三菱レのアクリル繊維/中国生産を停止
2009年04月27日 (月曜日)
三菱レイヨンは中国寧波市でのアクリル繊維製造子会社、寧波麗陽化繊を月内で停止する。23日までに現地従業員約180人に対し、生産停止に伴う解雇の方針を伝えた。合弁相手である寧波連合投資が保有する株式10・7%を、三菱レイヨンが買い取り、現地法人を休眠させるが、当面、会社清算はしない。
寧波麗陽化繊は2005年末から生産を開始したが、市況が悪化し、大幅減産を続けるとともに、当初出資していた伊藤忠商事、丸紅、三菱商事の株式を昨年12月末に三菱レイヨンが買い取り、寧波聯合投資と撤退も含め対策を協議していた。
同社は今年1月に、アクリル繊維事業の構造改革を発表。3月末までに大竹事業所(広島県大竹市)の生産能力を13万2000トンから5万2000トンにまで縮小している。
解説/アクリル繊維の需要急減
寧波麗陽化繊は2003年3月に設立された。当時、中国のアクリル短繊維需要は衣料、非衣料用途とも順調に拡大。日本は生産量の約半分を中国に輸出していた。為替リスクを回避するための現地生産は当然の選択だった。総投資額は1億ドルで伊藤忠商事、丸紅、三菱商事の3商社も中国内販ビジネス拡大のため10%ずつ出資した。
05年末の操業開始に先立ち、同年4月に発表された第5次中期経営計画では「垂直立ち上げによる収益の拡大」と「5万トン↓10万トンの能力増強検討」が課題に挙げられ、当時の幹部は「現地生産が始まっても輸出は減らさず、シェアアップを目指す」と強気だった。
しかし06年から市場に暗雲が立ち込める。中国化繊工業協会の統計によると、この年に国内生産と輸入を合わせた総供給量が減少に転じた。08年には国内生産60・37万トン(前年比24%減)、輸入14・56万トン(同48%減)と総供給量は10年前の水準にまで逆戻りしてしまった。
その原因は、粗原料であるアクリロニトリル(AN)高騰をわた値に転嫁せざるを得ず、相対的に安価なポリエステルなど他素材に代替されたことが最大である。現地メーカーもアクリル繊維事業の収益は赤字。ただ上海石化や吉林化繊など年産十数万トンの大メーカーはプロピレンから粗原料を自製しているのに対し、寧波麗陽化繊はANを外部からの調達に頼っており、傷口を広げた。
立ち上げから3年余での生産停止は、中国繊維産業のすべてが右肩上がりだった時代の終わりを象徴していると言える。