レクトラ・ジャパンここがすごい!
2010年12月10日 (金曜日)
日本で事業展開を始めて、2011年で25周年を迎えるレクトラ・ジャパン。CAD/CAMを中心とした各種ソリューション提案を継続している。レクトラ・ジャパンとはどのような企業なのか。国内では、どのような機器がどのように運用されているのか。ユーザー以外には、まだまだわからないことも多い。今回は改めて多方面から、同社の取り組みを紹介する。
ユーザーに聞く/尾崎商事/裁断工程が迅速化/繁忙期の対応力アップ
学生服製造卸最大手の尾崎商事(岡山市北区)は、基幹工場として、倉敷、米子、都城、志布志、上海の5工場を持ち、学生服やスクールスポーツウエアを生産する。
学生服の生産は4月の入学式に向け1~3月に最盛期を迎える。学生服業界にはどんなに遅くオーダーが入っても、入学式の前日までに生徒へ納めるという不文律がある。
岩元勝一生産本部生産技術部長は「迅速な生産に向けて、一番ネックとなるのが、裁断工程」と話す。縫製工程自体のスピードアップは難しいが、CAM(自動裁断機)による裁断工程は可能だという。
同社では1991年からCAMを使用している。初めてレクトラのCAMを導入したのは、2007年の都城工場。当時、都城工場の副工場長だった岩元部長は「コンパクト、軽量で騒音も少ない。自動車業界でも使われていることから、当社の求める速さ、精度に対応できると感じ購入を決めた」と説明する。1号機が期待通りの性能を発揮したため、その後はグループ会社の工場でも同型機を導入。08年には倉敷工場に最新モデルの「ベクターファッションFX」を設置した。
従来、倉敷工場には2台のCAMがあったが、「ベクターファッションFX」は裁断スピードがこれらの機種よりも速い。このため、岩元部長は「導入から3年間で、裁断工程での残業時間が減少している。10年以上使うことを考えれば、コスト面でもお得といえます」と指摘する。
最盛期の1~3月は他業種の年間分ほど稼働するなど過酷な運転をするがそれでも、大きなトラブルは起きていない。自社による点検に加え、レクトラ・ジャパンによる年2回の定期メンテナンスも活用。さらに、レクトラ・ジャパン西日本支店が倉敷市内にあるため、岩元部長は「すぐに駆けつけてもらえ、サポートにも不安がない」と全幅の信頼を寄せている。
これからの“挑戦”を後押し/アンドレアス・キム社長
9月に同時に日本と中国圏(グレーダー・チャイナ)のマネージングディレクターに就任し、レクトラ・ジャパン社長に就いたアンドレアス・キム氏に、日本のユーザー、市場に向けた意気込みを聞いた。
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日本と中国はファッションのモノ作りで、密接な関係にあります。私は、この地域のマネージングを一貫して行います。
密接な連携関係にある一方で発生する問題もあります。日本と中国の間で企画、生産、納入、販売といった多くの段階を踏むため、情報伝達のロスが発生します。当社のPLM(製品ライフサイクル管理)システムは、地域を越えて製造過程全般をカバーし、管理ができるようになります。
中国にも当社のソリューションのユーザーが多くいます。これまでの中国で生産し、日本で販売するモノの動きだけでなく、日本国内の企業が、中国市場に向けて販売活動を行う際にも、当社のソリューションであれば的確な支援が行えると考えます。
中国も生産コスト高騰などで、これまでと同じような低価格製品を主体とした生産拠点としての活用は難しいでしょう。
しかし、コストを重視した東南アジア地域への生産移管も短期間には進まないでしょうし、これまでの中国での経験を生かした短納期、多品種対応など、新しい可能性が十分にあると感じています。産業構造自体も健全な形に集約され、新しい局面を向かえています。
日本のユーザーには、このような世界的な生産環境を背景にした「広い目で見た全体最適」を伝えていきたいと考えています。CAD/CAMを製造販売するだけでなく、各企業に存在する手段、工程、人材を分析し、より良い結果を出せる提案を行い「事業推進のパートナー」としてともに成長していきたい。
日本は大量生産を行う産地ではなくなっているかもしれません。しかし、ブランドや企画など「価値」を世界に発信できている。これをさらに強めていくには、引き続き“挑戦”が必要です。私たちはこの挑戦を後押しできる存在になりたいと考えます。(談)
レクトラの取り組み/八木部長に聞いてみよう
レクトラ・ジャパンのカスタマーサポート部の八木健部長。長年にわたり、裁断機を中心としたソリューションを日本企業に納入してきた。レクトラ・ジャパンの機器とはどういうものか、また日本企業とどのように関わってきたのか、率直な疑問をぶつけてみた。
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――レクトラの機器が優れている点はズバリどこでしょう
まず、レクトラの機器の特徴は「長く使える」ことです。設計・機構の両面で“ガタがきにくい”モノ作りが成されています。とくに裁断機など作業環境が厳しく、酷使されることの多い自動車の製造現場でも、この頑丈さは高い評価を得ています。
この物理的に頑丈という面はもちろんですが、アフターフォローやソフトウエアのアップデートなども含めて、長く使えると言えます。
当社が日本で事業展開を開始したのは今から25年前、1985年のことです。ウィンドウズのような大きなシェアを持つOSがないころから、制御系のソフト開発を継続してきました。
制御ソフトの開発過程は世界規模で共有していますから、最新のソフトウエアで古いハードウエアを制御することができます。ある程度の期間を経て、予算や作業の種類が増えるごとに少しずつ機能を追加していくといった導入も可能になるわけです。
実際、納入後20年以上稼働している機器もあります。長期にわたって機器を第一線で活躍させられますから、減価償却が終わってから、さらに利益を生み出す――という使い方ができます。
――頑丈さ以外には、どのような強みがありますか
長期間にわたり、CADとCAMを合わせて開発、製造している点もレクトラの大きな特徴です。双方を知っているメーカーは、それほど多くないのではないでしょうか。
ソフトウエアとハードウエアの両面でモノ作りを並行して行っていますから、それらのマッチングは万全です。また、自動車業界をはじめ、多くの産業分野で採用実績があります。それぞれの分野や作業内容に最適化できる汎用性が高い点も強調できるポイントです。
またCAM単体で見た場合でも裁断品質、スピードともにトップクラスといえる性能を持っています。CAM専業メーカーと比べても性能は見劣りしないと思っています。
また、フランス製ということでデザインに対する評価も高いです。人間工学的に見ても使いやすい形になっています。毎日使う機械ですから、デザイン性も重要な要素になるのではないでしょうか。もっとも、納入時に現場からは「デザインは洗練されているのに、機構部が重くてゴツイ」というつぶやきもあがりますが(笑)。
――しかし、価格が高いという印象がぬぐえません
アジアを中心とする新興メーカーのCAD/CAM機と比べたときに、導入時の絶対的な価格が高いというのは事実だと思います。しかし単純に“レクトラ”というブランド料を上乗せしているわけではありませんよ。
当社では部品供給の安定性や保守サービスの迅速さなど、国内でのサポート体制を充実させています。国内各地のサポートスタッフもベテランぞろいで、色々な経験をし、トラブルへの対処法も知っています。また、繊維業界との関わりが長く、ユーザーの使い方、作業の内容をよく理解しています。
一部、古くなった機器の部品などはリビルド(再生)品で対応することもありますが、基本的に機器が“動かなくなる”ということが無いよう、最大限の対応をしています。
これら導入後のメリットも勘案して価格を判断していただければ――と考えています。
――外資系ということで、ユーザーには不安な面もあると思います
逆に、外資系の利点を生かし、繊維を中心としたモノ作りがグローバル化する中で、海外の生産拠点とシームレスにつながる点を強調したいです。
国内企業が海外に生産拠点を持つ場合も同一の機器を導入すれば、全く同じ保守サービスが受けられますから、生産環境の再現も容易にできます。保守サービスの内容もレクトラグループで規格化されていますから、各種の設定もスムーズに行えますし、拠点間の情報伝達も確実に行えます。
さらに、グローバル化という点では、海外の最新の生産ノウハウや問題解決に関する情報が数多く集まるということでもあります。これらの提供、活用も当社の強みと言えます。レクトラ・ジャパン社の社長も中国圏との兼任となり、今後はこの連携のメリットが、さらに発揮できると考えています。
また、レクトラが外資系と言っても、レクトラ・ジャパンが日本国内で事業展開をして25年を経ています。すでに日本の企業として育ち、果たさなければならない役割も熟知しています。
例えば、外資系では営業時間とそれ以外でサポートに明確な線引きを行う場合が多いと聞きます。
しかし、日本の産地内で事業展開するとなれば、ユーザーの事情にあわせた、ある程度の融通が必要です。産地の中に入っているサービス担当は要請があれば、最大限の努力を行っています。
個人的には、サービス内容を世界基準に合わせるということも必要ですが、日本で必要とされている良い習慣は今後も引き継いでいくべきだと考えます。