シリーズ検査機関 2/カケンテストセンター/一般財団法人移行でダイナミックな事業展開を

2011年04月13日 (水曜日)

一般財団法人カケンテストセンター理事長・姉崎直己氏

 「財団法人 日本化学繊維検査協会」は1日付で、「一般財団法人 カケンテストセンター」となった。一般財団法人への移行と、法人名称を変更。これに伴い、ダイナミックに事業展開できる体制となった。姉崎直己理事長に、一般財団法人への移行と、今後の事業展開の方向性を聞いた。

制約離れた活動に

  ――一般財団法人を選択された理由は。

 我々の試験サービスを提供する事業は、昔の輸出検査法に基づいた時代とは異なります。すでに民間のビジネスに近いものにシフトしてきました。公益財団法人として収支均衡をとるという形では大きな展開が難しい。様々な制約から離れての活動を進めるのが望ましいという判断です。

  ――今後、変わる部分、変わらない部分にはどのようなものがありますか。

 品質向上を通じて国民の生活向上に直結するという経営信条は変わりません。「繊維検査を中心に衣料からハイテク関連分野までカバーする、我が国屈指のグローバルテスト機関」という位置づけも変わりません。顧客からの信頼がますます重要です。公正中立な第三者試験機関としては、試験の正確性が命。今後も技術力を高めていきます。

  ――変わる部分は。

 ダイナミックに事業展開を行っていくことです。これまで公益法人として収支均衡という枠がありました。今後は営利を追求するのではありませんが、収益力を向上させていかないといけません。

 また、株式を持つことができます。これにより、出資も可能になり、グループ経営ができるようになりました。それだけにコーポレートガバナンス(企業統治)が重要になります。

  ――社名も変更されました。

 「日本化学繊維検査協会」から「カケンテストセンター」に名称変更しました。輸出検査法がなくなったころから、繊維以外の日用品も扱いましたから、名称変更の議論は以前からありました。しかし、カケンという略称は残したいという思いもあり、様々な名前が候補に挙がりましたが、この名前に落ち着きました。評議会メンバーである化繊メーカーの方も今回の名称変更に賛成していただきました。

顧客満足度を上げる

  ――大きな流れの中では、グローバル化も背景にありますか。

 私が理事長に就任した1年後一昨年10月に、中期計画を策定しました。当時から一般財団法人への移行を考えていましたが、若手も含めて議論を重ね世界レベルの試験機関となり、最高の技術を有する試験機関になろうという夢を将来の目標として計画に掲げました。欧米の認証・検査機関は巨大です。そうした機関と提携もしています。今後も事業を進めるうえで、協力関係を保ちながら、これを目標にして国際展開を図っていきます。

 今日、国内の試験ビジネスは推定で200億円くらいでしょう。この数字が今後、大きく膨らむという展望は難しい。飛躍していくためには、世界の試験需要を取り込む必要があります。そのための準備を着実に進めていきます。

  ――今後の経営課題は。

 顧客が第一です。ですから顧客満足(CS)度をいかに上げていくかということです。これは日本の顧客だけではありません。試験技術、納期、料金といった面で、国際競争力を強化して、カケンのブランドを国際的に高めていくことです。

 長期的には人材育成も重要ですね。中途を含めて、粒よりの人材を採用していきます。

  ――グローバルな人材ですか。

 1日に入社式を開きました。新入社員には「海外勤務は当然になる。そうした準備を進めるように」と話しました。将来への布石を打ちながら、同時に国内市場に向けた試験もより充実させていかないといけません。有害物質、放射線など安全・安心の分野。機能性繊維の分野。試験方法の確立を含めてやるべきことは多いですね。また、欧米の規格に合った試験も必要になってきます。

東南アジアの中心拠点

  ――中国での事業展開は。

 上海、青島、大連、寧波、無錫に拠点があり、香港にもあります。一般財団法人となることで、こうした海外拠点をグループ化することができるようになりました。これまでは出資できない中での展開ですが、今後はパートナーと合作、合弁の形にしていくことができる。中国内販向けも、上海、寧波の試験室だけでなく広げていきます。

  ――チャイナ・プラスワンは。

 現在すでに提携先は韓国、台湾、インドネシア、タイ、ベトナムとあります。これらに加えてカケン自身のアセアンの新しい拠点探しの調査はずっと行ってきました。早期に進出先を決めて開設準備にかかりたいですね。人件費も重要ですが、東南アジアの中心拠点としてどこが最適なのかを判断基準にしています。

  ――自由度が増すことで、扱うアイテムも増えますか。

 取り扱う商品は技術力の範囲で拡大していきます。

  ――東日本大震災の影響は。

 直接的な人的被害はありませんでした。また、施設についても大きなダメージはなかった。問題は計画停電です。川口にある東京事業所は夕方3時間停電することもありました。分析機器というのは、その機器の立ち上げに時間を要し、終わってもクールダウンの時間が必要です。そうした機器に停電は困ります。このため、特殊な分析機器を使用するものについては、停電の影響がない大阪事業所に試験依頼しています。

  ――衣料消費への影響も出ています。

 こうした不安定な状況が長期化すると、景気を冷やす。繊維関連のダメージも大きくなります。当面はコスト削減で対応します。そのため納期管理やレポートを含めて、IT化の拡充などによりコスト削減とCSの向上とを両立させていきます。厳しい事業環境での新財団移行ですが、今後のより厳しい競争に立ち向かうためには乗り越えるべき試練だと受け止めています。