CAD選びガイド/HOTな中国市場
2001年02月01日 (木曜日)
〝世界のアパレル生産地〟中国への視線が熱くなっています。アパレルCADを販売する企業でも、中国ビジネスが急速な広がりを見せています。現状は日系アパレルへの納入が中心ですが、今後は販社を通じた現地企業や、第三国への販売も広がっていくことでしょう。空洞化が極まる日本国内でも、オーダー用途や短納期小ロット用途を中心に需要回復傾向を指摘する関係者も多く、CAD業界は活況を呈しています。
*大手2社が分社独立した訳
古くから専門性の高いCADシステムでアパレルシェアを分け合ってきた、東レACSと旭化成AGMSの大手二社が、相次いで分社独立に踏み切りました。分社化の動機は「意志決定のスピード化」と「予期しなかった中国市場の急速な拡大」ですが、専門性と機能を100%発揮できる体制にしないと勝ち抜けない、という判断があったことは確かです。
昨年十月一日に設立された東レACSの今崎喬社長は、「最近は『東レ』という企業の看板より、お客様自身がグローバルな視野で選択をするようになりました。そうしないと自分が負けてしまうからです」と話します。国内外のライバル輩出で、大手といえども安閑とはしていられない状況になっているようです。
同社の提案は、ユーザーの多いアパレルコンピューターシステム「クレアコンポ」を核に、同社がPDM(プロダクト・データ・マネジメント)と呼ぶ、店頭情報に基づいた生産調整システムを構築することで、顧客企業のキャッシュフローを高めることにあります。この業務系PDMはSCMの手段として、国内ユーザーを広げる武器となるものです。
また、ITの広がりにつれ、他社に先がけスタートした「ACSネット」の評価が高まっています。これはクローズドされた広域イントラネットで、アパレルと国内外工場を結び、CADデータ、型紙、縫製仕様書をネットで送ることが可能です。型紙や仕様書は中国語、英語版に対応しており、生産のグローバル化、QRにいち早く対応したものです。会員数は早くも千百社を超えました。
このネットワークが、中国市場でのCAD販売の好調にも結びついています。現地ユーザーに対し、国内同様のアフターサービスを行うため、上海にトレーニングとメンテナンスの事務所も開設しています。
*中国5万社市場の争奪戦?
旭化成は「予想を超える中国市場の急速な拡大」を受けて、今年元日付けで旭化成AGMS㈱を立ち上げました。分社独立を機に海外営業担当を新設し、上海の企業と代理店契約を結びました。中国市場への販売に本腰を入れ始めたのです。中国での販売目標は「十億円越え」と言います。
旭化成も国内では東レ同様に「看板」がモノをいう企業ですが、「製造メーカーの海外進出という環境変化に加え、現地企業のCAD/CAM熱は沸騰しています。国内だけを追いかけていたのではダメになってきたのです」とAGMS初代社長の平松治也氏は話します。
しかし海外を狙う国内CADメーカーは少なくありません。競合は必至です。平松社長は今後を占って、「中国の縫製工場を約五万社と見積もった場合、CADを導入しているのは二・五%程度とみられます。今後三〇%まで導入されると仮定して、一万五千社のパイを各社で分け合うことになるでしょう」と予測しています。同社の中国ユーザーは現在三十五社ですから、眼前には十分に魅力的な市場が広がっているわけです。
今回契約した上海の代理店は当面、技術・サービスを中心に行いますが、その後販売業務を開始し、上海以外の拠点も徐々に増やしていく方針です。また「単に出力を中国で行うだけでなく、CADのオペレーションも現地で行うケースが増える」と見て、代理店のメンバーにはCAD経験者をそろえています。
一方、国内CAD販売も、昨年十一月後半から上向いてきたと言います。同社の場合、十二月単月は前年比三割増を売り上げました。「紳士はオーダーばかり。婦人はオリジナルの短納期・小ロット」と傾向は鮮明だそうです。「国内縫製メーカーも『これでいく』と腹を決めたところが発注し始めた」と平松社長は分析しています。
国内販売体制は、分社を境に商社経由から直販に切り替えました。「商社にマージンを払う時代ではなくなった」と発言はシビアですが、その商社から三名を迎え入れ、総務課を新設し、会計制度も分けて国内営業体制を強化した形になっています。
国内では、ソリューション提案とともに、「インターネットを活用したSOHOや個人向けCADの開発販売に力を入れていく」と言います。業者の二・五割は個人名で登録されているそうです。SOHOは「企業に所属したときに機能するもの」とみて、「企業と個人の信頼関係をサポートする」立場から販売活動を行う方針です。
こうした大手二社の動きに見られるように、CADの販売・サービス体制は、国内、中国とも同様のレベルで築かれつつあります。インターネット網が整備された現在、縫製業者や企画会社、SOHO、フリーのパタンナーさんたちは、いつでも、どこででもCADを導入でき、作業を行えるようになっています。
*CADを使った新ビジネス
CADユーザー側の新しい動きの一例として、ユカ アンド アルファのCADを導入し、中国でアパレルの企画業務ビジネスを始めた企業を紹介します。
コンセント(大阪市、藤原英剛社長)は、デザイナー十人、パタンナー二十五人、マーチャンダイザー五人を抱えるアパレル企画会社です。企画コンセプトの提案から、デザイン業務、素材選び、縫製仕様書(英語、中国語にも対応)の作成、パターン・サンプルの作成まで、一貫したサービスを武器に急成長してきました。現在は年間四千型のパターンメークを行っているといいます。
同社は昨年十一月、上海に「CADセンター」的機能を持った営業所を開設しました。国内で行っている企画業務の中国シフトです。
中国縫製は拡大しても、型紙や仕様書をインターネットでやりとりできる現地の生産工場は多くありません。中国ではCADのシステムはまだまだ浸透しておらず、パタンナーも少ないのが実状です。そこで「CADセンター」を設置することで、パターンメーキングを簡単な指図書で受注し、各工場に送るビジネスが成立すると考えたわけです。現地工場には出力専用機のみを設置すれば、CADセンターで加工されたデータが出力可能です。大幅なコスト削減が期待できるわけです。