大手商社繊維部門決算/リストラ一巡、増益に

2000年11月20日 (月曜日)

 大手商社繊維部門の九月中間決算が二十二日発表の住金物産を除き出そろった。同期は時価会計対応に伴う各種の償却が相次いだものの、営業ベースではこれまでのリストラが寄与し、おおむね利益の改善が進んだ。

 連結でみると、売上高は丸紅の二七%減を筆頭に伊藤忠商事一六%、トーメン一四%、日商岩井一一%各減など、不採算・非効率取引の見直しや衣料品を中心とする単価下落、円高による円建て貿易取引の目減りから減収が相次いだ。

 その中で、三菱商事が二三%増と大幅な増収となり目を引いた。同社は単体で二六%増収、カジュアル専門店チェーン、SPA型アパレル新業態向け取引の急増が主因。また、住友商事、三井物産も1ケタ%ながら増収となり、旧財閥三社の資金力を背景とした躍進が際立つ。

 一方、利益の改善も目立つ。伊藤忠が営業総利益で四年ぶりに増益に転じる一方、連結営業利益で百十一億円と前年同期を二一%上回ったほか、リストラ一巡のトーメンが連結経常利益で過去最高水準の二十一億円を確保。ニチメンも連結営業利益で三十四億円を計上するなどこの間の事業再構築の成果が表れた。また、住友商事も絶対額は明らかにしていないが連結純利益が倍増するなど、収益面での改善が上期の特徴だ。

 下期見通しでは、個人消費の低迷などから「引き続き市場環境は厳しい」(加藤誠伊藤忠専務)としながらも、「総利益の減少に歯止めが掛かり、経費抑制効果もあることから、通期で前期並み純利益(約八十億円)を見込む」(同)という伊藤忠のほか、「商い見直しは上期で一巡。連結経常四十億円は固い」(植木良彰トーメン副社長)など強気の利益計画を打ち出している。

 上期で二〇%台の高い増収率をみせた三菱商事はトリフォーレなどの機能分社を強化、新流通システムの構築を通じてSPA業態との取り組みパイプを太くし、通期で引き続き2ケタ%の増収増益を目指す計画。

 また、三井物産は紳士服関連子会社の低迷が続くものの、欧州ブランド販社の業績が急回復しており、ここ数年のリストラに決別し、再び増収増益に転じることを宣言。住友商事も強気の攻めの体制を敷く。子会社の清算損などで通期赤字となる丸紅も「今期末で負の遺産処理が終了、来期は連結純利益十億円を目指す」(松井正男専務)と黒字浮上を宣言した。