展望2010/不織布編/差別化品の強化や海外市場開拓へ
2010年01月04日 (月曜日)
過去数年、成長が続いてきた不織布も世界同時不況の影響を受け、2009年は大幅な減産を強いられた。徐々に減産率は緩和されてきたものの、08年前半までの勢いはない。こうした中で、差別化品の強化や海外市場開拓の動きが活発化する。
自動車不振で減産続く/マスク向けが需要増大
経済産業省繊維・生活用品統計月報によると、日本の不織布生産量は03年以降、拡大を続けてきたが、08年はほぼ横ばいの33万8438トンにとどまった。これは一昨年秋のリーマン・ショック後の経済混乱から不織布の主力用途である自動車産業などが大幅な減産に入り、不織布需要が一挙に後退したことが大きい。
現実に自動車資材を主力とするニードルパンチ不織布は08年9月から減産傾向に入り、昨年3月には実に前年比43・2%減という落ち込みを記録するに至る。若干緩和されたものの、昨年9月現在でも20%減の状態を強いられている。ニードルパンチ不織布の苦戦はその原料であるポリエステル短繊維メーカーにも影響を与えるだけに、問題は深刻だ。
ニードルパンチ不織布だけでなく、自動車資材は不織布にとって大型用用途であり、自動車の回復が全体を下支える。しかし、日本自動車工業会がまとめた10月の国内自動車生産台数は8カ月連続で減少率は改善しているが、前年比では19・1%減の82万910台と2ケタ%減が続いている。
こうした中で不織布需要が急増した分野がある。それはマスク。日本衛生材料工業連合会によると、2009年4~6月のマスク生産量は前年に比べ約4倍の7億4489万3000枚、7~9月は3・5倍の9億6228万4000枚を記録した。加盟企業の増加だけでなく、絶対量が大きく伸びている。
シキボウの抗ウイルス加工「フルテクト」によるマスク販売は同期で1000万枚弱(一般消費者向けも一部含む)に達した。日本バイリーンも新型インフルエンザ対策用でN95規格などのマスクが拡大。4~9月で前年1年間の売り上げとなった。マスクの多くは不織布を使ったもので、メルトブロー不織布やスパンレース不織布が使われる。
スパンレース不織布では除菌ワイパー向けも増加した。これも新型インフルエンザ関連だ。繊維・生活用品統計月報によると、スパンレース不織布は6月から増産に転じ、4カ月連続で前年を上回る勢いを見せている。
強みに磨きかけ用途開拓/輸出や製品事業の拡大を
自動車資材は苦戦する一方で、マスクは好調という幅広い用途展開を持つ不織布ならでは強みがそこにある。その強みに磨きを掛けるため、新商品開発も不織布業界では活発化している。それによって事業構造を転換する狙いがある。新たな製法だけでなく、複合化することで新たな価値を見いだそうとする動きもある。
同時に、これまで内需型であった不織布業界も輸出強化に乗り出している。旭化成せんい、クラレクラフレックス、ダイワボウポリテック、ユニチカなどは海外戦略を具体化する。
旭化成せんいは香港に1人、独フランクフルトに3人の担当者を置いているほどだ。
輸出と並んで各社が強化するのが不織布製品事業。オーミケンシではキチン・キトサン繊維「クラビオン」使いの不織布をマスク向けに展開するが、自社ブランドの「SRマスク」で自社でのマスク製品生産に乗り出した。日本の協力工場に貸与する体制で、能力は月産50万枚の規模で稼働を始めている。
加工度を高めて付加価値を取る。中国はじめとして輸入不織布が増加するなかで、不織布も衣料用繊維と同じ戦略を敷いているようにも見える。
しかし、衣料用繊維と異なるのはゼロサムゲームではない点だ。不織布には商品開発によって新用途を開拓する力がある。まだまだ、未開拓の分野、そして不織布がソリューションを提供できる分野は少なくない。不織布はこのままでは終わらない。
10期待の商品/旭化成せんい PPS不織布/バグ狙いに本格マーケ
旭化成せんいが昨年発表したエンジニアリングプラスチックを原料とする長繊維不織布が注目株だ。
昨年3月、せんい先端技術センター(滋賀県守山市)でセミコマーシャル機が完成。第1弾としてPPS(ポリフェニレンサルファイド)を原料にした長繊維不織布で、昨年から本格的なプレマーケティングを開始している。
同設備は基本的にメルトブロー不織布(MB)をスパンボンド不織布(SB)で挟み込んだSMS構造で、年産数百トンの規模を持つ。幅は1メートル強。生産目付は1平方メートル当たり10~200グラムと言う。
SBの単糸は8ミクロン、MBは2~3ミクロン。熱圧着により不織布化する。
PPSは耐熱性、耐薬品性、難燃性が特徴のエンジニアリングプラスチックで、短繊維を原料にしたニードルパンチ不織布はバグフィルターなどの耐熱フィルターに使われており、同社のPPS不織布も同分野を狙う。
昨年は中国上海のアジア国際不織布産業総合展示会・会議(ANEX2009)や独・フランクフルトの産業用繊維・不織布専門国際見本市「テクテキスタイル」にも出品し、海外市場も攻める。




