合繊メーカー今年の課題/成長戦略の上乗せを

2012年01月10日 (火曜日)

 合繊メーカーは、リーマン・ショック後、構造改革を進め、今期から成長軌道に入りつつあった。上半期の好決算がその証左である。しかし、欧州債務問題をはじめ世界経済は減速しており、先行きの不透明感が濃い2012年のスタートとなった。また、国内でも液晶・IT関連の需要低迷が下期業績に影響を与えそう。消費税アップ問題も消費意欲を冷やしかねない。合繊メーカーの今年の課題は何か。

高機能・高性能で勝負

 この4月から新中期経営計画を開始するのが帝人、クラレ、ユニチカである。帝人は「グループの将来ビジョンとして、10年後のありたい姿を描き、目標に到達する方法論を討議」している。事業、地域、技術、〝人財〟の4つのポートフォリオ変革を中期経営計画の基本的な考え方とする。

 クラレの新しい中期経営計画は3月に発表予定だ。今期が最終年度の「GS―Twins」の売上高目標4500億円には届かない(3900億円の見通し)が、利益面では健闘している。長期企業ビジョンでは18年度1兆円を目標にしており、次期中計はこれをつなぐものになりそうだ。

 ユニチカの中期経営計画「改革’11」も今期が最終年度。その2つの戦略のうち、構造改革を柱とする収益基盤安定化戦略は「持続可能な企業体としての基盤を固めることができたと評価」されている。その基盤の上に位置する成長戦略を柱にした事業力強化戦略は、「次期中計に引き継がなければならない」という。次期中計はアジア戦略の重視、コア事業の拡大戦略、エコロジー重視の戦略、高品質・高性能の商品戦略を基本にした成長戦略となる。

 日本化学繊維協会・大八木成男会長が日本は「とくに高機能・高性能繊維分野において世界をリードする存在」と指摘するように、高機能・高性能繊維の開発、テクテキスタイル分野の拡大、新興国など成長市場へのシフトが今後も進みそうだ。

 グローバル化も今年のキーワードだ。生産から販売、さらに研究開発も現地化が進む。

 東レは1日付で、中国での研究・開発体制を強化するため、南通にある東麗繊維研究所〈中国〉(TFRC)の上海分公司を「東麗先端材料研究開発〈中国〉」(TARC)として分離独立させた。TFRCは繊維の研究・開発拠点に特化。TARCは繊維以外の研究・開発を行うとともに、基礎研究を行う先端材料研究所(滋賀県)の中国ブランチとしても機能する。また、フィルム加工、炭素繊維複合材料、電子情報材料などの研究・技術開発サービスを新規に開始する。

 「海外の成長機会を捕らえる」(東洋紡)、「融合型の事業を国内外で展開」(旭化成)など各社は今年、さらなるグローバル化を推進する。そのグローバル化をどこまで“現地化”できるかも課題である。