特集「活路」を探る事業戦略―新たな“価値創造”を求めて/ユニチカトレーディング社長・松永卓郎氏/メーカー機能を重視

2010年02月25日 (木曜日)

 ユニチカファイバー、ユニチカテキスタイル、ユニチカサカイ、ユニチカ通商の4社を統合して昨年10月に発足したユニチカトレーディング。松永卓郎社長は「ユニチカの繊維事業は120年の歴史があり、その重みを感じている」と話す。問題は収益体質をどうやって回復させるか。有望領域に経営資源を集中投下することで、収益改善をめざす。

有望領域に経営資源集中

――会社設立後、3カ月が経ちました。

 当社は産業用を合わせても繊維関連の売り上げが全体の50%を占めます。なかでも衣料繊維は120年の歴史があり、お客様からも「ユニチカは繊維の会社」と認識されていることを改めて実感しました。ただ、事業としての収益力が落ちているわけで、これをどうするかです。世界の潮流としてグローバル化があり、需給ともにも海外にシフトしていますが、消費という観点で見れば、日本は高い位置にあるといえます。やはり糸がこの世から無くなることはありえないのだから、繊維事業は続けていくべき事業だと考えています。大事なのは、“原糸発”ということでしょう。その意味では、メーカー機能を重視しています。

――今期の見通しは。

 繊維は収支トントンで乗り切る計画でしたが、予想以上に衣料の状況が厳しい。その分を産業用でカバーするかありませんが、こちらも単価下落など環境が思わしくありません。ただ、収益改善は進んでいます。常盤工場の縮小で一部生産はインドネシアに移管しますが、設備の移転も完了し、現在は技術者を常駐させて試験生産中。来期からは本生産がスタートします。国内は細番手糸や長短複合素材に特化しますので、技術開発を徹底します。それと、今回の海外移管は販売先が進出しているアジア圏でいかに機能を提供できるかという目的があります。FTAなど好条件も整備されてきました。取引先が展開しているベトナムや中国などで、現地との提携も含めて供給体制を作り、差別化素材を販売していきたい。その上でR&D機能を日本で追求します。

――低価格志向で差別化素材も“価値”が認められにくい時代です。

 当社の場合、メーカーと商社、二つの側面があります。それでも強みは何かといえば、やはり国内でモノ作りをし、安定供給してきたこと。確かに現在はデフレですが、同時に素材の機能への関心も高まっています。産地の力を借りながら素材開発が重要になると考えています。商社としても専門商社と同じことをしていては意味がない。メーカー機能を生かした機能を発揮したい。つまり、糸の専門知識を持ったうえで市場のニーズを吸収し、再びモノ作りに反映させることですね。現在のデフレは、この機能と価格がミスマッチとなっているともいえますが、いずれマッチするときが来ます。問題は、それまで時間がかかるということ。それまでは耐えるしかないでしょう。

――来期は、本当の意味で発足初年度と言えます。

 残念ながら、経営資源には限りがありますので、有力顧客との取り組みや、有望分野に経営資源を集中投下することになります。やはり糸・生地の価値や機能性が生きる分野ですね。その上で、来期は本当の意味で4社統合の結果として今後どのような会社を目指すのかを議論します。12月には結論を出したい。収益面では、まずは営業利益段階での黒字浮上が絶対目標。次に経常利益でも黒字化させる計画です。

(まつなが・たくろう)

 1975年三和銀行入社。2003年ユニチカ出向経営企画本部長付。04年1月ユニチカ入社07年上席執行役員、09年4月営業戦略室長兼繊維事業再編推進担当、同年6月ユニチカ取締役兼ユニチカファイバー社長、同年10月ユニチカトレーディング社長

今年は、これに期待/五感に訴える商品を

 「メーカーとして、消費者の五感に訴える素材に力を入れたい」と話す松永社長。例えば昨年12月に開催したスポーツ素材展では、涼感素材「打ち水 爽」、温度調節素材「クールキャッチプラス」などを披露した。こうした“機能を実感できる”素材提案に期待を寄せる。また、“安心・安全・環境”も重点テーマ。例えばユニフォームの回収リサイクルシステム「エコラリー」は、同社が新たに商社機能を持ったことで、これまで以上に全体のコーディネートで利点も。ここでも統合効果に期待だ。