東洋紡「ダイニーマ」/接触冷感商材向け急拡大/11春夏投入量15トンに

2011年07月08日 (金曜日)

 産業用繊維と目されていた東洋紡の超高分子ポリエチレン繊維「ダイニーマ」が、接触冷感をうたう小売商材の素材として注目されている。同商材向けダイニーマ投入規模は、10春夏向けが2~3トン程度だったが、11春夏向けは15トンに急拡大した。12春夏に向けては「30%以上」(佐野茂樹執行役員)の拡大を狙う。

 汎用ポリエチレンの分子量が20万以下なのに対し、ダイニーマのそれは約400万。ピアノ線の約8倍の強さを持つため、船舶係留ロープや作業用安全手袋、釣り糸、防護ネットなど、産業用途で使われている。同繊維には、触ると冷たく感じるという特徴もある。同社の測定によると、接触冷感度を示すq―max値は、ポリエステルやナイロン、綿の約2倍だった。この特徴を生かせる分野として寝具に着目し、2008年にダイニーマ使いの寝具用接触冷感生地の開発に着手した。

 難関の一つは、ダイニーマのコストの高さ。汎用ポリエチレンと比べると約10倍高い。また、強力が高いため、織り・編み、裁断が難しいという問題もあった。田村駒と組んでこれらの難題に取り組み、ダイニーマと特殊繊維を組み合わせた生地「アイスマックス」を完成させる。

 東洋紡が公表している資料によると、汎用ポリエチレン生地のq―max値が0・14だったのに対しアイスマックスのそれは0・26だった。また、熱伝導率は汎用ポリエチレンが麻並みだったのに対し、ダイニーマのそれは圧倒的に高かった。

 11春夏に向けて田村駒は、アイスマックス使いの敷パッドに加え、Tシャツ、ホームウエア、タオル、ペット用マットなど多彩な商品を投入した。折からの節電意識の高まりもあってこれらがヒットし、ダイニーマの投入量は15トンに達した。これは東洋紡にとって、予想を大幅に上回る結果だった。

 佐野執行役員は「30万トン級タンカーの係留ロープでも、ダイニーマの使用量は3~4トンなのに」と、驚きを隠さない。今後、小売商材向けのさらなる投入増を狙う方針だ。