特集/アジアの物流・加工拠点/広がるビジネスチャンス

2011年12月09日 (金曜日)

 繊維製品ビジネスにおけるアパレルメーカーや商社は、縫製を中心としたモノ作りの拠点を中国一極集中からアセアン諸国などチャイナ・プラスワン地域への分散を進めている。それに伴い検査機関や物流ソリューション企業も自らの機能を発揮するビジネスフィールドをアジア全域に広げている。

チャイナ・プラスワンへ生産拠点分散が後押し

 衣料製品ビジネスにおいて、検査機関や物流ソリューション企業の事業が急速にアジア全域に広がっている背景には、昨年、主力生産拠点の中国で縫製工場を中心に労働者不足が広がり、サプライチェーンが大きく混乱したことがある。アパレルや商社では納期遅れや不良品の頻発といったトラブルが続出、流通における販売機会の損失などにもつながった。

 アパレルや商社は昨年半ばごろからチャイナ・プラスワンとしてアジア全域をターゲットに生産拠点の整備拡充に乗り出し、急ピッチで事態の改善を図ってきた。

 とくに2011年は具体的なチャイナ・プラスワンの拠点としてアセアンのベトナムやインドネシア、ミャンマー、カンボジア、南アジアのバングラデシュやインドなどで縫製拠点を整備、拡充する動きが目立った。

 例えばインドネシアは日系素材メーカーの拠点となっていることもあり、インナーウエアやスポーツウエアの生産拠点として活況を呈している。ミャンマーはユニフォームアパレルの生産拠点として大きな実績を上げつつあり、バングラデシュは実用衣料の一大生産地となりつつある。これらの動きに呼応して検査機関や物流加工企業も、事業フィールドやネットワークを迅速に拡大することが求められている。

 原材料高や人件費の高騰から、OEMを展開する商社は縫製拠点ばかりでなく、素材の調達元をチャイナ・プラスワンに求める動きも活発化してきた。アセアン内の経済連携協定を活用することによるコストメリットも生まれるため、今後、こういった素材供給の動きはますます重要になる。調達網をどう整備するかも喫緊の課題だ。

 また、世界最大の消費市場になりつつある中国、そしてインドやインドネシアなど、マーケットとしてのアジアを見つめた取り組みも広がっている。

 検査機関や物流ソリューション企業にとっては、アジア全域にまたがるサプライチェーンの中で、どのように自らの役割を果たしていくかが問われると同時に、その成否が今後の成長のカギを握る。

カケンテストセンター、(株)カケン/インドネシアに合弁設立/試験+検品を一貫で

 検査機関のカケンテストセンターと検品会社の㈱カケンは、2012年4月にインドネシアのジャカルタ市内に繊維製品の検査と検品サービスを提供する合弁会社「PTカケン インドネシア」を設立する。新会社は日本向け商品に加え、欧米向け商品の品質検査・検品を行う。

 チャイナ・プラスワンの候補地として注目を集めるインドネシア。タイ同様に素材の現地調達が可能なうえ、人件費はタイよりも安い。しかも人口は2億4000万人と、中国と同じく市場としての成長が期待される。

 新合弁会社の社長となるカケンテストセンターの羽生浩之国際部主任部員は「インドネシアは今後大きく伸びる。ラボと検品が一体となった新しいビジネスモデルをスタートさせる」と、意欲的だ。

 場所はジャカルタのマンパン通りで、中心街から車で10分ほど。1階が試験受付・試験ラボラトリー(650平方メートル)、5階が検品受付・事務所(400平方メートル)である。生地から縫製まで一貫して業務が行え、外―外貿易の拡大を視野に入れ、欧米向けの試験機器もそろえる。

 また、カケンテストセンターの海外規格試験室と連動し、現地で欧米の試験基準などの相談に応じられるのも特徴だ。

 業務は染色堅牢度試験、繊維鑑別試験、物性試験、安全性試験、製品試験、副資材試験、雑貨試験のほか検品・検針も行う。

ボーケン品質評価機構/服飾雑貨まで対応/上海、広州の2拠点連携で

 ボーケン品質評価機構は現在、香港を含む中国に8カ所、台湾と韓国にそれぞれ1カ所の計10カ所の海外拠点を構える。衣料品の品質評価試験、機能試験だけでなく、最近では服飾雑貨の品質試験の依頼も増加。今後も衣料品だけでなく、服飾雑貨の品質評価にも力を入れる考えだ。

 中国を中心に海外での品質評価業務にも力を入れるボーケン品質評価機構だが、最近では、とくに広州試験センターで靴、バッグなど服飾雑貨の品質評価試験依頼件数が増加傾向だ。背景には、広東省を中心に靴、バッグなどの産地が存在していることに加え、アパレルの取扱商品が衣料品だけでなく服飾雑貨にまで広がってきたことがある。

 こうした流れを受け、ボーケン品質評価機構では服飾雑貨の品質評価にも力を入れる。今年開設した上海機能性分析センターでも服飾雑貨の品質試験に対応することから、広州試験センターと上海機能性分析センターを連携させることで、顧客の利便性に優れる品質評価体制を持ち味に依頼獲得を進める方針だ。

 上海機能性分析センターでは、吸汗速乾性試験など機能性試験を中心に扱う。近年、中国で生産される日本向け繊維製品でも機能素材・加工を使用した商品は増加することが確実だ。このため、上海機能性分析センターの役割は、ますます重要になる。

 一方、中国以外にアジア地域でも品質評価業務のニーズが高まる。ボーケン品質評価機構でもアセアン地域を今後の重点地域と位置づけており、とくにタイ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュなどを対象に調査を進めてきた。このなかでとくにインドネシアを評価。インドネシアでの品質評価拠点設立も検討する。