伊藤忠/中国・杉杉集団に出資/内販のプラットフォーム構築へ
2009年01月19日 (月曜日)
伊藤忠商事はこのほど、中国の大手複合企業、杉杉集団(浙江省寧波市)に28%出資することで合意した。出資額は約100億円。今月中に契約を完了する予定だ。これにより高級ブランドのアパレル事業を中国で展開するなど「中国内販のプラットフォームを構築する」(岡藤正広専務繊維カンパニープレジデント)方針だ。中国の集団公司に外国企業の出資・経営参画が認められるのは珍しいケース。
杉杉集団は傘下94社を持ち、中核のアパレル企業、寧波杉杉は中国のアパレル分野で売上高3位、ブランド分野では1位の地位を占める。伊藤忠は1993年から対日・対米のアパレルOEMの委託生産で取引を開始し、合弁で「レノマ・パリス」などの事業を共同展開してきた。
こうしたなか伊藤忠では、これまでのパートナーシップを生かして杉杉集団に出資・経営参画することで今後も内需と個人消費の拡大が確実な中国において、内販事業のプラットフォーム構築を進めることを決めた。一方、杉杉集団も国際的企業集団へと成長するためには、伊藤忠の豊富な企業運営ノウハウに期待しており、繊維事業でもブランド事業の強化を要望していたことから両社の意見が一致し、今回の出資合意となった。出資比率は伊藤忠が25%、伊藤忠〈中国〉集団が3%となる。
今回の出資で、伊藤忠は杉杉集団に副董事長を派遣し、寧波杉杉の総経理も兼務する。そのほか杉杉集団の監事に1人、営業と財務でそれぞれスタッフ1人の計4人を派遣する。これにより、伊藤忠が持つブランド事業のノウハウを注ぎ、とくに寧波杉杉に関しては伊藤忠主導で運営される模様だ。ブランドの中国市場への新規投入に加え、昨年傘下に入れた三景の副資材も杉杉を通じて積極的に中国市場に投入する。これにより、2010年度には寧波杉杉の売上高を500億円超とすることを目指す。
また、杉杉集団はリチウムイオン電池電極材で世界1位の中科英華を傘下に持つなど、電子部品やエネルギー事業でも多様な事業を展開していることから、将来はこれらの事業に関しても連携していく方向だ。
信頼できるパートナー
――今回、杉杉集団への出資を決めた理由は。
中国は内需拡大と個人消費の増加でこれからも安定成長が見込まれる。一方で、世界経済悪化で競争は一段と激化するだろう。そうなると、信頼できるパートナーと取り組むことが重要。そこで杉杉集団とのこれまでのパートナーシップを生かして経営に参画することにした。
――OEMやブランドビジネスで共同展開を行ってきたが。
従来は、個別の事業ごとに合弁する方法が主流だったが、中国の企業は生産から販売まで一貫体制を取るところがほとんど。そのため、通常の商社機能だけでは大きな利益を上げることに限界がある。そこで集団公司に出資し経営に参画することで、伊藤忠のノウハウを全面的に提供することが可能になり、さらに出資比率に応じた利益も確保できる。こうしたプラットフォームを作ることで中国事業は、中国の成長の波に全面的に乗ることが可能になる。これが大きな狙いだ。
――杉杉集団のメリットは。
彼らも国際的な企業集団、総合商社への脱皮を目指しており、そのために例えばコーポレートガバナンスなどのノウハウを欲している。また繊維関連ではブランドビジネスの強化を掲げている。その点で伊藤忠の持つノウハウに期待しているようだ。
――これで中国事業が加速する。
繊維は海外に活路を見いだすしかない。現在、繊維カンパニーの海外売り上げ比率は20~30%だが、これを早期に50%まで高める。しかし日・欧・米すべてで環境が悪化している。そうなると、やはり中国しかないということだ。