専門商社/“横串”で“垂直”連携

2009年06月09日 (火曜日)

 今期、商社は大規模な機構改革を実施したケースが目立った。キーワードは“横串”による“垂直”連携の強化。グローバル化が進むなかで、一組織だけがビジネスを展開していくことは難しくなってきた。目まぐるしく変わる環境を乗り切るうえでも、総合的な組織力を発揮していく必要がある。

スピード時代に組織力

 モリリンは今年から担当役員の守備範囲を広げた。原糸とニットマテリアルを、製品関連ではメンズとレディース、キッズなどを同一グループ化し、連携した販売戦略を進めるとともに、新たにAM(アパレルマニファクチャリング)グループを新設し専門店チェーンの販路開拓に乗り出す。

 実際、原糸とニットマテリアルグループでは2カ月に一度、素材会議を開くようになった。木原宏次専務は「レベルの高い商品開発を主眼に置き、原糸から生地、最終製品まで一貫した企画提案を強める」と、同一グループ化の狙いを述べる。独占販売する「プロビスコース」やキュプラ・モダール「セルティス」などの多様な素材群や素材開発力を生かしながら製品までの垂直連携によるOEMビジネスを拡大する。

 その垂直連携という面では、瀧定大阪も抜本的な機構改革を4月に実施した。社長と2人の専務が3トップ体制を整え、経営判断が迅速に伝わる組織へと転換を進めている。瀧隆太社長は、テキスタイル市場が縮小するなかで、課同士で競争しながらシェアを広げるという従来の課別独立採算制というスタイルが難しくなっていることから、「損益を図る事業単位が“課”である点は見直す必要がある」との認識。昨年10月に設置した社長直轄の経営戦略室を通じ、全社的な経営機能を強化するとともに、部長の権限を緩やかに強めながら「部と課の連携」の在り方を探る。

 田村駒も4月に大規模な機構改革を実施し、これまで4事業部体制だった営業部門を、4グループ・7部に再編した。「東西の垣根をなくし、機能を共有」(市川政彦専務)するのが狙い。地域の壁を取り払い一体運営を進めることで、組織のスリム化、変化の早い環境への対応、情報共有と連携効果を発揮する。

 中期経営計画で「海外事業の戦略的拡大」を掲げ、繊維事業のグローバル化への対応強化を進めるNI帝人商事は、今月1日付で海外事業本部を新設した。

 生産拠点の調整や素材調達、販路開拓などで衣料繊維や産業資材の各セクションと連携していくとともに、中国での欧米向け三国間貿易や経済連携協定(EPA)を活用した製品ビジネスなど拡大し「新しい商流を構築していく」(古林孝則取締役海外事業本部長)のが狙い。素材開発力を前面に、連結売上高に占める海外売上高を現状の14%から早期に30%へと高める。