レーヨン短繊維2社/スパンレース対応に相違

2010年03月15日 (月曜日)

 レーヨン短繊維の最大用途である不織布、とくにスパンレース不織布を巡りダイワボウレーヨン、オーミケンシの2社が相違を見せている。「基本的に力を入れる分野ではなくなりつつある」とするのは、ダイワボウレーヨンの岡本彬社長。逆に「不織布メーカーとは共同開発、用途開拓を進めて連携を強めたい」とオーミケンシの伊藤眞治取締役繊維素材事業部長は話す。レーヨン短繊維をけん引してきたスパンレース不織布向け。ここに来て2社のスタンスが変わろうとしている。

ダイワボウレーヨン「スパンレース以外狙う」/オーミケンシ「開発で新分野開拓」

 業界推定によると、かつての不織布向けレーヨン短繊維の市場規模は月産2000トンといわれたが、現在は1000トンにまで縮小したとされる。スパンレース不織布の主力であるベビーウエット(赤ちゃんのお尻拭き)の製品輸入の増加や輸入わたへのシフト。さらに、レーヨンの混率低下などがある。

 その背景には2008年までの原燃料価格の上昇時に、レーヨン短繊維価格が急騰。その結果、国内のスパンレース不織布メーカーが輸入わたへのシフトを強めたこともある。しかも「輸入わたの品質水準も上がっている。かつての紡績用と同じようになりつつある」とダイワボウレーヨンの岡本社長は指摘する。

 一方、オーミケンシの伊藤取締役は「スパンレース不織布向けが減少しているのはレーヨン短繊維、不織布メーカーともベビーウエットに傾斜し、商品開発をしてこなかったツケ」との見方。また、海外わたの品質が向上しても、一定水準にとどまると述べ、十分差別化できると強気の見通しを立てる。

 こうした両社のスパンレース不織布に対する見通しの違いは今後の戦略にも表れることにある。

 ダイワボウレーヨンは乾式用でケミカルボンドやニードルパンチの両不織布やショートカットファイバーによる湿式不織布用、さらに差別化品による紡績糸用などに力を入れる。岡本社長は「日本は高付加価値品でしかモノ作りは残れない」と岡本社長は強調する。

 そして、ベビーウエットを中心とするスパンレース不織布など量が多い分野は「今後、価格対応がさらに強まる。無理には追いかけない」とし、減少を覚悟。開発を強化し、その他の小型分野を積み上げることでカバーする戦略を組む。

 オーミケンシは逆にそのスパンレース不織布向けで新分野開拓に挑む。「スパンレース不織布にウエットワイパー以外の分野が少ないのはレーヨンの特性による部分もある。それならば逆にレーヨンを改質し、供給すればスパンレース不織布で新市場は狙える」と伊藤取締役は強調。中小を中心とするスパンレース不織布メーカーと連携した開発を進める。

 ただ、レーヨン短繊維2社のスパンレース不織布に対する姿勢に違いは出ているが、開発強化という戦略だけは共通する。