アジア戦略を加速する/カケンテストセンター

2012年03月30日 (金曜日)

 検査機関のカケンテストセンターはアジア戦略を加速する。日系として中国で最大のネットワークを持ちながら、“チャイナ・プラスワン”の動きをいち早くキャッチして事業を拡大。4月からいよいよ検査と検品がワンストップでできる「カケンインドネシア」が稼働する。

中国、チャイナ+1に対応/海外で機能性特殊試験を

 カケンテストセンターは中国で、上海科懇検験服務有限公司(以下、上海科懇)を1994年に設置し、日本向けを中心に試験業務を行っている。その後、2001年に青島試験室、02年に大連試験室、03年に寧波試験室、04年に無錫試験室を設置してきた。また、香港には1988年に進出し、香港検査所として試験と検査業務を行っている。

 機能素材が婦人服用途でも使われるようになり、カケンテストセンターも「機能性など特殊試験を海外でも行える体制作りを進める」考え。吸水速乾性についてはすでに上海科懇と香港検査所で対応し、実績もある。

 また、日本企業の中国内販を支援するため、青島試験室と上海科懇では3月、「中国内販における法令セミナー」を開催。(1)内販時に適用される法律・法規制(2)衣料品を内販する際の具体的な準備(3)近況報告――を「中国内販の手引き(衣料品編)」と題して行った。

 一方、韓国では1988年に韓国繊維技術研究所(KOTITI)と提携、1996年には台湾のBVCPS TAIWANと提携して試験業務を行う。チャイナ・プラスワン地域では、インドネシアがある。1998年にBVCPS INDONESIAと業務提携したが、同地での提携を解消し、4月に「カケンインドネシア」を設立する。これはカケンテストセンターと検品会社の㈱カケンとの新合弁会社だ。また、タイとベトナムにも提携する試験室があり、タイでは今後周辺国にもアプローチしていく。

 一方、国内には海外規格試験室がある。ここでは、海外で知名度の高いBVCPS JAPANの名前で英文証明書を発行することが可能だ。試験データに対する信頼性が増す。また、海外バイヤーの品質基準で試験することもできる。同センターはマークス&スペンサーの認定検査機関でもある。

「カケンインドネシア」/ジャカルタに4月設立/試験と検品一貫で対応

 検査機関のカケンテストセンターと検品会社の㈱カケンは、2012年4月にインドネシアのジャカルタ市内に繊維製品の検査と検品サービスを提供する合弁会社「カケンインドネシア」を設立する。新会社は一般財団法人化後のグループ経営ビジネスモデル第1弾でもある。

 新会社(資本金1億2500万円=カケンテストセンター80%・㈱カケン20%)はインドネシアで、日本向け商品に加え、欧米向け商品の品質検査・検品を行う。インドネシアはチャイナ・プラスワンの候補地として注目を集める国。タイ同様に素材の現地調達が可能なうえ、人件費はタイよりも安い。しかも人口は2億4000万人と、中国と同じく市場として期待は大だ。

 場所はジャカルタのマンパン通りで、中心街から車で10分ほど。1階が試験受付・試験ラボラトリー(650平方メートル)、5階が検品受付・事務所(400平方メートル)。日本人駐在員4人、検査要員25人、検品要員50人でスタートする。生地から縫製まで一貫して業務が行え、外―外貿易の拡大を視野に入れ、欧米向けの試験機器もそろえる。

 また、バンドンとジャカルタの間にあるスバン地区に研修センターを設ける。カケンテストセンターの海外規格試験室と連動し、現地で欧米の試験基準などの相談に応じられるのも特徴だ。

 業務は染色堅牢度試験、繊維鑑別試験、物性試験、安全性試験、製品試験、副資材試験、雑貨試験のほか検品・検針も行う。検査と検品を一貫して行えるのが他社にない強みと言える。

 新会社社長となる羽生浩之氏は「業界のために何ができるか、必要とされる場所はどこか。検討を重ねジャカルタに進出する。新しいビジネスモデルとして、現地スタッフのトレーニング進め、4月2日にプレオープン、同中旬にグランドオープンする予定」と語った。

姉崎直己理事長に聞く/グループ経営の強化を/上海科懇を子会社化

 カケンテストセンターが一般財団法人に移行して1年。姉崎直己理事長に、現状と今後の課題を聞いた。

    ◇

――昨年4月に一般財団法人に移行して約1年。何が変わりましたか。

 設立以来、いわば行政の補助機関的な意識が残っていましたが、これを転換してサービス業として「お客様からの信頼」、「お客様目線での仕事」を徹底してきました。まだ、十分とは言えませんが、今後もこのことを最重視していきます。

 また、企業経営と同様に健全な採算性の確保が必要で、コストコントロールを進めました。職員全員の協力もあり、予算よりも事業支出を低く抑えることができました。

 さらに内部統制も強化しています。コンプライアンスの行動規範はありましたが、より透明性のある経営にしています。人事制度の改革も進めています。

――一般財団法人への移行で、投資を行うことが可能になりました。

 昨年11月に中国の上海科懇検験服務有限公司の従来の株主であった香港の投資会社から株式譲渡を受け、これを100%子会社化しました。また大連、青島、無錫、寧波の駐在員事務所を正規の法人形態に変更できるよう現地の検験局と交渉しています。インドネシアのジャカルタでは、検品会社の㈱カケンと合弁で4月に「カケンインドネシア」を設立します。さらに㈱カケンにも30%出資します。

――カケングループとしての経営強化ですね。

 インドネシア、上海を含めグループ経営を推進します。海外を含めればグループ全体で従業員は約1200人にも達します。経営の責任は重く、事業の信頼性が損なわれないよう監査もグループ内の各社をカバーしていきます。

――業界ではチャイナ・プラスワンが加速しています。

 タイではすでにOMIC COPITと提携していますが、4月からカケンの駐在員を派遣します。バングラデシュ、ラオス、カンボジアからのニーズをタイで受けます。将来的にはインドやトルコでの事業展開があるかもしれません。

 顧客のビジネスがグローバル化するほど、我々も対応が必要になります。世界市場に向けた準備を進めながら、そのための人材を確保し、技術力も一層向上させていきます。海外の各地試験室でも機能加工や各種分析の試験ニーズが高まっています。従来一部試験室ではそうした対応をしてきましたが今後さらに展開し拡充します。非繊維の靴やバッグといった生活用品の分野の試験についても顧客のニーズに応じて今後強化していきます。