バルセロナからの手紙『ITMA2011』報告(5)ワインダー/日欧競争、一段と激化

2011年10月12日 (水曜日)

 自動ワインダーの分野では、日本メーカーと欧州メーカーの競争が一段と激しくなっている。とくに村田機械は歴史的名機「No.21C」の後継機「QPRO」をデビューさせ、欧州勢との差を一段と広げようとする。合繊用ワインダーでは、神津製作所が新型機を披露し、SSMを追撃する構図だ。

 4年前のITMA2007では、ガイドバーで糸軌道を制御することでリボン巻きを防止するドラムレス方式巻き取り機構「FX」を搭載した自動ワインダー「オートコーナー5」を発表したエリコン・シュラホースト。今回展でも進化版である「オートコーナーX5」を打ち出した。FXも改良され、チーズ巻きだけでなく新たにコーン巻きにも対応する。巻き取り速度は毎分1400メートルだ。当然、精紡機直結の自動糸管運搬システムも搭載する。

 サビオも自動ワインダー「ポーラーE」を実機展示した。糸管供給はマガジンではなく、機台後部のボックスに一括投入したものが各錘に供給されるセミオートの糸管運搬機構が特徴。もちろん、精紡機に直結する自動糸管運搬システム「I―ダイレクト・リンク・システム」も用意する。これらは明らかに村田機械のNo.21Cと「プロセスコーナー」に対抗した機種だ。

 しかし、村田機械は競合他社を振り切るように新型自動ワインダー「QPRO」をデビューさせた。QPROは1錘当たり6個のステッピングモーターを搭載し、各機構を独立に駆動制御することで従来機では不可能だった挙動を実現する。ムダな挙動が排除されていることで生産性は従来機から5%向上し、糸1キロ当たりのエネルギー消費も10%低減した。最速毎分1700メートルの巻き取りが可能だ。コントロールシステムも新設計の「VOSⅢ」にバージョンアップした。糸のモニタリング機能を追加した。

 さらに参考出品ながら、ドラムレス方式の自動ワインダー「FPRO」も披露。ドラム交換せずに様々な巻き取り方法をコントローラーによる設定入力だけで変更可能。毎分1700~1800メートルのワインディングが可能で、パッケージ形状もチーズ、コーン両方に対応する。先行していたエリコン・シュラホーストに追い付いた形となり、村田機械の開発力の奥深さを感じさせた。

 一方、合繊用ワインダーでは、SSMが新型機「PS8―W」を披露した。独立駆動方式で巻き上げ速度は毎分1600メートル。2枚のローターで糸軌道をガイドして巻き上げる方式は、単純ながら信頼性が高そうだ。

 これに対して神津製作所は新型ワインダー「SSP―VX」を披露した。プラットホームから設計を一新し、タッチパネル方式コントローラーや、コンピュータ制御を採用。トラバース、スピンドルボビン、送り出しローラーがそれぞれ独立駆動方式となっており、コンピュータ制御で同調させる。毎分平均1000メートルのワインディングが可能だ。同社では、少なくとも機能面ではSSMなどの競合機とそん色ない機械に仕上がったと自信をのぞかせる。

 ワインダー分野では、日本と欧州メーカー間の競争が一段と激しくなっていることが印象深い。