ひと/伊藤忠繊維貿易〈中国〉の総経理に就いた・水谷秀文氏/3年ぶり3度目にわくわく
2010年05月06日 (木曜日)
中国繊維産業の発展とともに生きてきた文字通り中国ビジネスのプロ。3年ぶり3度目の上海赴任で「人からは慣れたものでしょうと言われるが、今回ほど血わき肉踊り、わくわく、どきどきしたことはない」と言う。
とう小平の「南巡講話」で「改革・開放」が加速した1993年からの3年半、縫製合弁の設立に奔走。中国に日本向けアパレル生産拠点を構築していった。
2003年からの5年間は内販ビジネスを手掛ける。ゼロからのスタートだった。「対日のノウハウを生かし、ローカルアパレル向けにスポーツやインナーでOEMを始めたが、トライ&エラーを繰り返した」と振り返る。
苦労した内販は今、伊藤忠繊維貿易〈中国〉(略称ITS)の売上高の約3割、利益では5割近くを占めている。「3年ぶりに戻ってみると、原料・資材などアパレル以外にも内販の裾野が広がっていた」。
日本向けアパレルの生産管理業務がルーツのITSは年間売上高が約7億ドルに達し、事業内容も多角化して、“ミニ繊維カンパニー”のごとく成長した。血わき肉踊る理由は、それを今後、どう発展させるかというダイナミズムにある。
ポイントは2つ。ひとつはローカル企業とのコラボレーション。ヤンガーの李如成氏、杉杉の鄭永剛氏、維科の何承命氏ら大手繊維企業の老板(経営者)たちと長年培った人脈が生きてくる。
もうひとつはナショナルスタッフの登用。「10数年前に新卒で採用したスタッフが部長級になっている。帰任後の後継者には中国人を据えるぐらいの気構えで育てたい」。
90年代、00年代の経験を踏まえ、10年代の新しい中国ビジネスを切り開く気概は満々、条件は十分にある。
みずたに・ひでふみ
1985年大阪外大中国語科卒、伊藤忠商事入社。伊藤忠繊維貿易〈中国〉副総経理、繊維原料・テキスタイル部シャツ課長などを経て4月から現職。47歳。夜は堪能な中国語を駆使して、新しい人脈作りに精を出す。