物流体制を再整備しました。これからも国内生産にこだわり、品質と納期の精度を一段と向上することで、学校や消費者の期待に応えたいと思います。

――今後の方向性についてお聞かせください。

 来年は3カ年計画「アグレッシブスポーツ30」の最終年度になります。売り上げ30億円、デサント採用校獲得700校などの課題を達成するよう、次年度に向けて新商品や新アイテムを開発中です。展示会の開催や日常の営業を通じて学校、販売店との関係を一層強化し事業拡大を図りたいと考えています。

ミズノマーケティング部スクールビジネス課長・大幸博司氏/ミズノブランド好調

――学販スポーツでも「ミズノブランド」を展開しています。

 従来のアスリートブランドに加え、2007年からミズノブランドを導入しました。デザイン、機能、価格ともこれまでのアスリートブランドに比べワンランク上を設定しています。学販スポーツ市場でブランドが重視されるなか、自社のブランドマークを生かした戦略で採用数拡大を図ります。

――近況について教えてください。

 2008年3月期はミズノブランド投入が奏功し、前年比4%増の27億円の売り上げを達成しました。競技ブランドと同じ“ミズノランバードマーク”を使ったミズノブランドの認知度や、安心感も採用の要因になっています。現在ミズノブランド商品はジャージ類27型、ウインドブレーカー類7型をそろえており、今後拡大を進めます。組織的には07年にスクールビジネス課、スクール販売課を立ち上げ、専任の生産、企画、販売体制を整えています。

――値上げの進ちょくはいかがですか。

 原油高を受け、製造コストが上昇しています。商品によって違いはありますが、09春に向けて値上げを進めています。

――学校側の環境への意識も高まっています。

 環境対応を意識した商品提案も進めています。08年から、使用済みウエアを回収してポリエステル繊維に再生する循環型リサイクルシステムを導入しており、ウエアを回収する3年後の2011年春には3000着の回収を計画しています。

 スポーツウエアの生産基盤がある当社は、学販スポーツ業界でも6割と高い海外生産比率を占め、この比率をより高める計画です。また、生地を日本から運び縫製を行う加工貿易に加え、中国やタイで素材から現地調達する海外一貫生産も強化します。カタログ掲載の定番品に加え、別注品の海外生産も進めています。

ユニチカメイト取締役営業本部長兼東京支店長・中川昭治氏/「環境」前面に出す

――現在の商況について教えてください。

 10月以降、商況は急速に厳しさを増しています。現在までのところ、表面的な業績には表れていませんが、スクールスポーツウエア分野でも保護者に買い替えの枚数を控え目にするなどの傾向が出始めています。年明け以降、商況はかなり厳しくなることが予想されます。

 2008年3月期は前期比8%増の24億5000万円と好調に推移し、今期もほぼ予定通りに推移しています。4年目に入った主力の「ニューバランス」ブランド商品は高い評価をいただき、ファンも増えています。今期も例年並みの40~50校に新規で採用される見通しです。

――値上げの進ちょくはいかがですか。

 春先くらいまでは様々なものが値上がりし、比較的保護者らの理解を得やすい環境にありました。昨年、十数年ぶりに製品価格の改定を実施し、2年目の今年は全体の8~9割くらいまで浸透してきました。残りの部分に関しても粘り強く説明し、前に進めたいと考えています。

 値上げをお願いするばかりでなく、引き続き中核となる「ニューバランス」ブランドの商品ラインアップを拡充してユーザーの選択肢を増やします。同時に「ニューバランス」で培った機能やデザインなどをフィードバックし、自社ブランド商品の見直しを進め、コストパフォーマンスの高い商品で価格対応力を強めていくつもりです。

――今後のポイントをお聞かせください。

 今後は「環境」を前面に打ち出していきたいと考えています。今年に入って「環境」に対する学校関係者のムードが明らかに変わってきました。今後「エコ」がキーワードとして必ず出てくると感じています。

 現状、スクールスポーツウエア分野で再生繊維はほとんど利用されていません。しかし、ペットボトル再生ポリエステル繊維「ユニエコロ」など、環境対応素材を活用した商品提案を進め、状況を変えていければと考えています。ユニチカグループの関連商品なども含め、トータルに学校へ提案したいと考えています。

児島取締役商品開発本部長・田中康博氏/積極的に新商品開発

――2008年の全般的な商況をどう見ていますか。

 春から徐々に悪くなっているという印象です。スクールスポーツウエアの分野でも買い控えが出てきています。Tシャツやポロシャツでは、これまで3枚購入していた買い替えが2枚に、2枚が1枚にということが起きています。世界的な金融危機の影響で日本でも株価が低迷、景気が後退局面に入るなか、生徒や児童の保護者の皆さんも生活防衛を進めています。

――業績の見通しはいかがですか。

 スクールスポーツウエア事業の12月期の見通しは微減で推移しています。学校別の割合では小学校が30%、中学校40%、高校30%の比率です。昨年のこの時期は値上げ前の駆け込み需要がありましたが、今年はその分、厳しい状況です。水着やウインドブレーカーが健闘していますが、すべてをカバーするには至っていません。

 昨年から16年ぶりの製品価格の改定で値上げをお願いしています。1年目の浸透率は約40%、2年目の今年は80%程度とかなり進んできましたが、予想以上に時間がかかっています。引き続き100%を目指して努力していきます。

――新商品の近況を教えてください。

 ニットと織物を融合した新開発のトレーニングウエアは、これまでにない商品として、学校関係者などからの反応も良く、手応えを感じています。ほかに天然繊維を超えるソフトな肌触りと吸汗、拡散、速乾性を実現したTシャツやポロシャツなど、今年は新しい素材を積極的に使い、例年よりも多めに新商品をそろえています。

 7月に新設した「ショールーム」は、これまで当社に来たことのない学校関係者に訪問していただけるなど、全体的に訪問客が増え、商品アピールの場として効果が表れています。今後は生産の合理化を進めるためにも定番商品の比率を高めて収益基盤を強化します。同時にメーカーとして新素材の活用など、毎年、新しい商品を必ず発表していきたいと考えています。