アジア特集・インドネシア編/日系企業の今と戦略/人口ピラミッドが有利に
2011年09月28日 (水曜日)
インドネシアは、若い国である。人口ピラミッド分析をすると、労働力に余裕があり、経済発展での優位性が見込まれる。日系繊維企業は、縫製拠点として注目を始めており、商社はその対応を急ぐ。すでに進出済みのテキスタイルメーカーは、縫製需要の増大を見込んだ対応策を進める。
クマテックス/アルゴとの連携を強化
クラボウグループのインドネシア紡織会社、クマテックスはアルゴパンテス社との連携を強化し、急成長している。自社工場への過剰投資を避け、提携先のテキスタイル工場、染色工場を利用する。
2011年12月期は売上高7300万ドル(前期比35%増)、営業利益150万ドル(同2・7倍)を見込む。
浅原茂社長は「売上高1億ドルは射程内に入って来た。08年時点では、10年後の数値目標だった1億ドルだが、前倒しで実現できそうだ」と語る。
これまでのユニフォーム生地だけでなく、高価なカジュアルテキスタイルを増やした。設備は、紡績機5万2000錘、撚糸機36台、丸編機9台、エアジェット織機62台などを保有する。
メルテックス/品質の圧倒的優位性
シキボウグループのインドネシア紡織会社、メルテックスは、シキボウ本社向け対応力を向上させることを中心とするが、そのことによる差別化推進と品質の圧倒的優位性を確保し、それを武器として、急速に発展するインドネシア国内市場、アジア市場に向けて商品開発を続け、販路開拓に突き進む。
加藤守社長は、「中国が縫製の中心であり続けるだろうが、生産リスクの分散とEPA(経済連携協定)の活用を目的として東南アジアでの取り組みが増える」と見通す。
メルテックスは、自社の素材の強みを生かせる分野で、最終製品まで見据えた生産販売の仕組み作りを進める。
ユニテックス/「パルパー」で差別化
ユニチカグループのインドネシア紡績・糸染め・織布工場、ユニテックスは、商品販売単価の上昇、インドネシア景気の好調を背景に選択と集中を実行する。先染め定番シャツ地が主力だが、差別化テキスタイルを増やしている。これまでなかった糸・生機販売も開始した。2011年12月期売上高は1960億ルピアを予定する。
石田泰造社長は、(1)客先の選択と集中(2)商品単価アップ(3)糸、生機販売の開始(4)生産管理の強化という4つの方針を実行。
旧ユニチカテキスタイル常磐工場から多層構造紡績糸「パルパー」生産設備を移設している。これにより差別化テキスタイルが生み出される。
紡績3万2320錘、津田駒などエアジェット織機208台、レピア16台を保有する。
東レグループ/新商品開発を積極化
インドネシア東レグループは、積極的な事業運営と新商品開発で増収増益を続ける。綿花高騰を背景にした合繊原料値上げ、インドネシア経済の好調が後押しする。
インドネシア東レグループ統括会社の大河原秀康社長は、海外経験も豊富で技術畑の出身を生かし、既成概念にとらわれることなく新しい顧客開拓に向けた新商品開発をグループ一丸となって進めている。
同国で生き残った日系合繊メーカーとして、ユーザーの期待度は高まっている。かつてはほかにアクリルやポリエステルの日系合繊メーカーがあったがすでに撤退し、東レの存在感が増した。
ダイワボウグループ/3本柱で、現地販売
ダイワボウグループは、衣料繊維、産業繊維、機械・ITの3本柱を打ち立て、インドネシアでも新しい動きを始めている。ダイワボウホールディングス・インドネシア事務所の鳥居進一総代表は、「安い労働賃金を目当てに安く作って日本へ持って行くだけというような商売は過去の物だ。これからは、当地を軸にして売っていくべきだ」と話す。
縫製会社ダヤニガーメント・インドネシア(作本浩二社長)は生産品種の高度化で収益力を強化中。3月には中部ジャワに新しい縫製会社、ダイワボウガーメント・インドネシアができたことから、これが実際に稼働し始めたら、定番の布帛トランクスを移管する。そしてダヤニは、縫製仕様が複雑な商品に特化していく。
紡織工場のプリマテキスコ(大塚智社長)は、欧州市場に向けた細番手広幅織物を作るため広幅織機を導入した。広幅晒し機もあり、付加価値化による新規顧客開拓を進める。寝装でも新規客を広げる。
空調関係など付帯設備で老朽化したものを省エネタイプに更新するなど地道な努力も続けエネルギーコストを下げている。
鳥居総代表は「日本市場が縮小しているので、まずインドネシアで売り、そしてアセアンで売る仕組みを作る」と全体像を示したうえで、個別では「オーエム製作所の自動包装機は、経済レベルが向上し食品、菓子などで新規需要が生まれるインドネシアで売れる見込みがある」と非繊維・機械の販売にも同事務所がかかわっていけることを指摘した。