帝人ファイバー/「ナノフロント」多用途へ/“組織横串横断”による開発で
2009年03月05日 (木曜日)
帝人ファイバーは、ナノファイバー「ナノフロント」の用途開拓を強めている。新規事業プロジェクトチームのなかのナノファイバー推進チームを軸に“組織横串横断”で各部のメンバーとの商品開発を促進、産業資材では研磨布などの用途開拓が進むとともに、衣料では今年夏向けの商材で「大量受注が決まった」こともあり、販売が一気に広がりそうだ。
ナノフロントは、ナノサイズの多層薄膜で発色する「モルフォテックス」の製造技術を活用して開発された素材で、2種類の異なる成分のポリエステルポリマーからなる海島断面繊維の高速紡糸の手法で生産している。これまでナノサイズの繊維は開発ができても量産面で強度の低下や繊維長の短いものしかできないなど商品化が難しかった。同社は精密な口金設計と、界面エネルギーや粘度、アルカリ減量速度といったポリマー技術を開発することで量産化に成功した。
非常に細く39デシテックス(T)8360フィラメント(F)の状態では織ることができないことから、アルカリ減量前の56T10Fの状態で織布にする。そのため、機業や染色加工企業を指定し、テキスタイルでの販売が基本となる。産業資材では短繊維わたでの供給も検討する。
すでに高密度記録ハードディスクの研磨布など産業資材では採用実績がある。衣料では詳細を明かしていないが、今夏物で大量受注があり、5月ごろから店頭に並ぶという。
他の用途へも積極的に市場開拓を推進、湿式不織布ではナノフロントをわずか数%混入させることで通気度、フィルター捕集効率を大きく上げることが可能。耐久性も上がり劣化を抑えることができる。
また、ナノフロント生地は摩擦係数が高く衣服圧のストレス低減、筋活動量が増加することからメタボリックなどへの効果を期待。
現在、松山事業所で月間25トンを生産、早期に月間100トンを生産し、年間売上高100億円を目指す。当面は直径700ナノメートルの生産が中心となるが、技術的には「直径300ナノメートルの生産も可能」であり、用途開拓がある程度進んだ段階での投入を視野に入れる。