紡績のニットテキスタイル/事業再構築が加速

2009年08月11日 (火曜日)

 紡績のニットテキスタイル事業が岐路に立つ。これまでも厳しい状況が続いてきたが、昨年後半からの世界同時不況が直撃。いよいよ本格的なリストラクチャリングが必至となった。その際、ポイントは原糸と加工でどれだけ独自性を打ち出せるかだ。

原糸・加工の独自性がカギ

 今期、ニット事業の大胆な改革に着手するのはクラボウとオーミケンシ。クラボウは津工場の閉鎖を決め、ニットの自家加工から撤退する。編み立て・加工までを完全にファブレス化することで「商権を絞り込み、採算重視の姿勢で臨む」(伊藤規雄常務繊維事業部長)とともに「それでも採算が改善しない場合は、厳しい判断をせざるを得ない」と背水の陣だ。

 オーミケンシも上期で編み立ての飯田工場の操業を停止予定。「ニット事業は下期から仕切り直し。(自家生産撤退で)マーケットイン型のモノ作りに変える」(浅見孝志取締役テキスタイル・アパレル事業部長)。

 他社も、多かれ少なかれ同様の傾向だ。背景には、とくに婦人アウター向けの苦戦がある。主要最終販路である百貨店の販売不振が原因だ。例えば、フジボウアパレルは安定していたシルケット糸「レンシル」使いが09春夏では低調。ユニチカテキスタイルも人気だった強撚糸使いが勢いを失った。各社とも「新規商品・商権開拓で立て直しが急務」との意見で一致する。

 10春夏に向けてカギになるのは、やはりニットの基本である原糸と加工の独自性だ。日清紡テキスタイルは、独自加工である液アン加工を前面に打ち出す。とくに強撚糸使い液アン加工はオンリーワン素材だ。フジボウアパレルも綿・キュプラ混を新規投入するほか、話題の汗ジミ防止加工「ディスノーティス」の打ち出しを強化する。オーミケンシも自家生産する機能レーヨン糸活用を拡大する。

 中堅紡績では、龍田紡績が一足先に成果を上げた。得意の先染めニットを武器に09春夏向けでは増収を確保した。強みはやはり原糸。自社のムラ糸を効果的に使用したカジュアルテーストが成功した。10春夏に向けても、ムラ糸使いのデニム調ニットを開発するなど原糸・編み組織に工夫をこらした新商品開発を進める。同じく新内外綿も、独自のショートピッチスラブ糸使いなど新規商品投入でニットテキスタイル事業の立て直しに取り組む。

 製品化で成果を上げているシキボウは、加えて「原糸からの差別化を重視する」(能條武夫常務繊維部門長)。戦略素材「デュアルアクション」「ロイヤルサーラ」のニット展開だ。丸編みだけでなく横編みまで商品内容を拡大する。

 原糸と加工は、ニット差別化の基本。事業再構築のなかで、この基本に変化はない。