クラボウ/岡山、津工場 閉鎖へ

2009年04月02日 (木曜日)

 クラボウは3月31日、世界経済の悪化に対応する抜本的な生産・調達構造の改革を目的に繊維事業の構造改革を実施することを決めた。これにより6月30日をもって、岡山工場(岡山市)と津工場(三重県津工場)を閉鎖する。このため、09年3月期決算で構造改善費用約58億円を特別損失として計上する。

 今回の改革では、綿合繊事業は自家工場を中心としたグローバルオペレーション体制の維持と調達構造の再編成でコスト競争力の強化、販売戦略の見直しと効率化を行う。そのために岡山工場(紡績設備1万5432錘)を閉鎖し、同工場で行ってきたデニム糸生産は、北条工場(愛媛県松山市)と、タイ子会社のサイアムクラボウに移管・集約する。そのための技術移転も行う。

 そのうえで、綿合繊事業は(1)原糸、デニム、カジュアル、ユニフォームに繊維資材分野を加えて5事業領域で拡大(2)国内4工場、海外関係会社5社の連携強化で適地適産(3)独自技術を基盤にした“原料加工”“五感に訴える先端加工技術”などの「創造型技術開発」への進化――の3点を重点戦略として掲げる。

 一方、羊毛事業は不採算事業から撤退し、オゾン防縮加工「エコ・ウォッシュ」や革新紡績糸「ニューヤーン」など独自技術に特化することで商権維持と調達構造変更による収益改善を進める。そのために、津工場(紡績設備1万2392錘、織機30台、液流染色機30台)を閉鎖。エコ・ウォッシュ用加工機やニューヤーン用精紡機は他工場に移管したうえで、その他の生産品種・加工は外注も含めた国内外の生産拠点活用で対応する。そのうえで、羊毛事業は綿合繊事業と統合する予定だ。

 現在、従業員は岡山工場が66人、津工場は100人(ともに準社員、パート含む)。工場閉鎖後の雇用に関しては、クラボウグループ内での雇用確保を基本方針に現在、労働組合と協議中である。

 今回の構造改善実施後、クラボウの繊維事業の生産体制は4工場で紡績設備10万4420錘体制となる。同社では「繊維事業の構造改革は、今回の2工場閉鎖で一段落」としている。

解説/相次ぐ紡績の設備縮小

 紡績の設備縮小に拍車がかかる。昨年までにフジボウテキスタイル豊浜工場、クラボウ観音寺工場、日清紡島田第一工場の閉鎖が発表され、今年もユニチカ常盤工場の紡機半減、クラボウ岡山工場、津工場の閉鎖が発表された。とくにクラボウ岡山工場の場合、発祥の地だけに首脳陣にとって、決断は断腸の思いだったことだろう。

 設備縮小の要因は単純だ。もともと海外品とのコスト競争力で劣勢に立たされていたところに、世界同時不況による衣料品消費不振が追い打ちをかけた。円高で製品輸入は増加しており、国内のテキスタイル生産が減少。糸需要の縮小に歯止めがかからない。

 だが設備縮小がすべての解決にはならないことが根本的な問題だ。日本紡績協会のデータを見ると、ここ数年は、糸需要減少による運転率低下、設備縮小、一時的な稼働率改善、再び稼働率低下、設備縮小という動きを続けている。つまり、もはや縮小均衡などは、ありえないということがはっきりしている。

 今回の設備縮小で、紡績各社は一時的には一息つくことができるかもしれない。しかし、それはやはり一時的なものとなる可能性がある。そうなると、現在の国内設備の規模から類推すると、次は国内から紡績設備が消滅するという事態も、荒唐無稽な話ではない。

 いま求められているのは、国産糸・国産テキスタイルの抜本的需要振興策だ。この点で、政府に大きな期待はできない。日本は自由貿易を標榜する国だからだ。そうなると、民間ベースでの取り組みが必要になる。

 日本紡績業の父である渋沢栄一は1914年、輸入超過に苦しむ日本を救うために民間ベースに国産品消費推進を目的とする「国産奨励会」の設立を提案した。そのひそみにならい、いまこそ川上から川下まで国内の繊維産業が一丸となって国産素材の需要振興を目的とする国民運動を行うべきだ。

 もちろん、そのためには消費者に“なぜ国産糸でないとダメなのか”ということを納得させるだけの品質や機能が必須となる。その意味では、商品力の強化という面でも紡績各社の働きは待ったなしだ。