環境新書特集

2011年06月09日 (木曜日)

モリリン/エコと高機能を融合/夏の快適素材を提案

 モリリンは「モダール」や「テンセル」を中心に、エコロジーとテクノロジーの融合から生まれた、地球と人、そして肌にやさしい環境適応素材を提案する。

 テンセルを生産するオーストリアのレンチング社は、本国ハイリゲンクロイツの原綿工場が地球環境保護基準を十分に満たしていることから1998年にオーストリア環境省より環境保護金賞を授与されるなど、環境問題に先進的に対応してきた企業として欧州を中心に世界的に高い評価を得ている。

 原綿の生産で使用するエネルギーも47・4%を占める水力や生産工程で出る沈殿物を燃やす火力を中心に、化石燃料の比率は13・3%に抑え、モノ作りの段階から地球環境に配慮した取り組みを続けている。

 12春夏向けの素材提案では、クーリングやUVカット、クイックドライ(吸汗・速乾)、スピード消臭・抗菌などの機能を搭載した夏の快適素材を提案する。

 「テンセルクール」はテンセル特有の柔らかさとひんやりした触感に、東レの異形断面ポリエステル長繊維「セオα」のサラリとした風合いが加えることで、夏物のニット製品に求められる“さらさら爽やかな肌触り”を実現する。

 「ミリオンアイスE」は「モダールサン」とミネラル成分練りこみ十字断面ポリエステルとの特殊紡績により生まれたファイバーで、紫外線遮蔽性に優れるUVケアや太陽熱線遮蔽性に優れるクーリング、吸汗速乾性に優れる。

 ほかにも抗ピル性とドライタッチが特徴の「セルドライ」やテンセルの原綿を改質して高い消臭機能や抗菌機能を付加した「デオセル」など、環境に対応した快適素材の提案を拡大する。

豊島/市場に広がる「オーガビッツ」/社会貢献活動も強める

 豊島が販売するオーガニックコットン「オーガビッツ」は昨年7月、最終製品までの「オーガニックエクスチェンジ」の認証を受け、トレーサビリティー(生産履歴の追跡)を強化するとともに素材供給だけでなく、素材から製品までつなげた社内連携による企画提案も増えている。

 その成果もあって昨年に比べ採用ブランドは約2割増に拡大。今年4月にはブランドロゴを刷新し、“チーム・オーガビッツ”として、アパレルとの取り組みを深める一方で、消費者への認知度を高めながら、市場開拓を加速する。

 今年も集英社が発行するファッション雑誌「LEE」の4~6、8月号を通じて「ユナイテッドアローズ グリーンレーベル リラクシング」や「チャオパニック」などのブランドと、タイアップ企画による記事を掲載し、消費者へのアピールを継続する。これまで豊島が単独でオーガビッツの認知度向上に努めることが多かったが、最近では採用ブランドと一緒にオーガビッツを広げようとする活動も増えきた。

 例えば、「アズノゥアズ」がLEEのタイアップ企画と連動する形で、今年4月6日から12日まで西武池袋店(東京都豊島区)でオーガビッツ素材を使った衣料を中心に期間限定ショップを開いた。さらに今後は下げ札やインターネットサイトもリニューアルし、アパレルが「活用してもらいやすい形」へと転換し、共同で消費者への認知度向上につなげる。

 また、オーガニックコットンを身近に感じることができる絵本「コットちゃん」をポプラ社より出版。同社の本店、本社がある一宮市、名古屋市の幼稚園や保育園に絵本を寄付するなど社会貢献への活動も進める。

豊田通商/バイオ繊維を積極的に推進/台湾で合弁会社も設立

 豊田通商の産業資材部は環境意識の高まりに対応し、植物由来のバイオ繊維の活用を積極的に進めている。すでにポリ乳酸とポリプロピレン(PP)を素材とする自動車のオプションマットのパイル糸を供給する。バイオ比率は糸ベースで40%。具体的な実績としてトヨタのプリウスやプリウスα、レクサスのHS250h、CT200hが採用する。

 同社ではこれらの素材をバイオポリエチレン(PE)、バイオPETに置き換える検討を進めている。2008年に販売パートナーとして業務提携を結んだ南米最大の化学メーカー・ブラスケン(ブラジル)のバイオPEを活用する。

 ブラスケンのバイオPEは、ブラジルで製造後に消費地のアジアに運んだ場合でも従来の石油由来のPEに比べ、温室効果ガス排出量が70%強少ない。また、サトウキビから砂糖を取った後の残糖液(廃糖蜜)を使って作られたエタノールを粗原料とするため、砂糖生産を犠牲にしない。ブラジルには農地に転換可能な広大な牧草地があり、コーンや大豆など他作物との競合もほとんどないなど多くの利点を持つ。

 一方、バイオPETでは、バイオエタノールの調達から中間加工、最終バイオPETへの加工・販売まで一貫したグローバルサプライチェーンを世界で初めて構築する。昨年10月、台湾の大手化学品メーカー・台湾人造繊維と合弁で、バイオモノエチレングリコール(MEG)の製造・販売会社、台湾緑醇を設立し、バイオMEGの原料であるバイオエタノールはブラジルの国営石油会社ペトロブラスの子会社と長期取引契約を結んだ。今後は内装材など自動車関連分野やユニフォームなど衣料分野への販売を広げていく。

JUKI/節電に技術力で効果発揮/自社でも省エネ削減徹底

 JUKIは2009年3月から独自に「JUKIエコプロダクツ認定制度」を採用している。開発段階で環境に関する38項目の評価を行い、特に高いレベルで環境配慮を実現した製品だ。企業、家庭に節電目標が課される今、改めてその技術と効果が注目を集める。

 工業用ミシン「MF―3620(ダイレクトドライブ・ハンドプーリー仕様)」は2010年9月に認定。従来機種比で52%の省電力化を達成している。

 電気・電子機器に含まれる特定有害物質の制限に関する国際規格「RoHS指令」よりも更に高度な「JUKIグループグリーン調達ガイドライン」をクリア。また、 従来機種と比較して騒音を1・8dB、振動を1・3dB低減、作業環境も改善する。

 家庭用ミシン「TLシリーズ」(TL―30、同SP、同DX、SL―300EX)は今年1月に認定を受けた。ランプのハロゲン電球からLEDに変更、約2%の消費電力を削減。さらに待機時のエネルギー消費量を既存機種対比で約39%も削減できる。 「後ろ踏み糸切りコントローラ」の採用で、製品重量を約6%低減した。

 JUKIグループでは調達、製造、輸送、使用、リサイクル、廃棄まで製品のライフサイクルの環境負荷低減に取り組んでいる。消費電力の削減は最重要項目として、外部から電力以外のエネルギー(エアーなど)を使用する場合、エアーも電気エネルギーに換算、トータルで消費電力量を引き下げる設計、評価を行う。

 夏季のピーク電力量15%削減に向け、機器の使用時間管理をはじめとしたデマンド管理を行う。工場においては自家発電設備の使用やシフト制の勤務なども検討し、ピーク電力削減と、お客様への製品の提供を両立させていく。

ゴールドウイン/工場、商品の両面から環境負荷の低減を/「グリーン イズ グッド」を推進

 ゴールドウインは、スポーツウエアをはじめとする各種機能ウエアの企画・製造・販売を通じて環境負荷の低減を目指すとともに、健康総合企業として地球環境に優しい商品の開発・提供を推進している。

 同社の富山工場は、スポーツアパレル業界として初めてISO9001(1998年)、ISO14001(99年)の認証を取得。06年には、環境保全と環境配慮型商品の開発に着手したことに加え、資源の無駄使いを減らしながら事業効率を上げるために、同社の全事業所と染色センターでISO14001の認証を取得した。

 また、グループ会社のアートウインは、02年にエコテックス100規格の認証を取得。エコテックス規格100は、有害物質の影響を無くすことを目的とし、繊維の全加工段階における原料、半製品、最終製品に適用される世界統一の試験・認証システムで、この認証を取得することで高い安全性と透明性、素材品質の信頼性を確保した。同社は、06年にはISO14001の認証も取得している。

 製品面でも、他社に先駆けた環境への取り組みを積極的に行っている。環境を考える製品開発コンセプト「グリーン イズ グッド」は、「くり返し使う」「選んで使う」「大切に使う」の3つを軸としたプログラムで、スポーツアパレルメーカーの立場から環境に配慮した製品の開発、環境への付加を軽減する取り組みを推進。使用後の製品を回収して、新たな製品として再生する循環型のリサイクルシステムなどを展開している。

カケンテストセンター/様々な機能加工支える/海外試験情報も収集

 カケンテストセンターは、第三者検査機関として環境関連を含む様々な機能加工を支える。4月1日付で「財団法人 日本化学繊維検査協会」から「一般財団法人 カケンテストセンター」に法人名称を変更。一般財団法人へ移行したことで、よりダイナミックな事業展開ができる体制になっている。

 震災後、節電ビズ関連の商品が好調だ。カケンテストセンターでも、「クールビズ、ウオームビズ関連でホームファッションやインテリア関連の試験が持ち込まれている」ようだ。

 例えば、カーテンでも夏物は遮光や遮熱素材、冬物では冷気が入らない商品など。寝具では暖かいが汗を吸う布団といったものも。アパレル関連では以前から吸水速乾素材の試験依頼があったが、最近では消臭試験が増えている。

 「自社で試験設備を持つ企業もあるが、第三者機関の試験も行うことで裏づけをとっている。市場ニーズに応じて、新しい機能素材が誕生するが、そうしたときでも、新たな評価方法で試験を行い、評価方法も進化させていくことが役割のひとつ」という。

 日本では東京事業所の下に、川口、堀留、原宿、目黒ラボなどがある。気軽に問い合わせや試験受付に応じるためだ。また、大阪事業所には生物テストラボ、分析テストラボがあり、マスクのバクテリアバリア性、人口血液やウイルスに対するバリア性測定も行う。

 海外でも中国、ベトナム、インドネシアなどに拠点を設ける。「試験だけでなく、海外の試験方法や法規制などを調査。グローバル化に伴い、そうした問い合わせも増えている」と、情報収集面も怠りない。