織機・編み機編/繊維機械メーカーの産資戦略

2009年10月29日 (木曜日)

伊藤忠システック/キーワードは“積極レピア”

 ドルニエ社の日本輸入元である伊藤忠システックは、積極レピアという独自の緯入れ機構を生かし、ドルニエのレピア織機を産業資材分野にも積極的に提案する。

 ドルニエの最大の特徴は、棒レピアの積極レピア方式による高い汎用性だ。とくにモノフィラメントや極太番手の緯入れでは圧倒的な力を発揮する。このため、とくに産業資材関連でも高い性能を発揮できる。また、アラミド繊維など高機能繊維製織専用機「デュオカラー」もラインアップ。織物片側の捨て耳がゼロになり、もう片側も数センチしか捨て耳を作らないため、高価な原糸のロスを抑える。

 5月には尾州産地の中伝毛織でオープンハウスも行った。反響は大きく、とくに資材を扱う企業や、これから資材分野に参入を検討している機業から多くの引き合いが寄せられた。

 もうひとつ、同社が代理店を務めるダブルレピア織機「バンデビーレ」にも力を入れる。従来のカーペットやベルベット製織だけでなく、今後の需要拡大が期待されるサンドイッチクロスなど3次元織物の製織でも力を発揮する。

 汎用性のある織機を提案することで、国内の機業が先進国型機業へと進化するのを後押しするのが同社の基本方針である。

滝沢トレーディング/「オプティマックス」で汎用性アピール/顧客ニーズに合った提案を

 ベルギー・ピカノール社の日本総代理店である滝沢トレーディングは、新鋭レピア織機「オプティマックス」の汎用性を武器に、衣料から産業資材まで対応する万能機としてアピールする。

 オプティマックスは、資材用途でも販売実績が増えている。昨年も販売実績を上げており3・4メートル幅機で、主に基布関連の製織で活躍中だ。製織内容を選ばない汎用性に加え、オプションとして高トルクモーターも用意しており、資材で求められるハイテンションでの経糸送り出し・巻き取りにも対応可能だ。

 また、同社はピカノール〈蘇州〉が中国で生産するレピア織機「GTマックス」もラインアップ。オプティマックスの前身である「ガンマックス」と同等の性能を持つことに加え、中国生産によるコストパフォーマンスも特徴だ。導入機業の協力を得て、実際に稼働する同機を常設で見せることも検討中だ。

 同社ではベルギー製のオプティマックス、中国製のGTマックスの2本立てで、顧客のニーズに合った機種の提案を行う考えである。

イテマウィービングジャパン/「ART」で産資にも強み/タオル用途にも力入れる

 イテマウィービングジャパンのレピア織機「スルザーテキスティールG6500」の評価が高い。新たに開発した緯入れシステム「ART」によって、積極レピアに劣らない汎用性を実現した。衣料だけでなく、産資用途でも導入拡大が期待されている。

 ARTは特殊なレピアヘッドを採用することで細繊度糸から極太番手糸、意匠撚糸など多様な糸を安定的にレピアヘッドでフックし、受け渡すことができる。7月に内覧会を開催し、ART搭載のG6500を実機提案し、積極レピアに劣らない異種異番手緯入れ能力を披露した。反響は大きく、その後も導入を検討する機業が同社に特殊糸を持ち込んで、実際に緯入れするテストを行った。こうした効果もあり、9月以降に実際の成約にもつながったという。とくに導入が多いのが資材用途だ。様々なタイプの緯糸を打ち込む点で、G6500の汎用性が力を発揮した。

 一方、一般繊維ではタオル用途に力を入れる。このほど愛媛県産業技術研究所繊維産業技術センター(愛媛県今治市)と今治高等技術専門校(同)にG6500の設置が決まった。繊維産業技術センターはART搭載機だ。また、泉州タオル産地にも力を入れており、G6500に加えて、ドビー搭載機で評価の高い「バマテックスダイナテリー」と両輪で提案する。

ポバールメーカーの戦略/クラレ/合理化と値上げ交渉に注力 SD―1000を上市

 クラレの09年上半期のポバール販売は、1~2月を底にして徐々に回復に向かったものの、「回復力の勢いに欠ける」という状況だった。とくに構造的な問題を抱える繊維用と包装用フィルム向けが前年比約40%減と厳しい状況だった。また、接着剤用も住宅着工件数が8月は前年比約40%減になるなど大きく落ち込むなど市場環境悪化の影響を受けており、「年内の回復は望みにくい」とみている。一方、製紙用については大手製紙メーカーが減産を続けているものの、稼働率は総じて80%の水準にまで回復しているという。

 今下期の市場環境については、「上期に比べて各用途とも需要が回復するものとみられるが、最悪期を脱しただけで昨年の水準にまでは戻らない」とみている。その一方でナフサや重油価格が値上がりしているため、「収益の圧迫を避けられない状況」と懸念する。

 このような中、今下期は生産効率を上げるため、銘柄の統廃合を進めるとともに、あらゆる面でコストダウンを進める考え。また、原料価格の上昇を受けて、9月10日から1キロ=25円の値上げを発表しており、「早急に交渉を進めていく」とする。このほか、新規用途開拓の面では、このほど感熱紙の染料分散剤用に「クラレポバール SD―1000」を上市しており、今後拡販に注力する考えだ。

ポバールメーカーの戦略/日本酢ビ・ポバール/需要は4~6月から回復 主力3分野が堅調に推移

 日本酢ビ・ポバールのポバール販売は、1~3月を底にして、4~6月以降は回復に向かい、7~9月は「分野によって強弱があるものの、総じて最悪期は脱した」という。10月も堅調に推移しており、フル稼働になっている。販売は国内60%、輸出40%の割合だが、国内外とも回復がみられるという。

 昨年秋以降の世界同時不況は時期をずらしながらもポバール販売に影響を与えた。しかし、それまで好調に推移していたビニロン繊維、中間膜(自動車の窓ガラス用ブチラール樹脂など)、偏光膜など用途は落ち込みを軽微にとどめた。国内の繊維分野は大きく落ち込んだが、主力3用途が堅調だったことがカバーしている形だ。

 今後に向けては高付加価値商品へのシフトを重視し、「Dポリマー」などに注力する。また、原料価格の上昇を受けての値上げ交渉が浸透しつつあり、適正価格の維持も重視する。