反転攻勢の礎・商社決算連載(1)大手商社編(1)総利益率、営業利益率は改善

2010年05月25日 (火曜日)

 大手商社の2010年3月期連結決算は、百貨店を中心とする衣料品市場の不振、極端な低価格化の進展など、リーマンショック以降の環境変化の影響を受けた。自動車関連など産業資材繊維分野で回復の兆しは見られ始めたが、売り上げ面ではすべての商社が減収となった。利益面でも、伊藤忠商事と双日が売上総利益で微増益、営業利益で丸紅が9・7%の増益となったほかは、ほとんどの商社が減益を強いられた。

 とくに主力ビジネスとするアパレル製品OEMビジネスでは、百貨店アパレル向けを中心とするビジネスが消費不振の影響をもろに受けた。住金物産の営業利益は64・5%減と大幅な減益となっている上に、低価格化志向による単価の下落で営業利益率が昨年の3・1%から1・3%へと大きく下降した。

 ただし、各社とも逆風の中で一段と事業の集中と選択を進めると同時に、販管費の縮小や生産の効率化、物流改革による経費の削減などコストカットを積極的に進めたことで、より筋肉質な事業体質を手に入れている。

 実際、多くの商社で売上総利益率(粗利率)や営業利益率が改善した。粗利率では伊藤忠が昨年より2・5ポイント上昇して19・9%と20%に迫る。住友商事も1・9ポイント上昇して18・3%まで上昇した。

 伊藤忠はジャヴァホールディングス、レリアンを連結子会社化するなど国内外有力企業への投資でグループ経営を強めている。住友商事はジュピターショップチャンネルやネット通販の「ELLE SHOP」など独自のマルチチャネルリテイル戦略を推進する。

 従来からの主力事業の製品OEM以外の分野でも収益源となるビジネスモデルを構築している商社は、全体的な経営環境の悪化で売り上げこそ落としているが、確実に利益率を高めている。

 11年3月期に向けて、多くの商社が収益の拡大を計画する。そのためには見え始めた回復の兆しを逃さず、素早く成長路線にかじを切ることが求められる。その際、前期に培われた筋肉質な事業体質と新たな分野でのビジネスモデルが反転攻勢の礎となる。