高まる中国市場への期待

2011年04月21日 (木曜日)

 【上海支局】20日から上海世貿商城(上海マート)で始まった日中韓テキスタイル展の日本コーナー「Jテキスタイル」には現地法人を含め30社が出展している。中国内販ですでに実績のある企業から新たに市場開拓を目指す企業まで現状はまちまちだが、中国アパレル市場への期待は同じだ。

Jテキスタイル・会場から~上海紡織服装展2011〈春季〉

倉紡貿易〈上海〉/国内自家並みに中国提携工場活用

 世界の繊維工場・中国を100%生かせるのがクラボウの強みだ。紡績で初めてとなる取締役、それも30余年間同社の紡織加工技術をけん引してきた藪雅次取締役が上海に駐在し陣頭指揮することで、中国内の30数社の提携工場が国内の自社工場並みに活用できている。こういった同社の技術・開発ノウハウをフルに発揮して「ベンベルグ」との複合紡績糸“Jファイバー”や、羽毛の本場中国で人工羽毛の「エアーフレイク」を披露して注目を集める。

瀧定名古屋/展示会の透き間埋める

 瀧定名古屋は、婦人服用素材を出展している。日本生産品と日本企画による中国生産品を、ストック販売。レーヨンなどの複合素材や意匠性の高い生地をアピールする。同社は、秋の「インターテキスタイル上海」と春の「同北京」に出展。従来開いてきた個展は取り止めており、両展示会の透き間を埋めるため、Jテキスタイルにも参加した。

一村産業/中国市場に再挑戦

 一村〈上海〉貿易は一村産業が北陸産地で生産し国内や欧州市場で有力アパレルに採用されている合繊長繊維テキスタイルを中心に出品した。ナイロン13デシテックス使いのストレッチ織物「フェアリス」などである。「数年前、売れるとコピーされ中断した経緯がある中国向け販売だが、再挑戦する」(矢木猛総経理)構えだ。

サカイオーベックス/実商売直結体制とる

 サカイオーベックスは、中国との実商売に直結する体制をとって参加した。従来はランダムに商品を出展し、引き合いが来ても生機背景や加工納期の問題で対応できないケースも見られた。尾崎郁夫アパレル営業部長によれば今回は、即応できる分野の素材に限って出展。価格も明示した。同社内では現在、中国現地法人設立も検討している。

カイハラ/あくなき新商品開発で中国市場深耕

 ユニクロやエドウィンなど日系企業と連動する形で、カイハラの中国展開が一段と本格化している。その高い品質などは世界トップクラスのデニムサプライヤーとして中国でもつとに有名だが、中国市場を更に深耕するための次の一手は、やはり「紡織加工一貫の強みとあくなき新商品開発だ」と灰原誠氏は強調する。そこに、30余年にわたりカイハラデニムだけを取り扱う在香港の販売会社「TEXTILE RESOURCES」の存在が生きる。今秋冬から国内と海外で同時展開予定の、身体にぴたりとフィットする二重織りデニム「モーション フィット」も今回展に持ち込んでいる。

凱碧世聯〈上海〉化学繊維/新発足の披露兼ねる

 凱碧世聯〈上海〉化学繊維はKBセーレンの現地法人で15日に発足したばかりだ。披露も兼ねて2小間で出展した。セーレンの無縫製ニット「プリモーディアル」、KBセーレンの高密度織物「軽密」などを展示。同社が輸入販売する。福永香織総経理によれば、中国顧客の声を直接聞くためとスピードある対応のため、現地法人を設立。中国を市場と位置づけ、日本品を販売する。

熊澤商事/国内向け備蓄品を中国へ

 福井の産元商社、熊澤商事は東京支店で百貨店アパレルなどに向けトリアセテート複合テキスタイルのストックビジネスを展開している。「Jテキスタイル」には300品番のうち、90品番を持ち込んだ。FOBで10ドルを超える高額品がほとんどなだけに「地場の婦人服高級アパレルがターゲット」(片矢直樹合繊第3部長)だという。

新道良質〈上海〉貿易/「SIC」ブランドを訴求

 服飾資材大手SHINDOの中国法人、新道良質〈上海〉貿易はこれまで、展示会を活用して中国市場を開拓してきた。今回も「高級アパレルなど新規顧客獲得を狙う」(堀健一営業経理)。2月のモーダモン展(パリ)で欧州バイヤーがピックアップした来秋冬向け商品のベスト10をパネルで紹介するなど世界市場で活躍する「SIC」ブランドをアピールしている。

マツミ/ポリエス強撚薄地を出展

 福井の産元商社、マツミは上海の展示会に初出展した。「華東地方のマーケティングが目的」(坂井一嘉社長)だという。これまで台湾の貿易会社などを通じ華南や北京地区の婦人アパレルに輸出実績がある。商品はポリエステル100%や同複合の強撚薄地織物が中心で多彩な後加工に特徴がある。約130点を展示し、商談を行っている。

大津毛織/中国展へ単独初参加

 大津毛織は、中国での展示会へ単独初参加した。昨年のインターテキスタイル上海には、関連会社、上海龍和大津工貿のブースに出展。その反省から、今回はそれぞれ独立ブースでの参加となった。大津毛織は、超撥水の機能性を付与した高級生地を訴求する。「この超撥水機能は、繊維との化学的結合によるものでウール、綿、シルクなど天然繊維一般に適用でき、耐久性と防汚性も高い」(宮本隆テキスタイル部長)

上海龍和大津工貿/中空紡毛糸使い中心に

 大津毛織の関連会社、上海龍和大津工貿は、大津毛織と隣り合って出展している。同社は、大津毛織の中国工場、上海金山大津毛紡織が生産する中空紡毛糸「OKエアーヤーン」を主に使った中国製の織・編み物を主体に、一部縫製品も加えて展示。大津毛織の日本製高級品とはコンセプトを明確に区別している。中国内販への傾斜を強める。

無錫豊谷科技/トリアセをアピール

 無錫豊谷科技は三菱レイヨン、伊藤忠繊維貿易〈中国〉(ITS)と共同で三菱レイヨンのトリアセテート「ソアロン」使いのテキスタイルを展示している。ITSの大橋和史営業第1部長代行は「中国でトリアセテートのシェアはまだ高くない。3社で力を合わせ、素材の優位性をアピールし認知度を引き上げたい」と話していた。