原料価格と小売価格(前)アクリル短繊維/4~6月でAN価格に天井感/上がらない小売価格が歯止め
2010年06月30日 (水曜日)
アクリルの主原料であるアクリロニトリル(AN)は合繊原料の中でも値上げ幅が大きいものの1つだが、この4~6月で相場に天井感が出てきた。4月に小幅上昇して5月は若干下げており、他素材との競合や低価格化が続く小売価格との関係で、これ以上の上げは難しい水準になったことが背景とみられる。
値上げ幅がとくに大きいアクリルやナイロンの原料は供給者が限られているため原料メーカー側の価格交渉力が強く、定期修繕などによる供給量減少が価格に反映しやすい面がある。また、ANの場合は中国の家電用途などがけん引役になりABS向けの需要が拡大している。アジアでのAN需要量は年間約145万トンとみられるが、07年にABSがアクリル短繊維を逆転。そして09年はABSが2けた%伸びる一方で繊維は減少し、その差を広げた。
AN価格はABS樹脂の需要拡大に支えられて需給がタイトになり、昨年秋以降急激に高騰した。リーマンショック後の需要減退時は、一時期740ドルまで値を下げたが、今年3月にはその3倍以上となる2400ドル超えで史上最高値を更新。この中でアクリル短繊維は、市場環境が回復しない中で好調なABSを土台とした原料価格で事業を運営しなければならない厳しい状況に置かれた。
ただ、AN価格は4月も史上最高値を更新したが上げ幅は小幅にとどまり、5月は若干の下げに転じた。注目すべき点は需給関係が崩れるという従来型の下げとは様相が異なることだ。4~6月はアクリル短繊維のトップシーズンであり、ABS樹脂向けの需要も引き続き強く、ANメーカーの工場も引き続き順調に稼働している。
アクリル短繊維にとって現在の原料価格は「これ以上高騰すると事業として成り立たなくなる」(日本エクスラン工業)という水準にある。これまでの高騰の中ではコストダウンや商品の高付加価値化、販売価格への転嫁などで我慢しながら使ってきたが、他の合繊原料の動向や小売価格からすると限界に達したということで、「この2カ月はこれ以上高くなると必要ないという水準だった」(東レ)との声が聞かれる。また、一方のANメーカーにとってもアクリル短繊維は依然として重要な用途の1つであり、「アクリル短繊維の現状からすると、相場がここから大きく上がっていくことは考えにくい」(旭化成)という見方をしている。




