難燃素材に関心高まる

2009年07月03日 (金曜日)

 非HBCD難燃への注目が高まるにつれ、素材難燃に関心が集まる。素材メーカー各社で難燃素材への引き合いは強く、市況全般が停滞する中今期も難燃素材売上高は伸びを見込む。カネカ、帝人ファイバー、東レ、トレビラ・ジャパンの難燃素材事業戦略を追った。

カネカ/産地密着の開発、営業/「カネカロン」引き合い増加

 カネカではアクリル先染めのモノ作りを強化し、産地密着の開発・営業を進めている。

 2008年11月には愛知県一宮市の糸商、フォーリンと業務提携。デザイナーを雇い、産地密着型の開発体制を整えた。商品開発に加え、今後は産地密着型の営業を強化する。品質などの優位性から、目先は一宮、蒲郡の国内生産に徹するという。

 カーテンを中心にいす張り、寝具、衣料など織物の用途開拓を目指す国内新規開発グループを発足。新たな用途開発を積極的に進める。

 この数年でアクリル市況は急落、カーテン用途ではポリエステル後染め商品が台頭し、産地構造も北陸へのシフトが進んだ。08年度のカーテン売上高は前年比横ばいで推移、苦戦を強いられてきたが下げ止まった観がある。

 HBCDに代替する防炎素材への意識は問屋各社とも高く、「開発に対する引き合いは強い」と宮川淑人カネカロン事業部営業第三グループリーダー。今期は防炎素材「カネカロン」の販促を強化し、カーテン事業で前年並みから10%増の売上高を計画する。

「カネカロン」/素材難燃のモダアクリル

 カネカの難燃素材「カネカロン」は素材難燃のモダクリル繊維。しなやかさや優れた染色性があり、自己消火性を持つ。さらに難燃性、耐熱性を高めたモダクリル「プロテックス」は、綿、ポリエステルなど易燃性繊維と組み合わせても高い難燃効果を発揮する。

帝人ファイバー/09年度 倍増計画/店頭での訴求に注力

 帝人ファイバーは難燃素材「スーパーエクスター」の09年度売上高について、前年比倍増を見込む。10年度はさらに09年度比倍増を計画。今後は欧州向けを含む国内外でのスーパーエクスター拡販、店頭と連動したカーテンの需要活性提案に力を入れる。

 市況悪化の影響を受け、08年度カーテン事業業績は前年比2割減で推移。小窓の増加といった住宅事情の変化やロールスクリーンの台頭に加え、安価な海外製品流入も逆風となった。

 レギュラー糸販売量が落ち込むなか、難燃素材のスーパーエクスターや遮像効果のある機能素材「ウェーブロン」は伸長。スーパーエクスターはセミダルだけでなくフルダル、ブライトまで糸種を拡大し幅広いニーズに対応した。

 2月には東急ハンズ18店でスーパーエクスターカーテンのコーナー展開を行い、1カ月で異例の完売を達成。分かりやすい機能や防炎意識を喚起するDVD放映が奏功した。POPや店頭コーナーのレイアウト、販売マニュアル作成など、店頭訴求も含めた一貫フォロー体制で消費者への認知度向上を図る。ポリエステル循環型リサイクルシステム「エコサークル」と店頭下取りを絡めたカーテン需要喚起策も構築中だ。

「スーパーエクスター」/生産・廃棄時も環境配慮

 リン系難燃剤を直接練り込んだ難燃ポリエステル繊維。燃焼しても有毒なシアンガスやハロゲンガスが発生しない。後加工と異なり洗濯耐久性に優れ、生産過程、廃棄時も環境にやさしい。

東レ/“独自の難燃”めざす/新たな価値で需要活性へ

 輸入糸も含め玉石混交の難燃糸市場で、東レはいかに東レのバリューやブランドを打ち出すかを重視する。単なる市場対応だけでなく、新しい価値を作り需要を活性させる“独自の難燃”を目指す。

 消費者にとって、火災などを除いて普段実感しにくい難燃は訴求が難しい機能のひとつ。価格志向が強まる昨今の不景気も、難燃素材普及にとって逆風になる。

 問屋の間でも非HBCD難燃への取り組みは温度差が否めないが、今年発売の見本帳は素材難燃の採用が拡大してきた。リン系難燃剤の後加工ポリエステル難燃素材「アンフラ―EX」を活用し、難燃市場後発参入のメリットを生かしながら新しい価値創出を図る。

 08年度は10~12月、3月末にかけて盛り上がりに欠いた。今期売上高も4~6月は前年比2~3割減で推移。継続的な問屋ルートの不振に加え、前年健闘した有力専門店で価格戦略が激化した背景がある。

 全体が伸び悩むなか、UVカット、遮熱効果のある特殊機能性ポリエステル長繊維「アロフト」や遮像効果のある「シルックラフール」は拡大中。新しい価値を生む機能素材開発に加え、生地売り、糸売りを両方手掛けるメリットや各産地に担当者を置く東レならではのシナジーを生かし、訴求力向上に努める。

「アンフラ―EX」/ハロゲン系と同等の難燃性能

 耐加水分解性リン系難燃剤を、東レ独自の高次加工技術でポリエステル繊維の表面と内部にムラなく吸着、吸尽させた難燃加工素材。ハロゲン系難燃加工素材と同等の難燃性能を安定して長期間発揮する。

トレビラ・ジャパン/早期にシェア10%へ/14社と連携、拡販進める

 トレビラ・ジャパンは早期に国内難燃ファブリック市場シェア10%に当たる20万メートル獲得を目指す。「トレビラCS」の普及拡大を狙い、すでに機屋やニッター14社と提携。輸出を狙うパートナー企業も多く、拡大の可能性が広がる。

 連携メーカーはアゲハラベルベット、黒沢レース、サカイオーベックス、サンコロナ、下城、新道繊維工業、鎌倉インダストリー、鈴寅、妙中パイル織物、田中忠、テキスタイル来住、東陽織物、能任七、米沢物産の14社。

 長・短繊維とも品種構成を拡充、商品アイテムはカーテンからいす張りやテーブルクロス、特殊織・編み物まで広がる。トレビラ・ジャパンの黒田毅氏は「レギュラー品をそろえ、常備在庫体制をとればミニマム、納期面をクリアでき、消費者までのアプローチが進む」と見る。インテリアに加え、近年は欧米や韓国造船業界からの引き合いも増えている。

 08年11月にユニチカファイバーと事業提携し、生産能力の移管や共同新素材開発を推進。本社、ジャパン社とも6月の本社破産後も営業活動は従来通り継続している。トレビラ本社では、オーナーである印リライアンスに代わる新たな出資者を迎え、8月には再スタートを切る予定。

「トレビラCS」/高度な難燃性を発現

 独トレビラの難燃繊維「トレビラCS」は、共重合時に難燃剤(ハロゲン、窒素を含む合生物や有害物質でない)を入れ、高度な難燃性を発現させた素材難燃のポリエステル繊維。加熱時に有害ガスの発生がほとんどなく、発煙も少ない。