「ITMA2011」会場から/底力見せる日本メーカー/革新技術と実用性を両立

2011年09月27日 (火曜日)

 【バルセロナ=宇治光洋】22日に開幕した国際繊維機械見本市「ITMA2011」。出展した日本メーカーは、革新技術と実用性を両立した提案で来場者の注目を集めている。

 紡績機械分野では、村田機械がもっとも注目を集めた。新型渦流精紡機「ボルテックスⅢ」、新型自動ワインダー「QPRO」が衝撃的デビュー。とくにボルテックスⅢが機構・デザインともに大幅に改良されており、同じくエアジェット精紡機「J20」を打ち出したリーター、オープンエンド精紡機をラインアップするサビオ、エリコン・シュラホーストなどと比較して一歩抜きん出た印象を深めた。自動ワインダーもサビオ、エリコン・シュラホーストが村田機械の「No.21」に対抗した機種を打ち出しているのに対し、QPROでさらに先を行く形だ。

 今回のITMAでは欧州メーカーからリング精紡機で新型が出なかったのに対し豊田自動織機は新型リング精紡機「RX300」を披露する。モータ関連の設計一新で7%の省エネに成功していることに加え、ドラフトをサーボモータで制御することでショートスラブ糸の紡績などで威力を発揮。ユーザーの注目度は高い。

 織機では津田駒工業がコンセプトエアジェット(AJ)織機の出展で野心的な試みを見せた。ベルト駆動部のギア駆動化、挿入後の緯糸をエア吸引で保持するによるキャッチコードレス化、サブノズルの1ノズ ル1バル ブ化による空気使用量低減、ガード部分やガイドロールに炭素繊維複合材料を使うことによる軽量化など織機の未来形を示唆する。タオル用AJ織機「ZAX9100T」では、タオル織機として初めてダブルテンプルを採用。極太モール糸の緯糸挿入などに対応する。電子ジャカード搭載で毎分800回転の製織実演を行った。

 豊田自動織機もAJ織機「JAT710」がバージョンアップ。緯糸挿入機構を一新することで吸気使用量を20%削減した。独自開発の独立駆動方式開口機構「Eシェッド」によって8フィー ダーで毎分1000回転を容易にこなす。ダブル幅機では空気圧を糸ごとに制御することでモール糸入りボイルカーテンを製織実演。レピア織機に対抗する汎用性を見せ付けた。

 コンピュータ横編み機では島精機製作所が圧倒的存在感だ。成型横編み機5台、ホールガーメント(WG)機6台を実機展示した。成型横編み機「ファースト154S21」はこれまでの18ゲー ジ(G)を21Gにファインゲージ化。ループ長2・5ミリで250双糸など極細番手の編組が可能だ。「SCG122SN」では、成型横編み機で初めてスライドニードルを採用。編組効率が格段に向上している。WG機では「マッハ2X」シリーズを披露。ワンピース1着を28分で編組実演した。「マッハ2SIG123―SC」は18Gまでファインゲージ化されている。デザインシミュレーションシステム「SDS―ONE APEX3」は毛羽の1本1本まで再現する画像表現で来場者の多くが驚きを隠せない。

 丸編み機では、福原産業貿易が出展。「OD5―V―SEC7CS」は独自開発の電子選針機構によって実現した84×2フィー ダーの50G機。弾性糸まで対応する給糸機構を持つ。Wニット20G機「V―LEC6DSIB」はシリンダー、ダイヤル両方を電子選針することで、スレーキ糸編み込みで鮮明な柄表現が可能。ニーズが高まるベッド・マットレスカバー分野を攻める。

 日本メーカーの提案に共通するのは、革新機構による汎用性、省エネなどに対応しながらも、提案機そのままに実用稼働が可能な点だ。日本メーカーが保有する技術力の懐の深さを見せ付ける提案となっている。