東レACS/「人人人」(ひとと)をきょう1日から発売

2010年10月01日 (金曜日)

 東レACSはきょう1日、世界初となるクラウド型アパレルCADシリーズ「クレアコンポ『人人人(ひとと)』」を発売する。6月の発表以来、業界の期待と関心を一身に集めてきた人人人とはどのようなものなのだろうか。従来のアパレルCADの概念をくつがえすものに仕上がっているのだろうか。同社をけん引する寺崎志野社長に話を聞いた。

世界初の「クラウド」型アパレルCADとは?

――クラウド型アパレルCADシリーズ「人人人」がいよいよ発売になります。

 人人人は、世界初のクラウド型アパレルCADシステムです。“クラウドコンピューティング”とは、ネットワーク、とくにインターネットをベースとしたコンピューターの利用形態で、ユーザーはネットワーク経由でサービスを利用します。これまでのアパレルCADシリーズの「クレアコンポ」では「ユーザー自身がソフトウエアを購入し、データを保有・管理していた」のに対し、クラウド型の人人人では「インターネット上でソフトウエアやデータ管理などのサービスを利用し料金を支払う」形となります。

 クラウド型のメリットとしては、初期投資や管理運営コストが最小限で済む、幅広いPC環境でいつでもどこでも利用できる、常に最新のソフトウエアの利用ができる、バージョンアップの作業や費用が必要ないことが挙げられます。これまで初期投資の問題で導入しづらかったSOHOやフリーランスの方でも気軽に利用できるようになります。

 まずは10月1日にパターンメイキングとグレーディングのソフトを発売し、11年春にマーキングのソフトを追加します。12年には縫製仕様書に相当するものを発売する予定です。

――料金体系はどのようになっているのでしょうか。

 アパレルCADとしては世界初の従量課金制を採用しました。パターンメイキング、グレーディングともに、1サービスに付き月々の基本料金が5250円で、1日の利用料金が525円になります。毎月のご利用が11日目以降は利用料金が無料となり、月々1万500円で使い放題になります。サーバーでデータを保管する料金は別で、1GBで月々2100円です。パターンメイキングとグレーディングを11日以上利用し、サーバーでデータを保管した場合の料金は、月2万3100円となります。

――お披露目の場となった8月のアパレルソリューションフェアの反応はいかがでしたか。

 非常に大きな反応がありました。2日間にわたってセミナーを開催したのですが、1日目は営業ベースの説明を中心に、人人人の内容や、なぜ今クラウドなのかということをお話しました。2日目は技術的な話を中心に、クラウドコンピューティングのテクノロジーを丁寧に説明しました。聞いてくださったお客様からは「東レACSさんはちゃんと作っているんだね」という反応がいただけました。

 6月にクラウドシステムを発表した時点では、ほとんどのアパレル様は“クラウドコンピューティング”という言葉をご存知じゃなかった。6月9日から日本全国縦断キャンペーンをしましたが、7割の人は初めて聞いたとのことでした。しかし、様々な業界のクラウドが全国紙で多く取り上げられた結果、数カ月でずいぶん浸透したと感じています。

 ブースでは、直接ソフトウエアに触っていただくことはできなかったのですが、お客様から多く聞かれると予想したテーマを20ページくらい作って詳細に説明しました。機械は5台用意したのですが、常に満杯でなかなか空きが出来ませんでした。「新しいことを勉強したい」という気持ちが伝わってきて非常にうれしかったです。

――世界初の「3D機能」の標準搭載も話題になっていますね。

 人人人は、クラウド化だけでなく、アパレルCAD自体の機能も一新しています。3D機能は、2Dのパターンから3Dの衣服着せつけシミュレーションへのリンクを実現したもので、パターンの形状と衣服の完成形を同時に確認しつつ、リアルタイムでの修正が可能となります。パタンナーの直感、感性をそのまま形にできるので、使い方次第ではパターンメイキングの可能性が大きく広がるでしょう。この機能を使いこなすには、色々な準備と技術が必要になりますが、ぜひ使いこなしていただきたいですね。

――クラウド型のシステムで、自社でソフトウエアの開発から、毎月の課金、請求までを行う例は、他業界を見渡しても珍しいようですね。

 発表してから分かったのですが、クラウド型のシステムの運営を1つの会社で一気通貫でやる会社は弊社しかないようです。基幹系のシステムはソフト会社が作るのが普通ですが、弊社は40年間ソフトを自社で作り続けていますし、営業も代理店を使わずに直接お客様と取引してきました。東レACSの40年の仕事の進め方がそうだったので、まさか他が出来ていないとは思いませんでした。

 また、ソフトウエアという形に見えないものだからこそ、後払い方式にこだわりました。お支払い方法は、クレジットカード、コンビニ支払い、銀行支払いに対応します。ソフトウエア業界でここまでしているところはないのではと自負しております。

――今後の説明会、展示会の予定は。

 10月7日に大阪で個展とフリーランスの方を対象としたSOHO会を同時開催し、東京では10月下旬にSOHO会、10月末に名古屋で展示会を開きます。東京ではJFW―ジャパン・クリエーション(JC)とFISMAで発表し、11年1月は大阪ミシンショーに出展します。これから来年にかけて1~2カ月に1回のペースで様々な会を開き、できるだけ多くの人に人人人の魅力を伝えていく方針です。

 さらに、無料体験コースを10月1日から開始します。10日間の無料体験コースで、実際に人人人の本物のコースを使っていただけます。先着順で、1度に200人をお受けする予定です。

――人人人の発売日は、東レACSの10周年の記念日でもあります。

 弊社は10月1日で10周年を迎えました。40年間CAD一筋に追いかけてきた弊社の集大成が「人人人」です。今後は、11年春にマーキングのソフト、12年に縫製仕様書に相当するソフトを発売するのは先に述べましたが、それと並行して、英語版、中国語版の開発に取り組みます。日本のアパレル様は生産の8~9割が中国、アジアなので、そこで使える状況を作りたい。それと、自分が社長になった時に「ゴールはミラノ」と宣言しているので、欧米の人たちにも人人人を広めたいですね。

 人人人は低コストで気軽にアパレルCADを利用できる画期的な製品です。世界屈指の日本のアパレル技術を、若い人たちに継承できるキッカケになればと願っております。