2012夏季総合特集・事例研究/中国ニーズに対応する検査機関

2012年07月23日 (月曜日)

 日系検査機関は中国生産を支援するとともに、中国内販に向けた試験体制を整える。また、安全性、機能性など試験項目を増やし、現地ニーズに対応する。

カケンテストセンター/上海科懇を中核拠点に/内販対応も可能

 「広東省はインフラがまだ十分整備されておらず、上海は日本の商社などが集まっていた。衣料以外の企業も上海に多く、進出しやすかった」。カケンテストセンターは1994年に現在の上海科懇検験服務を設立した。それまで、香港と韓国に拠点を設けていたが、日系企業の中国生産に対応する形で、試験・検品業務の支援を始めた。

 その後、2001年の青島、02年の大連、03年の寧波、04年には無錫と、中国拠点を急拡大していく。「青島はインナー関係が多く進出していた。大連は今もランファンが主力。寧波は上海の近郊地として選んだ。当時から上海の土地や人件費が上昇していた。無錫も上海に近く、インフラも整っており、顧客へのサービスがしやすくなっている」という。

 今年1月には上海科懇検験服務を100%子会社化した。上海科懇は中国の中核拠点。4月に試験内容を充実させるため、上海科懇分析センターを新設。芳香族アミン類の定量試験や機能性試験なども行う。

 また、試験所認定のCNASを取得しており中国内販対応が可能。この6月の更新では、試験項目を大幅に追加して認定範囲を広げた。新たな試験は芳香族アミン、防水性、スナッグ、ピリング、塩素処理水堅牢度など。他の試験センターも提携先とのタイアップで内販向け試験ができる体制だ。

QTEC/上海総合試験センターに/機能、安全性試験も展開

 QTEC(日本繊維製品品質技術センター)の中国拠点は上海、青島、無錫、深にある。このうち上海試験センターの名称を1日から「上海総合試験センター」に変更するとともに、安全性や機能性試験にも対応する試験センターに拡充する。

 QTECは1994年、中国・上海拠点設立準備のため進出した。その上海試験センターが開設されたのは96年4月。当時から試験のほか、検品の技術指導も行った。

 現在、上海市普陀区常徳路の金昌商務中心の3、6、7階で業務を行っている。この1日から上海総合試験センターに名称を変えるとともに、同ビル内で増床を決めた。現在の2500平方㍍が2階の450平方㍍を使うことで、約3000平方㍍に広がる。

 この増床で機能試験のほか芳香族アミン試験などを本年末から順次展開、生活用品(靴やバッグなど)の試験も開始する。来年には微生物試験も行う予定で、「“総合”の冠にふさわしい拠点となる」と中島重雄理事長は語る。

 青島試験センターは2002年に開設。日系検査機関では最も早い進出だ。同センターでも検品指導を行う。この青島と無錫試験センターでは中国内販向けのGB試験にも対応する。

 無錫試験センターは2003年に設立。この4月から羽毛組成混合率試験をはじめ、かさ高性、羽毛吹き出し試験など各種羽毛試験も行う。

ボーケン品質評価機構/中国でのモノ作り支援/充実した試験拠点と展示会

 ボーケン品質評価機構は現在、中国では上海、青島、常州、杭州、広州、そして香港と台湾に試験センターを展開する。 中国でのモノ作りが拡大するなか、検査を含めた管理も中国で行うという流れは強い。ボーケンが中国各地に試験センターを設置することで、中国でも日本と同様のスピーディーで高精度な品質試験が可能だ。最近の生産現場では、中国で機能素材の生産が拡大している。このため昨年、上海機能性分析センターを開設し、抗菌性や消臭、UVカット、接触冷温感など機能素材の性能試験を中国でも行える体制を整備した。また、カバンや靴など服飾雑貨の品質試験を上海と広州で実施できるのもボーケンの特色だ。 国内販向けのサービスも拡充した。今年、中紡標〈北京〉検験認証中心(略称CTTC)と業務提携し、CALマーク付き試験報告書を取り扱うことが可能になった。中国で最も権威のある検査・認証機関であるCTTCと提携することで日系検査機関としてボーケンの優位性が一段と高まった。

 「中国のモノ作りを支援する」というのが中国進出時から変わらないボーケンの理念。事故事例や試験技術・設備を紹介する「ボーケン展示会」を今年も上海、南京、青島、常州、広州で実施した。来場者は総計1300人を超えるなど盛況。ボーケンの認知度を上げると同時に、中国のモノ作り支援する。

ニッセンケン品質評価センター/中国に5拠点設ける/上海に微生物試験室も

 ニッセンケン品質評価センターが中国に進出したのは2001年、江蘇省南通市に南通事業所を開設したのが始まりだ。その後、04年に崇川事業所、05年に南通人民路事業所を設け、南通市に3拠点を設ける。一方、上海市に上海事業所を設けたのは04年。11年には山東省に煙台事業所を開設し、現在中国に5拠点の体制である。

 この9月には上海事業所に微生物試験室を新設し、抗菌防臭試験を開始する。「将来的には上海を中国の中核拠点にする」考えだ。

 日系検査機関にとって、中国市場での方向性は明確だ。一つは内販対応。2つ目が安全性・機能性試験の充実、さらに検品との一貫化である。

 ニッセンケンの場合、南通人民路事業所はCNASを取得し、内販向け試験が可能。また、南通、崇川事業所も8月くらいにはCNAS取得の予定である。煙台も取得の準備を進め、上海は提携先が内販向け試験を行う。

 一方、ニッセンケンは日本唯一のエコテックス認証機関として、「エコテックス規格100」に基づく安全な繊維製品の認証活動を推進。中国でも日系企業を対象に認証活動を進めており、日本だけでなく、中国3事業所で特定芳香族アミンの試験を行う。機能性試験も5事業所で対応する。検品も上海を除いて体制を整えており、4事業所でX線検査機を導入した。