東海地区繊維ビジネス特集(中部支局開局1周年)/“素材力”で新市場を切り開く
2010年09月28日 (火曜日)
日本の商社や産地企業の持ち味は、やはり素材のバリエーションや高度な技術力を背景にした品質の高さにある。各社が持つ“素材力”は今後、海外市場の開拓において他国の素材と競合していくなかで、非常に重要な要素を占めるはずだ。
モリリン/5素材を軸に販路拡大
モリリンの原糸グループは、来春夏向けの素材として「テンセル」と東レの異型断面ポリエステル長繊維「セオα」を組み合わせた長短複合精紡交撚糸「テンセル クール」を打ち出した。「テンセル」と長繊維の精紡交撚は初めてで、テンセルの柔らかさとひんやり感やセオαの吸水速乾性、紡績糸表面の毛羽立ちが少ないなどの特徴を生かし、ニットなどへ販路を開拓しつつある。
ほかにもトリアセテートと各種スパンの長短複合精紡交撚糸「パーチェ」や、キュプラスパン100%のサイロコンパクト糸「リーナ」、リネン100%のメランジトップ糸「シャングリア」に、秋冬向けのカラーウールのメランジトップ糸「オデッセイ」の5素材を軸に販売攻勢をかけている。
豊島/高機能素材の販売軌道に
豊島の一宮本店一部が今年から販売に乗り出した高機能素材「アドバンサ・サーモクール」の市場が広がっている。同素材は、吸水速乾性を持つ雲形断面のポリエステル繊維と、保温機能を持つ中空断面のポリエステル繊維の組み合わせで“自然体温調整能力”を発揮、快適に過ごせる心地よさを追求した。
現在、生地商やSPAなど販路を開拓。とくにSPA向けに綿混素材がカットソー製品で採用され、3000着を販売、追加注文が来るほどの人気商品となっているという。ほかにもスポーツ、インナー、靴下、ユニフォームなど様々な用途へ提案、社内の製品部隊とも連携しながら市場を広げる。
KBツヅキ/あの新技術を一気に開発
KBツヅキは新たに11の技術を開発し、話題を呼んでいる。すでに商業生産に乗り出しているTZ酸性酵素法は強アルカリ性である苛性ソーダを使わないで精練漂白する技術で、通常なら8以上のpH値を7・5以下にすることが可能だ。
TZ消臭加工法やTZ抗菌加工法は、従来とは異なる手法で加工剤を繊維に固着。従来では考えられなかった洗濯耐久性を確保できる。
TZ立体構造化製法は、染色時に繊維を膨潤させ、綿織物にかさ高性を与える技術。通常よりも3割程度軽く感じ、繊維内部の空気層によって断熱性が高まるとともに、純綿でもヨコ方向のストレッチ性が付与される。
鈴憲毛織/これまでにない“白”追求
尾州産地の鈴憲毛織(愛知県一宮市)は、ファイバーメーカーと共同で高透明ナイロン糸を開発し、その糸を使った素材「モアヌーディー」を開発した。これまでにないしなやかさや柔らかな肌触りを持ちながら、高強力、高サポート力を実現できるのが特徴で、ファンシーヤーンやアンゴラ、カシミヤ、ラムといった獣毛などを組み合わせた織物やニットを打ち出し、オールシーズンに対応する。
モアヌーディーを使いながら過去の生地見本の資料をもとに、トレンドに沿った素材開発を加速、別注に対しても柔軟に対応し、初年度は6000反の販売量を目指す。
JBブランド/中国で初めての単独展
一般社団法人「ジョイント・尾州(JB)ブランド」の輸出グループは、11月30日から12月2日、上海世貿商城(上海マート)で中国では初めてとなる単独展を開く。産地が得意とするウール素材を軸に、多品種小ロット・短納期対応、染色整理の技術力の高さをアピールしながら、中国市場を深耕する。
参加するのは長大、後藤毛織、石慶毛織、早善織物、みづほ興業、三星毛糸、森織物、野村産業、モーリタン、昭和毛織、ファインテキスタイル、渡六毛織、日本エースの13社。輸出の窓口としては豊島が担う。
実際、円高による影響があり日本製生地の競争力は厳しい状況にあるが、多品種小ロット生産や染色整理の技術などで優位性を発揮しながら「イタリア製にはないテースト」「中国では生産できないもの」をアピールする。
展示のコンセプトとしてはインターテキスタイル上海とも共通し、“衣服は身体の第一空間である”を掲げ、テキスタイルの根源に立ち返り尾州産地の得意とするウール素材の開発を魅せる。「ホワイトファンタジー(白の幻想)」「スキン(皮膚)」「エターナル(永遠)」「リリカル(叙情的)」の4つのテーマを設定。そのテーマに沿った130点以上の開発素材を打ち出す。
トピックス/意外に落とし穴が?中国テキスタイル輸出
中国現地アパレルへテキスタイルを売り込め!――来月10月に開かれる「インターテキスタイル上海」では日本企業が多数、参加するが、中国へテキスタイルを輸出するにあたって気を付けなければいけない点がいろいろとある。
「意外と中国へ輸出しようと思えばできるものだ」とある機業関係者。「現地アパレルに対して直接売ることは、そう難しいことではない」が、「そこには落とし穴もある」と言う。その落とし穴とは衣料に対する安全基準の違いだ。
中国では品質についてGB18401―2003「基本安全技術要求」の強制規定があり、ホルムアルデヒド、pH値、水堅牢度などの9項目は必ず合格をしなければならない。安全基準は欧州の基準が模範となっており、日本の安全基準と異なり、なかには中国の方が厳しいといった声もあるほどだ。
とくにpH値は日本にはない基準であり、注意を払う必要がある。「せっかく輸出できたとしても、後からpH値が基準をオーバーしているということで、罰金を取られた」といったケースも。中国内販に大きな期待が掛かるが、事前の情報収集をしっかりしたうえで取り組まなければならない。