不織布新書09秋
2009年09月30日 (水曜日)
日本バイリーン/「V―1003N」を拡大 マスク需要が旺盛
4月に表面化したメキシコの新型インフルエンザは、その1カ月後に日本でも二次感染が確認された。日本バイリーンの下田敦司衣料・メディカル資材本部長は、「ホームページでマスクをネット通販しているが、4月後半から問い合わせが増え、1日で1万件以上のアクセスがあった日もある」と言う。
現在も新型インフルエンザは拡大中であり、同社でも土日なしに生産するが、それでも需要に追いつかないため、新ラインも検討する。病院などへの安定供給のためだ。
同社のマスク「V―1003N」は厚生労働省が推奨する米NIOSH認定「N―95」適合品。高性能フィルターの使用で、微粒子物質をシャットアウトする。結核菌の院内感染対策用マスクとしても利用されている。
また、環境に配慮して全マスク素材を非金属化した。廃棄時の分解・分別が不要だ。日本人の顔のサイズに合わせ、呼吸や会話も楽な成型タイプ。10枚で3150円。
「フルシャットマスクAG01」は、特殊帯電フィルターと銀抗菌仕様のマスク。特殊帯電フィルターで呼吸のしやすさと高い捕集効率を両立した。呼吸しやすいフィルターと保型性の高い不織布との相乗効果でマスクの変形を防ぐ。30枚で3150円。「フェイスマスク5802N」は帯電タイプで100枚1575円。
トーア紡/広州は2ライン目稼働 土木用途は堅調推移
トーア紡コーポレーションのインテリア・産業資材事業は今上期(1~6月)、自動車用途の落ち込みで苦戦した。自動車向けは回復に向かっているものの、今後は最盛期の水準には戻らないという見通しに立ち、効率的な生産体制を目指す。最盛期の70~80%で利益が出る体制を構築する考え。
また、中国広州での生産は今上期1ラインがフル稼働し、7月から単月黒字に浮上。9月からは2ライン目も稼働し、月産40万平方メートルになった。また、米国への進出も検討しているという。
自動車向け以外の不織布事業は、土木用途のほか、カーペット、道路、ベッドの中のポケットコイルなどの用途がある。主力の土木用は今上期、堅調に推移して前年比5%減にとどまった。ブロックマットなど底堅い分野を持つため、大きな落ち込みはないとみるものの、下期は公共事業自体の動向がどうなるか読みづらい面があるため、前期比25%減の予算を組んでいる。
また、ポケットコイルなどベッド関係は上期が10%減、下期が5%減見通しと比較的堅調に推移。このほかカーペット用は住宅着工数の減少などの影響を受けている形で、35%減と苦戦している。
双日/今期は前年比微増の見通し 取引先・展開品種増やす
双日はレンチング製セルロース繊維を「グローバルプライス」「品質」「商品バリエーション」の3点に重点を置いて不織布用に販売している。とくに「グローバルプライス」を重視し、「日本プラス1」を求める国内の不織布メーカー向けに販売を拡大させてきた。レンチングとの緊密な話し込みの上で必要な数量を確保し、日本での安定供給に努めている。
今上期は、昨年秋以降の世界同時不況の影響を受けて厳しいスタートを切ったが、7月以降は回復に向かった。ニードルパンチ不織布向けが少しずつ需要を戻しているほか、新型インフルエンザの流行で除菌ウエットやマスクなどが伸びたスパンレース不織布向けがとくに回復した。また、新規顧客開拓を進めると同時に、新たな品種の展開も開始。その効果もあり、今年度の販売量は通年で前年比微増となる見通しだ。
精製セルロース「テンセル」は不織布向け、とくに衛生材料などの用途で拡大を見込む。コスメやメディカルなどの分野を含め、顧客と取り組んで商品パッケージに「テンセル」ブランドを打ち出した商品展開を計画するなど最終消費者へのブランド浸透も重視する。実際に欧米ではテンセルを表記した商品が市場に出ており、日本でもその形での展開が始まる予定だという。また、最近ではふとんや衣料品の中わた用でも販売を拡大。吸放湿性などの素材特徴が好評を得て、ポリエステルとの置き換えで採用する企業が増えているという。
三井化学/「シンテックス ナノ」打ち出す 樹脂の多様化も
三井化学の鈴木浩雅不織布グループリーダーは、リーマンショックの影響で、自動車関連の機械・設備、車両用資材などがリセッションを受けたという。その一方で、紙おむつなど衛材分野、マスク分野、アジア市場はそれほど影響を受けていないとみる。「この1年の内容の変化を見て、個別戦略を変えていく」考えだ。
また、「エコや環境に関連する商材は今後も成長が期待できる」という。同じ工業用途でも、環境関連の業界は打撃が少ない。フィルター分野もその一つ。包装材料でもリサイクルしやすいよう、多成分系ではなく、単成分が好まれる。
さらに「非可食系の樹脂」にも注目。バイオ樹脂でも食べられるものを原料にするのでなく、食べられないものから樹脂を作ることだ。ひまし油からウレタンのクッションも作っており、樹脂の多様化を進める。
同社の不織布は数量ベースで3分の2強が衛材。今後もこの分野は柱と位置づけ、各社のニーズに対応する。
新商品では「シンテックス ナノ」を打ち出す。四日市工場のメルトブロー2系列のうち、1系列を改造した。300~500ナノの繊維を不織布にしたもので、商業生産体制が整う。現在、ユーザーが性能評価しているところだ。精密ろ過フィルターなどの分野である。
三澤繊維/自動車以外も提案強化 綿不織布にも力入れる
三澤繊維(大阪府阪南市)は、ニードルパンチ不織布1系列の設備で、とくに車両用途を得意としてきた。だが、昨年後半からの世界同時不況で、自動車メーカーの減産が直撃。販売数量を落とした。このため、車両用に加えて、それ以外の用途も積極的に提案・開拓する考えだ。このほど、綿不織布にも本格的に参入した。
三澤猛史取締役によると、主力の車両用途は昨年末から年初にかけて販売数量を大きく落とした。自動車業界の減産の影響が直撃した形だ。現在では受注も回復傾向にあるが「昨年のレベルにはもどらない」と見ている。このため「車両以外の用途も伸ばす必要がある」として、フィルター、雑貨、農業資材、メディカル、衣料資材などへの提案を強化している。最小2000~3000平方メートルからの受注も可能と言う小ロット対応で、小回りを効かした提案を行う。
また、綿不織布にも本格的に参入した。生なり品と漂白品ともにラインアップする。競合他社が生なり品から撤退したこともあり、新規顧客の開拓にも成功している。主力のポリエステル不織布に加えて、綿など多彩な原料を扱えることも、綿・合繊紡績の不織布部門である同社の強みである。
宇部日東化成/インフル関連が好調推移
宇部日東化成の今上期は7月以降、マスクやウエットティッシュ用など新型インフルエンザ関連商品が動いたことなどを背景に、5月以降はフル稼働が続いている。
また、エアフィルター用も堅調に推移している。とくに既存の熱融着不織布加工で簡単にノンオイル不織布ができるポリオレフィン系熱接着繊維「HR―LE」が好評を得ており、今後の拡大を見込む。HR―LEは芯にポリプロピレン、鞘にポリエチレンを使い、カード通過性を維持するための油剤が付着している。油剤は不織布製造の熱融着時に繊維に潜り込むため、洗浄せずノンオイル不織布が製造できる。洗浄水の処理や乾燥の必要もなくコストダウンにもつながる。
また、難燃タイプや高強度ポリプロピレン「シムテックス」も堅調に推移するなど機能商品が占める比率は高まってきた。今後に向けては油剤技術、添加剤技術などを駆使しながら、新商品開発に注力。衛生材料向けなど主力商品の基盤を固めて数量を維持しながら、機能品や新規分野の拡大を図る。機能品の占める比率は今期20~30%に高まる見込みだ。新規分野ではフィルター、電気部品関係、電池関係などでの開発に取り組んでいる。
また組織面では、4月に繊維と産業資材の部隊を統合して、繊維・産業資材事業部とした。両事業が協業してそれぞれの顧客に商品提案を進め、シナジー効果を発揮する。
アンビック/75%の水準で利益出す体制に
ニッケグループのアンビックは、市場環境の急激な変化に対応するため、1月から緊急対策「30%減産オペレーション」を打ち出し、一般管理費の削減、不採算品種からの撤退、品種統合などコストダウンに取り組んできた。需要が底だった2月は売上高が前年の60%の水準に落ち込んだが、7、8月は75%にまで回復。コスト削減効果などもあり、6~8月は収支トントンに改善させた。
下期は売上高を前年の80%に戻す計画。市況の大きな回復は見込み薄とみて、引き続きコスト削減に取り組むほか、将来に向けた新商品開発に取り組む。
同社は17年の創立100周年に向けた中長期経営計画「NA(ニューアンビック)100」を推進中。ここではフィルター、OA機器、自動車、楽器などを重点拡大分野と位置づけている。
また、昨年にナカヒロとの合弁で設立した不織布の加工・販売会社、安碧克〈香港〉は景気低迷の影響もあったが、8月は収支トントンに浮上。OA機器や自動車などの分野で、中国向けを主力に販売しているが、将来的には東南アジアなどの市場も視野に入れる。
また、商品開発の面ではニッケグループとの協業も進んでいる。例えば昨年12月に新設したニッケの「研究開発センター」との連携を密にして開発に取り組んでいるほか、ゴーセンとの技術研究などを進めている。
KBセーレン/用途開拓が着々と進展
KBセーレンのポリウレタン製メルトブロー不織布「エスパンシオーネ」が用途拡大を続けている。そのきっかけとなったのは、昨年に立ち上げた新規事業販売部だ。同部との連携により共同開発が進んだ。
エスパンシオーネが持つ、伸縮性、ソフトな風合い、高成型、通気性、高摩擦係数といった特徴を生かして商品開発が進展。室内犬用の滑り止めソックス、合成皮革のキーボードカバー、衣服補修シートなどがすでに製品化に至っており、拡販に期待が掛かる。「小規模でも市場にない新しいものを」という考えのもと、今後も用途開拓を進める構え。
輸出では6月に独・フランクフルトで開かれた産業資材と不織布の展示会「テクテキスタイル」に出展。次回も継続出展する計画で、日本で実績を付けた救急ばんそうこう市場への浸透を狙う。
ウレタン製不織布という点が大きな特徴であるエスパンシオーネだが、他の素材での展開も視野に入れる。現在は各種ポリマーを購入し、試験を続けている段階だ。
売り上げ倍増が至上命題。旧カネボウ合繊からの事業譲渡後はここまで順調に伸長しているが、倍増には達していない。今後は用途開拓、他素材の採用などで、売り上げ倍増を目指す。夢は「エスパンシオーネ販売課」を「エスパンシオーネ販売部」に成長させることである。
ユウホウ/開発重視の姿勢強める
東洋紡子会社のユウホウ(大阪市北区)は今まで以上に開発重視の姿勢を強めている。
同社の2009年第1四半期は、売上高で前年比15~20%減、経常利益は半減以下となった。不織布事業は下期以降、7~8割の規模に戻ると推測するが、完全に回復するには1年以上掛かると分析。そのため、ニッチな小型用途を積み重ねていく。
同社はニードルパンチやスパンレースなどの短繊維不織布、東洋紡の受託生産を行う活性炭素繊維、不織布製品の加工や高機能繊維などを中心とする紡績(子会社のユウホウテクノ)などを行う。
短繊維不織布も全般的には厳しい。一昨年から本格展開を始めた炭素繊維不織布で、生産設備を倍増したが、景気低迷から伸び悩んでいる。
しかし、拡大している用途もある。その一つがスパンレースのマスク向け。1995年の事業化以降、収益的に苦しんできたが、現在はメディカル、衛材、化粧雑貨の3本柱を確立。今期はマスク向けの引き合いも増えている。
ニードルパンチ不織布は油吸着材が伸びている。綿紡績での落ちわたなどを原料に使用。焼却も容易なエコ商品として拡大している。
こうした商品の開発に拍車を掛け、他社とは違う特殊なニッチ商品を手掛けながら収益改善を図っていく。




