環境新書特集/カケンテストセンター/特定芳香族アミン問題/東京、大阪、上海で対応

2012年06月21日 (木曜日)

 「4月は特定芳香族アミンの問い合わせが殺到した。連休明けからやや沈静化したが、試験依頼は今も毎日ある」。カケンテストセンター東京事業所の前田容一分析テストラボ長は、こう語った。

 日本では「有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律」などでホルムアルデヒド、ディルドリン、有機水銀化合物などが規制されている。海外でも安心・安全への関心は高く、環境や健康を害する化学物質を規制する動きが明確だ。

 アゾ染料・顔料中のアゾ基が還元分解されて発がん性のある特定芳香族アミンを生成する可能性がある一部のアゾ染料・顔料もその一つ。欧州や中国、韓国、台湾ではすでに法規制されている。

 経済産業省は、3月30日に「繊維製品等の安全性の確保について~有害物質に変化し得る染料・顔料の使用自粛に向けた業界の自主基準に対する対応~」を公表した。その中で、日本繊維産業連盟などが自主基準による取り組みを進めている。

 ラボでの試験は、生地を切り、染料を還元分解し、その中に有害なアミンが含まれているかを調べる。ガスクロマトグラフ質量分析計と液体クロマトグラフを使用する。この試験は東京事業所のほか、大阪事業所分析テストラボと中国の上海科懇検験服務が対応中だ。

 前田ラボ長は「問い合わせは落ち着いているが、全体の方向性を見ている企業もある。自主基準にはペナルティーがない。管理も企業の考え方に任される。今後は法制化につながるかがポイントになるだろう」と言う。

 海外で規制された商品が、規制のない国に流入する。そうした事態は避けねばならない。