「ITMA2011」会場から/革新機構が相次いで登場/隠れた狙い見える欧州メーカー

2011年09月28日 (水曜日)

 【バルセロナ=宇治光洋】国際繊維機械見本市「ITMA2011」では、欧州メーカーが地の利を生かして大々的な提案を行っている。革新的な新機構も相次いで発表された。そこには、ひそかな狙いも見え隠れする。

 今回のITMAでも野心的な新テクノロジーを打ち出したのがドルニエ。“ウィーブ・バイ・ワイヤ”のコンセプトのもと、電子ジャカードと織機を別のモーターで駆動させながら、電子信号によって同調性を確保する「シンクロ・ドライブ」を打ち出す。動力部の制限から開放されたことでジャカード、織機ともに従来は不可能だった挙動が可能になる。また、織機停止時にジャカードは予備運転できるため、織機起動時にジャカードにかかる負荷を低減することで耐久性も大幅に向上している。さらに驚くべき機構が「ORW(オープンリードウィーブ)」だ。筬の上部が開放されており、そこから特殊なニードルで糸を織物に対して垂直方向に織り込む機構だ。デモンストレーションでは刺繍糸を織り込むことで製織と同時に刺繍柄を表現した。ドルニエによると、世界初の技術だという。

 イテマウィービングの新型エアジェット(AJ)織機「スルテックスA9500」は、筬打ち機構がカム方式とクランク方式両方に交換可能。使用する糸の種類に応じて開口度合いを変えることができる、通常、筬打ち機構にカムかクランクを採用するかは設計段階で決定されているケースが多い。A9500のように交換可能な形式は、あまり例がない。

 加えて、資材用途への傾斜は欧州メーカーの顕著な特徴だ。例えばイテマウィービングはデニム製織で実績のあるプロジェクタイル織機「スルテックスP7300HP―V8」を実機展示したが、実演はポリプロピレンフラットヤーン織物。プロジェクタイル織機の圧倒的緯入れ安定性を生かし、土木資材製織などの分野を強化する姿勢が明確だ。

 ピカノールもレピア織機「オプティマックス」をガイド付き積極レピア化。しかも筬幅540センチでポリエステルモノフィラメントの製織実演を行ったことでも分かるように、明らかに資材用途がターゲットだ。

 今回のITMAでは、表向きは衣料用織物の製織実演を行いながらも、じつはテクテキスタイルを視野に入れた機構が出展されている。ドルニエのORWはその典型。あれだけ複雑な機構を駆使して刺繍柄表現が目的とは考えられない。関係者によると、ORWを駆使することで3軸、4軸の織物が生産可能だという。明らかに本来の目的は複合材料基材などテクテキスタイルと考えられる。

 同様に注目すべきはマゲバの小幅シャトル織機だ。最大4個のシャトルを動かすことでシームレスチューブ織物など三次元織物を製織できる。さらにストーブリの完全独立駆動方式電子ジャカード「ユニバル100」を搭載することで立体構造織物なども生産可能。すでにコンポジット基材や人工血管などに使用されているという。

 バン・デ・ヴィーレも実演では従来の絨毯(じゅうたん)・カーペットを製織したが、ブースの片隅には同じ機械で製織した立体構造織物によるコンポジットがひっそりと展示されていた。

 ある消息筋は「今回のITMAには表のITMAと裏ITMAがある。表は従来からの衣料用繊維。裏は資材。表向きは衣料用の繊維機械のように見せて、じつは明確に資材用途を狙っている機種がたくさん出展されている」と指摘する。それは、先進国の繊維産業がどういった方向で生きていくべきかという問いに対する欧州メーカーからのひとつの答えだ。