開発の軌跡・合繊メーカーの機能糸(5)東洋紡STC「シルファインN」シリーズ/細繊度、異形断面の追求
2012年06月22日 (金曜日)
東洋紡スペシャルティズトレーディング(STC)は、機能、軽さ、耐久性、感性へのアプローチで高強力ナイロン織物「シルファインN」に高機能を付与し、品種を拡大させてきた。従来のものとは違う、「高い機能を持ったナイロン」をテーマに開発し、異形断面化と細繊度化を追求し続けている。
異形断面の実現には、アイデアと理論、そして「ちょっとした遊び心」が必要だった。
例えばY字断面を持つ「シルファインエール」。シルファインNの代表的な用途である、アウトドアウエアに使われるこの原糸は、Y字が重なることで糸の動きを抑え、防風性の高い織組織を実現する。アイデアの発端になったのは海の消波ブロックだったという。重なり合うブロックを生地の構造に取り入れた。
「シルファインラブ」のハート型断面は、それまでの研究開発の蓄積によって生み出された。感性へのアプローチを模索するなかで、光を反射する三角断面と二つの山を持つ特殊扁平断面糸「コクーンシルファイン」を組み合わせると、ちょうどハートの形になり、しかもシルクのような光沢と吸水速乾性を併せ持つ糸になった。
細繊度化技術もシルファインNの拡大を支えた。ハイスペックのアウトドアウエアに使われる丈夫で軽い素材として、世界で最先端の技術に成長。中でも困難を極めたのは均一性だった。
22デシテックス(T)/20フィラメントの場合、単糸1~1・5Tという細さの糸を均一に紡出しなければならない。1本でも切れてしまうと他のすべての単糸も切れてしまうためだ。均一な強度で紡糸し、均一に冷やす技術に加え、繊維にダメージを与えない製糸部品の開発も必要だった。研究開発の末、同社は現在、最先端の軽量高密度素材として8T/7フィラメントまでを展開する。
アウトドア用途で確立した生産技術で現在、新たな用途の開拓を着々と進めているという。