特集・猛暑を吹き飛ばす快適素材・検査機関編/商品の信頼性を守る

2012年05月23日 (水曜日)

 快適繊維製品はクールビズなどを背景に消費者に浸透した。しかし、快適のベースになる安全性や、訴求する機能が本当かどうかの確認作業も必要だ。第三者の検査機関が商品を試験することで、商品の信頼感も増す。検査機関の動きをまとめた。

ニッセンケン品質評価センター/注目の「エコテックス規格100」/芳香族アミンで相談も増加

 快適素材は安心・安全がベースである。日本繊維産業連盟が3月末に、22種類の特定芳香族アミンに関して、繊維産業の自主基準「繊維製品に係る有害物質不使用に関する自主基準」を発表した。その後、ニッセンケン品質評価センターには様々な問い合わせが相次いでいる。

 同センターは芳香族アミンなど繊維製品の有害物質検査機関として日本で唯一の国際認証を得ている“エコテックス規格100”のエコテックス事業所を中心に、日本国内の13事業所で、特定芳香族アミンの分析試験の依頼を受け付けている。

 また、中国生産に対応して、南通事業所、上海事業所、南通人民路事業所でも特定芳香族アミンの試験を行う。

 「試験では、インド製品や雑貨品などにアゾ系染料が使われているケース」もあり、「相談だけでなく、実際の試験依頼も増えた。今後はトレーサビリティーやサプライチェーンの管理などが重視されるのではないか」と語る。日本でのエコテックス規格100の認証は現在、約350社。新規が増える傾向だ。

カケンテストセンター/様々な機能性試験を実施/上海科懇の試験も拡充

 カケンテストセンターは、中国の上海科懇検験服務の4階に4月から「上海科懇分析センター」をオープンし、試験内容の拡充を図っている。

 消費者が重視する衣料品の安全性に関する試験として、芳香族アミン類の定量試験やホルマリンなども試験。また、ふとんやダウンジャケットなどに使用されている羽毛に関する羽毛混用率試験、クールビズで人気の綿/麻織物の綿麻混用率試験も実施する。

 国内でも特定芳香族アミン類の試験に関する問い合わせに、東京事業所分析テストラボ、大阪事業所分析テストラボが対応する。

 機能性試験では、接触冷温感、耐熱防火服、吸湿発熱性、光吸収熱変換特性などを評価する。サーモカメラによる熱特性評価や遠赤外線の測定も行う。快適性関連では、吸放湿性評価、吸汗速乾性評価、サーマルマネキンによる測定なども実施。クリーンルームの発塵性や捕集効率の評価もできる。今後は海外においても機能性試験業務を増やしていく考えで、吸水速乾性はすでに上海科懇と香港検査所で対応している。

QTEC/芳香族アミン対応強化/抗菌は神戸に集約

 日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は、東京総合試験センターに特定芳香族アミンの分析機を2台所有していたが、4台に倍増した。これは特定芳香族アミンに関する繊維産業での自主基準が発表されたことを受けたもの。「これまで委託調査はあったが、試験依頼は少なかった。しかし、雑貨品やレザー関係でも試験依頼が増えている」ことに対応したものだ。中国でも、上海試験センターが導入を計画している。

 また、中国の無錫試験センターでは5月から、羽毛組成混合率試験をはじめ、かさ高性、羽毛吹出し試験などの各種羽毛試験を開始した。羽毛ふとん、ダウンウエアなどの羽毛製品の製品検査、耐洗濯性等の一般試験も実施可能だ。

 抗菌試験は、日本の神戸試験センターに集約した。同センターの微生物試験室では2月から、抗菌防臭加工をはじめ様々な抗微生物加工製品に対する性能試験と消臭性試験を実施している。

 福井試験センターではリビング関連の遮光、遮熱の特殊試験を行う。

ボーケン品質評価機構/新たな検査法を充実/上海でも対応を強化

 ボーケン品質評価機構は2011年12月から吸水速乾の機能評価にMMT(モイスチャー・マネジメント・テスター)を導入している。

 生地に触れた水分が素材の表面と内部に浸透する様子を電気的にリアルタイムで検出し、吸水性と速乾性を同時に測定できる。

 MMTを用いれば素材の吸水速乾などの機能を細かく迅速に分析できるほか、中国で吸水速乾機能を表示するにはMMTによる評価が認められていることもあり、検査の受注は増加傾向にある。MMT試験は大阪の近畿事業所のほか、上海でも試験を実施している。

 ボーケンは上海で、従来の浦東試験センターと浦西試験センターに加え、11年4月に新たに機能性分析センターを開設した。現在、1年が経過し、各種機能性評価試験に対応している。今後更に機能性事業の対応を強化し、機能性評価試験の充実を図る。

 3月からは中紡標(北京)検験認証センターと提携したことで「CALマーク」付きの試験報告書の取り扱いが可能になった。同マークは国の品質監督部門が認定する権威あるマークで、中国での内販事業でCALマーク付きの試験報告書の提出が求められる状況があるため、今後、需要は増加するものとみている。