バルセロナからの手紙『ITMA2011』報告(1)繊維機械の“未来形”/注目ポイントは「省エネ」「スマート」「産業資材」

2011年10月03日 (月曜日)

 スペイン・カタルーニャ地方の都、バルセロナ。カテドラル(大聖堂)に見られるゴシックと、サグラダ・ファミリアに代表されるモデルニスモ(近代主義)が同居するこの街のたたずまいは、訪れる人に奇妙な感覚を与える。それは、過去は確かな実態を持ち、確実に現在と未来につながっているという実感だ。4年に一度開催されることから“繊維機械のオリンピック”とも称される国際繊維機械見本市「ITMA2011」がそのバルセロナで開催された。そこに見えたのは、確かな手応えを持つ繊維機械の“未来形”だった。

(バルセロナで宇治光洋)

 ITMA2011には、世界45カ国から1350の繊維機械・関連機器メーカー・団体が参加した。日本からもAIKIリオテック、阿波スピンドル、日阪製作所、イズミインターナショナル、日本繊維機械協会、神津製作所、コニカミノルタIJ、松谷鐵工、村田機械、日本マイヤー、ニッタ、サンアイインダストリーズ、島精機製作所、シナノケンシ、信州大学繊維学部、タジマ工業、TMTマシナリー、東伸工業、豊田自動織機、津田駒工業、ワックデータサービスが出展し、最新のソリューションを披露した。

 今回展の特徴を端的に現す言葉が3つある。「省エネ」「スマート」「産業資材」だ。

 現在、新興国では繊維以外の産業も急速な発展を遂げており、恒常的なエネルギー不足が深刻化している。今回のITMA2011では、インド、トルコ、南米からの来場者が目立ったが、こういった国々では、より事態は深刻。このため繊維機械に対してもこれまで以上に省エネ性能の高度化を求める声が圧倒的だった。しかも、現在は原料が極めて高騰している。わずかな原料ロスが企業にとって大きな損失となる。これまで以上に欠点発生などによる原料ロスを低減することが求められている。

 もう一つのキーワードが「スマート」。4年前のITMA2007ミュンヘンで示唆された独立駆動方式の機構が一段と進歩し、これに電子制御システムが加わることで、繊維機械も従来以上にメカニカルな機構による挙動の限界を突破しつつある。それは繊維機械自体が“スマート”な頭脳を持つようなものだ。

 そして「産業資材」。スマートな頭脳を持つ繊維機械で、いったい何を生産するのかという問題が浮上する。ITMAは、先進国で開催される数少ない国際繊維機械見本市である。そこではつねに先進国の繊維産業が生き残る道を示唆する必要がある。欧州を中心とした繊維機械メーカーの答えは明確だ。産業資材用途をターゲットにした革新機構が多数登場した。しかも、その多くが、はっきりと明示されない形で提案されている。ITMAは、見る者にも高いレベルを要求する展示会だ。