アジア戦略は今~グローバル時代の生き残りは(24)素材メーカー編/東洋紡STC/基本は“東洋紡の品質統制”

2012年03月22日 (木曜日)

 「アジア事業も、機能商品への特化や現地での開発調達を進める形に転換している」と東洋紡スペシャルティズトレーディング(東洋紡STC)の香川裕行社長は話す。基本となるのは“東洋紡の品質統制”。「日本市場が縮小する中、海外市場の開拓は欠かせない。市場性のある地域にコア事業で進出する」ことが基本戦略だ。

 同社のアジア事業は従来、東洋紡によるタイ、インドネシア、マレーシアの生産拠点を生かした持ち返りビジネスのほか、新興産業による中国からの調達事業が中心だった。だが、新興産業との統合で東洋紡STCが発足以降、「中国にも技術者を派遣し、東洋紡としての品質統制を徹底する形になった」と強調する。持ち返りビジネスから、コア事業による新興国市場開拓に軸足が移る。

 このため中国での事業内容も変わりつつある。「中国、韓国には肌着文化がある。ローカルアパレルへの素材販売を拡大する」として中国現地法人の東洋紡高機能製品貿易〈上海〉にインナー事業部を設置。日本の大学を卒業した中国人スタッフを駐在させ、富山事業所のほか現地で委託生産するインナー用原糸の販売体制を整えた。

 ここでも日本から技術者を派遣し、現地ニーズに合った機能糸の開発を行うと同時に、東洋紡としての品質統制を徹底している。「昨年10月の『インターテキスタイル上海』展にも出展し、関心を集めた」と香川社長は振り返るように、今後の成果への期待が高まる。

 一方、トーヨーボウ・ニッティング・インドネシア(略称TKI)とシンコウ・トーヨーボウ・ギステックス・ガーメント(STG)による編み立て・染色、縫製を軸とするインドネシア事業も変化した。従来の定番ニット製品による対日持ち返りビジネスから、欧米メガブランドや日本の大手スポーツアパレルからの受注が拡大した。ここでも開発と品質統制を徹底。TKIに開発部門も設置し、開発機能も強化した。世界市場で展開する顧客へ商品供給する体制が整う。

 マレーシアでも事業の高度化が進む。ペラテキスタイル・ミルズには昨年、梳毛紡績の東洋紡ウール〈マレーシア〉が移管された。東洋紡のお家芸である複合糸「マナード」など「東洋紡の技術が根付いた重要拠点」として、同社のウール事業を支える。同様に綿織物生産の東洋紡テキスタイル〈マレーシア〉もシャツ地、寝装生地、通帳クロス基布生産にとって欠かせない拠点だ。

 「海外生産でも、日本国内とまったく同じ品質統制を行っている」と強調する香川社長。アジア各拠点で“東洋紡品質”の商品を供給することがアジア戦略の基本だ。同時に、商社としての調達機能も生かし、ベトナムやミャンマーなどでの縫製品生産・調達もユニフォーム中心に拡大する。メーカーと商社のハイブリッドカンパニーとしてのアジア戦略が進行中だ。