艶金興業/繊維事業から全面撤退/ソトーに事業譲渡で合意
2010年04月13日 (火曜日)
尾州産地の艶金興業(愛知県一宮市)は、染色整理加工を中心とした繊維事業から全面的に撤退する。各工場、事業所については今年7月をめどに稼働を停止する。事業はソトーへ譲渡する方向で、10日に基本合意書を結んだ。
同社は墨宇吉が艶打ち(織物の仕上げの一工程)を主とした艶屋(つやや)を起業したのが始まり。創業明治22年(1889年)の老舗染工場であり、技術力の高さでも定評があった。
しかし近年、生産量が減少していくなか、2004年には津島工場を閉鎖し、起工場、木曽川工場へ業務を集約。収益の改善を図ってきたが、それでも原燃料価格の高騰、受注数量の大幅な減少などが続き、多様化する加工に十分な対応が難しくなっていたことから、今回の決定に至った。
ソトーは原則として艶金興業が営む染色整理加工事業の全部を引き受ける。ただし、不動産や負債、関連子会社(艶金化学繊維、中日本倉庫、ツヤック、ツヤキントラスト)の事業については艶金興業が継続する。資産や従業員205人については条件が合い次第、継承する。
艶金興業は受注と生地受け入れを5月20日まで行い、7月20日をめどに稼働を停止する予定。在庫は7月20日まで艶金興業が管理を行い、翌日以降はソトーが管理する。
クラボウのコメント
昨年から羊毛事業関連で取り組みを深めてきただけに、突然のことで非常に驚いている。今後の対応については、詳細が分からないため、今は何とも申しあげようがない。ただ、ソトー様に事業譲渡されるということで、今後は、艶金興業様と話し合いながらソトー様との協力体制を早急に構築したい。
解説 「全く先が見えない」/相次ぐ染工場の撤退
3月の遠州産地の大和染工(静岡県浜松市)に引き続き、また大手の染工場が事業の撤退を決めた。尾州では昨年末、いわなかが民事再生法を申請したが、それ以来の大きな衝撃となる。
いわなかの一件をきっかけに「産地全体が大きく変わる」(産地関係者)との声が聞かれたが、まさにその言葉通りとなりつつある。
08年の金融危機以前からウール離れにより尾州全体の生産量は減少傾向で、厳しい環境にあった。危機以降は生地コンバーターやアパレルが中国での生産シフトを加速、今年10月から一宮市で導入される事業所税の負担増などもあり「事業を今後継続していけるか、全く先が見えない」(別の産地関係者)実情があった。
コストがどうしても高くなる国内生産から海外へ生産がシフトしていくのは、自然の流れと言えばそれまでかもしれない。
しかし、「衣食住」という生活の根幹をこれ以上他国任せにするのもいかがなものか。食料自給率が低いことが問題視されるのに、衣服の輸入比率が高すぎることが一向に問題にならないのは、日本の繊維産業にとって、まさに悲運としか言いようがない。