東レ「ボディクール」/“ひつじ雲”でクール/新ナイロン原糸を開発

2011年10月19日 (水曜日)

 東レはこのほど、ひつじ雲型断面(扁平八葉断面)で優れた吸汗速乾性、接触冷感を実現した新ナイロンマイクロファイバー原糸「ボディクール」を開発した。「クールビズ、ウオームビズ対応の『グリーンイノベーション製品』と位置づける」(塩村和彦長繊維事業部長)と意気込む。12月からインナー、スポーツを中心とした国内外アパレルへの販売を開始し、2011年度は年間20トン、12年度には同100トンの販売を計画する。

 ボディクールは、東レの高強力ナイロン「スーパーミラコスモ」のポリマーをベースに、ポリマーと紡糸プロセスの改良で従来あまり例のなかった単糸繊度1・0デシテックス(T)前後でのシャープな扁平八葉断面を実現したマイクロファイバーナイロン長繊維。通常、単糸繊度1・0Tクラスでの特殊異型断面ナイロン糸の生産は、繊維の強度維持や糸長方向での安定した断面形成が難しく、紡糸が困難とされていた。これに対して東レでは、ポリマー設計の最適化と革新設備の開発・導入によって量産に成功した。

 ボディクールは、極細繊度の扁平八葉断面によって毛細管現象が発現しやすく、通常の丸断面ナイロン長繊維と比較して優れた吸汗速乾性と接触冷感を可能にする。東レの試験では、吸水性はレギュラー糸の2倍、速乾性も20%向上を確認している。接触冷感性も高く、指標となるQ―max値(0・2以上で接触冷感ありとされる)は0・321だ。強度にも優れ、トライポット断面糸の強度が4・1センチニュートン(cN)/Tに対して、ボディクールは5・5cN/T。このため細繊度糸による軽量薄地が可能になる。また、異型断面による屈折反射でシルクのような上質な光沢と生地表情も特徴だ。

 12月からの販売に向けて、すでにインナーを中心に大手アパレルへの提案を行い、好感触を得ている模様だ。「当面はインナー、スポーツ用途のトリコット、ラッセル編み地用途が中心となるが、将来的には織物での商品開発も視野に入れる」(塩村長繊維事業部長)考え。販売品種は、まずは33T/26フィラメントのみとなるが、顧客の要望に応じて順次ラインアップを拡大させる予定だ。糸値は通常の「ミラコスモ」と比較して約20%高。

 東レでは、ボディクールの吸汗速乾、接触冷感、良質の肌触り、上質の光沢感、薄手・軽量性などを切り口に、快適や健康志向の高まる衣料・生活資材分野のニーズに応える方針だ。