安心・安全を支える検査機関/試験や基準作りにも対応

2011年08月31日 (水曜日)

 「安心・安全」は東日本大震災以前から大きなテーマであるが、震災後は一段と関心が高まっている。原発事故・放射能問題が東日本の日常生活にかかわっていることで、消費者意識も大きく変わってきた。安心・安全という付加価値が、商品コストに反映されていく時代が近づいたのかもしれない。そうした安心・安全の商品作りを陰で支えているのが、検査機関である。

カケンテストセンター/防護服の国際規格も/幅広い安心・安全試験

 カケンテストセンター(カケン)東京事業所の三橋卓也雑貨テストラボ長兼技術相談室長は、ISO/TC94(個人防護用具)/SC13(防護衣料)やSC14(消防用防護服)の規格改正作業に取り組んでいる。

 5月にスイスで行われたISO/TC94/SC14ジュネーブ会議では、「日本の規格と欧米型規格は相容れない状態だった」と振り返る。消防や救急活動の環境が異なり、欧米中心の規格作りにアジア型性能規格を入れ込むのはそう簡単ではない。

 「消防用手袋でも欧米人は体格が大きく、生地も分厚くなる。そのままではホースがつかめなくなる」といった問題が出てくる。安全靴でも、「サイズだけでなく、欧州は革の文化で、日本はゴムの文化」といった違いから意見が異なってくることもある。

 「規格には妥協や共存はなく、寡占主義であるという前提から交渉しないといけない。それでも国内対策委員会諸氏の支援もあり、従来にないくらい日本の声に耳を傾けた」ようだ。

 安全・安心といっても、その基準作りにはグローバル化の波が押し寄せる。規格作りがグローバルスタンダードにつながるなら、アジアの代表として日本はその先頭に立ち、アジア市場に合った国際規格改正作業を進めることが責務になっている。こうした裏方の地道な活動があってこそ、安心・安全の製品が消費市場に供給されていく。

 カケンは様々な安心・安全のための試験を行う。防護服関連だけでなく、大阪事業所の生物試験センター(JNLA認定試験事業者)では抗菌試験、防カビ・防ダニ試験のほか、バクテリア・バリア性やウイルス・バリア性といったバリア性試験、花粉粒子の捕集ろ過効率試験、BFE(細菌ろ過効率)試験なども行っている。

 三橋氏は「様々な社会的提案が規格戦略の一翼を担うことにつながれば」と、防護関連用具の規格改正作業などに注力する。

ニッセンケン/エコテックス規格100/国内唯一の認証機関

 日本染色検査協会(ニッセンケン)は、2000年からエコテックス共同体に加盟し、繊維製品の有害物質を規制するエコテックス国際規格の日本国内における唯一の認証機関として活動する。現在、日本での認証は350社に及ぶ。

 エコテックス規格100は、欧州を中心に世界15カ国の加盟試験機関で構成するエコテックス国際共同体(本部:スイス)が定めた繊維製品に対する国際的な安全基準だ。1992年にオーストリア、ドイツ、スイスの3カ国で始まり、1国1機関が原則で、日本ではニッセンケンが加盟。世界的に安心・安全の信頼性のある認証ラベルとして認知され、普及している。

 全エコテックス認証書の約半分を欧州市場の国々で発行。認証取得企業の半分が中国を筆頭にアジア企業であり、欧州輸出の上での重要性を示す。

 エコテックス規格は、繊維製品の安全性に関する消費者保護を目的にしており、人体に有害な物質の規制値を定める。企業は試験用サンプルを提出し、ニッセンケンが分析する。規制値への適合を確認、認証書を交付し、認証マークの使用許可を与える仕組みだ。

 ニッセンケンは中国・南通人民路事業所においても特定芳香族アミン類の分析試験を4月から開始した。

 同事業所に分析機器と人を配置し、特定芳香族アミン類の分析試験を行い、証明書を発行する。日本向けだけでなく、中国内販向けの分析試験も可能である。

 日本の衣料品の安全規制である家庭用品規正法に対し、中国(GB18401)や韓国(KCマーク)はエコテックスをベースに規正法を作っており、日本よりも規制項目は多い。これは輸出市場において、安全・安心は非関税障壁となっており、その対応を進めたものだ。

ボーケン品質評価機構/繊維から生活用品まで対応/上海機能性分析センターが稼働

 ボーケン品質評価機構は、繊維製品の品質試験、機能性製品の性能試験などに加え、生活用品の品質試験にも積極的に取り組んでおり、その対象はライフスタイル分野全般に広がってきた。海外拠点の整備も進めており、4月には中国・上海で三つめの拠点となる上海機能性分析センターを開設。順調に試験項目を増やしている。

 ボーケンは、様々な品質試験、機能試験を実施しているが、安心・安全の分野では抗菌性試験で豊富な実績を有する。繊維評価技術協議会の抗菌加工繊維製品の製品認証制度の指定検査機関、日本衛生材料工業連合会の抗菌自主基準試験も行っているほか、光触媒工業会の推奨試験機関になるなど、その評価は高い。そのほかにも、燃焼性試験、帯電性試験、特定芳香族アミン検出試験など安心や安全に係る各種試験に対応している。

 中村篤信専務理事は「海外拠点の整備も大きなテーマ」と強調。上海浦東試験センター、上海浦西試験センターに続く上海地区で三つめの拠点、上海機能性分析センターを開設した。これにより消臭、吸汗速乾、保温性、接触冷感、UVカット、太陽光蓄熱など機能性試験が上海で可能となった。日本企業が中国で生産する繊維製品でも機能素材などが増加する中で、その機能試験ニーズに応える体制が整った。「予想以上に試験依頼が来ている」(中村専務理事)と順調なスタートを切った。

 繊維製品だけでなく、最近ではキャリーバッグのキャスター品質試験や家具・椅子の強度試験など試験対象がライフスタイル全般に広がる。また、試験データの電子化にも積極的に取り組んでおり、試験報告書の電子発行やクライアントがネットワークからリンクしてデータベースを活用することも可能である。試験内容以外の各種相談にも積極的に応じており、こうしたコンサルティング機能を発揮しながら「クライアントから最初に声を掛けてもらえる試験機関を目指している」(中村専務理事)。