2011秋季総合特集5/安心・安全、信頼性を支える検査機関

2011年11月11日 (金曜日)

 世界的に不透明な時代。だからこそ安心・安全、商品の信頼性がますます重要になる。日本の検査機関は国内、海外でこれを支える。

カケン/グローバル対応進む

 カケンテストセンターは、グローバル化が進む。中国では上海科懇検験服務有限公司を中核拠点に、青島、大連、寧波、無錫に試験室を置く。また、CNAS(中国合格評定国家認可委員会実験室認可証書)、CMS(資質認定計量認証証書)を取得する。

 チャイナ・プラスワン対応も進んでいる。香港、韓国、台湾、インドネシア、タイ、ベトナムに試験拠点を置いている。

 「ベトナムは好調。ここ2年くらい前から急激に伸びている。ホーチミンにあるが、ハノイからも需要がある」という。タイは試験室が2階ということで、今回の洪水の直接的影響をまだ受けていない。これまで仕事の依頼も増加傾向にあったが、洪水後の試験依頼がどうなるか。「タイ国内だけでなく、バングラデシュからの依頼もある。ミャンマー、カンボジアもタイがカバーしている」ようだ。

 国内には海外規格試験室がある。ここでは、海外で知名度の高い「BVCPS JAPAN」の名前で英文証明書を発行することが可能。試験データに対する信頼性が増す。また、海外バイヤーの品質基準で試験することが可能で、試験結果の良否の評価が簡単。M&Sの認定検査機関でもある。

 東京地区でも原宿、堀留、目黒に試験室を立ち上げて利便性をアップ。「顧客目線の試験サービス」を目指す。

ボーケン/国内外で事業内容の充実図る

 ボーケン品質評価機構は、継続開催している展示会「2011/2012ボーケンエキシビション」を11月29、30日の大阪展を皮切りにスタートする。来場者からの評価が高い実物を交えた生地・製品の事故事例紹介のほか、DVD映像を用いた機能性試験の紹介を行う。

 見学するだけでなく、展示物の中には実際に触って機能や検査内容への知識を深めることができる出展物もそろえる。現物生地を用いた透け防止機能の実演のほか、今年新しくなった繊維の鑑別試薬「ボーケンステインⅡ」を紹介するなど幅広い展示を行う。

 展示会では、中国で施行された輸出入商検法の解説など、中国でのモノ作りも意識した展示内容としている。同機構は今年4月に上海に機能性試験室を新設し、アパレルや服飾雑貨など幅広く機能性試験を請け負う。

 人材育成も大きな柱として推進している。今年は繊維製品品質管理士資格試験に37人が合格し、繊維検査団体での資格保有者は最多となる。とくに今年の合格者には中国人スタッフ2人が含まれる。

 人材面でも事業展開面でも、国内と同様のサービスを海外で提供できる体制作りを進める。

 「2011/2012ボーケンエキシビション」は来年1月19、20日に岡山で、2月2、3日に名古屋で、2月23、24日に東京でも、それぞれ開催される。

QTEC/微生物試験で新試験室も

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は微生物試験(抗菌性試験、抗かび性試験、抗ウイルス性試験)を行う。西部事業所で試験を行っているが、来年1月には神戸試験センターに新試験室(約330平方㍍)が完成する予定で、2カ所での対応となる。

 抗菌加工製品の市場定着に伴い、抗菌性試験の依頼は安定している。新たな加工として期待されるのが、抗かび性試験。繊維評価技術協議会は、抗かび加工繊維製品の認証基準の運用を開始しており、QTECでも試験依頼が増えている。

 この10月中旬に行われたISO/TC38/WG23京都国際会議では、繊維製品の抗かび性試験方法のISO化について討議された。QTECは同会議で抗かび性試験方法に関する基礎研究の成果を発表した。

 また、2011年度国際標準共同研究開発事業(繊維製品の抗ウイルス性試験方法に関する標準化/繊維製品の抗ウイルス性試験方法のISO化事業)において、QTECは繊維評価技術協議会、バイオメディカルサイエンス研究会とともに、事務局として共同開発を進める。抗ウイルス性試験方法についての実際の研究開発を担当し、今年度はインフルエンザウイルスについて研究。次年度からノロウイルス代替のネコカリシウイルスも対象とする予定だ。

ニッセンケン/インドネシアも検討

 日本染色検査協会(ニッセンケン)は、中国での試験・検査体制を強化する。中国・南通人民路事業所において特定芳香族アミン類の分析試験を4月から開始した。同事業所に分析機器と人を配置し、特定芳香族アミン類の分析試験を行い、証明書を発行している。今後は上海事業所でも機器設置を進めていく。

 また、2月には山東省煙台市芝罘区機場路の煙台科技園内に煙台事業所を開設。青島まで車で2時間ほどで、ニットと布帛の両方の試験を行う。基本的な試験設備はすべてそろえ、華北地区の拠点にする。また、チャイナ・プラスワンとして、「インドネシアを候補地に検討」している。

 同協会は、エコテックス規格認証機関でもある。繊維製品の安全性の認証「エコテックス規格100」を展開。日本での認証は350社に及ぶ。これは、欧州を中心に世界15カ国の加盟試験機関で構成するエコテックス国際共同体(本部=スイス)が定めた繊維製品に対する国際的な安全基準である。

 8月には本部と東京事業所が一体化して新ビルに移転したが、顧客に現場を見てもらえる、機能的になった、人の交流と情報共有化が進んだなどの効果が出ている。「ニッセンケンだから安心」という信頼を今後も重視する。