吸汗速乾性試験のISO化問題/今こそ日韓協調を

2011年11月04日 (金曜日)

 韓国が国際標準化機構(ISO)に吸汗速乾性試験方法を提案している問題で、このほど日本もカケン法、ボーケン法に基づく試験方法をISO提案し、作業部会原案として採択された。吸汗速乾性試験法を巡って異なる提案の日本と韓国。ISOを舞台に対立も予想される。だが、いま必要なのは日韓の協調による、より実践的な試験方法の国際標準化である。

求められる実践的試験方法

 先月24日、繊維製品の試験方法標準化を討議するISOの第38技術委員会27作業部会の国際会議が大阪で開かれ、日本が提案していた吸汗速乾性試験方法が作業部会原案として採択された。一方、日本に先立ち提案された韓国案は、すでに委員会原案になっている。

 韓国提案の試験方法は、韓国工業規格にある透湿防水性試験方法を応用したもの。空気流誘導箱に入れた発熱体付き金属板の上に透湿防水膜を設置する。その上に試験布を配置し、金属板の穿孔(せんこう)から水蒸気を出す。試験布の湿潤レベルが一定になった段階で、5ミリリットルの蒸留水を滴下する。滴下した蒸留水が蒸発し、試験布が初期の湿潤レベルに戻るまでの時間から乾燥時間を測定する方法だ。

 一方、日本提案は、試料に0・3㏄の水を浸み込ませ、重量変化で乾燥時間を測定するカケン法と、0・1㏄の水をシャーレに置き、上から試料をかぶせて重量変化で乾燥時間を測定するボーケン法である。これら日本の試験方法と比較すると、韓国提案は、極めて学術的で厳密な試験方法であるという見方が関係者の間では強い。

 だが、韓国案にも問題点はある。まず、極めて複雑な検査装置と厳密な手順が必要なため、果たして大量の試験をこなせるかという点だ。ISOといえども工業規格である以上、実際の工業生産過程で実用的な運用が可能かどうかは重要だ。

 もう一つの問題は、韓国案では繊維の吸水性は、繊維自体の親水性ではなく、糸・生地中で発生する毛細管現象によって発現すると規定している点。つまり、合繊が前提となっている。しかし、吸汗速乾素材は天然繊維使いにも存在する。この問題をどう処理するか。その意味では日本案の方が素材にかかわらず定量的な測定が可能ではないか。

 様々な違いを内包する両国の提案だが、最も重要な点は、ISOもまた、一つの国際政治であり「日韓がいたずらに対立する構図は避けなければならない」(検査機関関係者)ということだ。合理的討論の前提を有する欧米との対立と異なり、アジア勢同士の対立は、感情的なもつれになりやすい。

 日韓の対立で吸汗速乾試験方法のISO化自体を流産させるのは不毛であり、さらに韓国との対立は、ほかに日本がISO提案している案件の採択に悪影響を及ぼす。

 今目指すべきは、韓国案と日本案が両立するISO案の整合化だろう(例えば韓国案に日本案を併記させるなど)。そのために、いまこそ日韓が協調することでアジア発の実践的試験方法のISO化を目指すべきであり、そのための実践的な政治手腕が問われている。