JIAM 2012 OSAKA特集/進化するCAD&CAM
2012年09月14日 (金曜日)
アパレル製品のモノ作りにとって、縫製機器と同様に重要な位置を占めるCAD&CAM。いまや縫製産業に欠かせない存在となった。今回の展示会でも各社から進化を続ける最新機種が披露される。高品質で生産性の高いCAD&CAMが優れたコストパフォーマンスを実現する。
島精機製作所(4-361)/最新の自動裁断機を披露/デザインシステムと連携
島精機製作所は今回、コストパフォーマンスに優れた積層式自動裁断機(NC裁断機)「P―CAM1620」を中心にデザインシステムなどとの連携も合わせて提案する。
P―CAM1620は、裁断幅1600ミリ・生地厚20ミリと、コンパクトなサイズで消費電力が従来機の半分という、省エネで高いコストパフォーマンスに特徴を持つ。オプションでプロジェクターと高性能カメラを搭載し、映し出された原寸パターンを直接生地上で確認しながらパターンの位置確認やキズ・シワに対する位置調整が簡単に行える。
積層式自動裁断機(NC裁断機)P―CAM162(裁断幅1600ミリ、生地厚55ミリ)は、自動車関連で好評な二連強化目打ちにドリルくず突き出し・クリーナー装置などを搭載した高効率・高生産性・高品質を実現した。
これらの裁断機は納入の際に一体納入・分割納入が可能で、限られたスペースでも容易に設置できる。アパレル、ワークウエア、縫製メーカー、ニットメーカー、自動車関連、産業資材(炭素繊維、アラミド繊維、不織布、フィルター、フェルトなど)や家具関連などに適した高生産性を提供する。
「SDS―ONE APEX3」は、企画・デザインから生産・販売までのファッション関連のモノ作り全般をサポートする“オールインワン”の立体デザインシステム。今回、新たに立体上で柄合わせ・柄位置を決定後、二次元のマーキングデータが作成される機能を披露する。P―CAM(自動裁断機)シリーズとの連動で、ファッションアパレルの型紙設計から裁断までスムーズな生産の流れを提供する。
独自開発の「PMK2000」は、インクジェット方式により、世界最高レベルの印字速度で、最大2000ミリ幅までの描画印字に対応。長尺マーカーの描画も高精度でスムーズに出力できる。
東レACS(4-382)/「クレアコンポ」「人人人」進化/バランスよく提案へ
東レACSはアパレルCADソフトウエア「クレアコンポ」とクラウド型アパレルCAD「人人人人(ひとと)」の最新バージョン「3・5」を出展する。「3・5」はパターンメーキングなどの機能を向上、タブレット端末と接続しての画面確認など利便性を高める。人人人は2010年のリリース以来年2回バージョンアップしており、展示会でも前面にしていたが、クレアコンポのユーザーからの要望が高かったことから、両方をバランスよく紹介する構成とした。
クレアコンポはパターンメーキング(型紙作成・パターン作成)、パターン・型紙修正、グレーディング、マーキング、縫製仕様書までを一貫して行えるアパレル仕様のシステムで、トッシェアを誇る。人人人は世界初のクラウドシステムを採用したシステム。2DのCADを3Dのマネキンに着用、画面上でチェックできるなど最新の機能と、初期導入費を抑えられる従量課金制を強みに積極的にプロモーションしてきた。
クレアコンポはこの2年でバージョンアップなどは行われていなかった。同社は「クレアコンポのユーザーに安心いただけるよう進化を再開させながら、今後は『人人人』とバランスよく、よりユーザーニーズに沿ったかたちで提案していく」としている。
ブースでは縫製仕様書や加工指図書のデータを、画面内の帳票に書き込むように編集していく縫製仕様書作成システム「サイフォームマジック」も紹介する。
AGMS(3-302)/赤外線センサーで自動採寸/リードタイムを大幅に短縮
AGMSは赤外線センサーを使用した自動採寸システムを開発、学生服やユニフォーム向けソリューションとして提案する。
学生服やユニフォームの生産・販売では採寸の頻度が高い。しかし人間による採寸は個人差があり、ボディスキャナーは重量があるため持ち運びに不便だった。同社のシステムは小型軽量なセンサーを使用し、数秒で身長、総丈、股下、ズボン丈、肩幅、上位丈、袖丈などの測定が可能。同時に採寸データを起票し、制服の必要な枚数を算出、在庫照会までをスムーズに行う。不足分は速やかに追加生産を指示、従来に比べリードタイムを大幅に短縮できる。
JIAMでは「顧客のために一層役立つ」機能を結集。ファンデーション(下着)向けのグレーディングシステムは、数字を入れるだけでAからEまで対応するカップグレーディング機能、 予定枚数から最適なカットプランを抽出する工場向けシステムなどを紹介する。
外企業向けのファイル管理システムは、iPadで仕様書画面を開き、場所を選ばず対応できるスマート仕様。ウェブカメラを使用したシルエットチェックなど、現場で直感的に操作できるソリューションを提案する。
レクトラ・ジャパン(4-342)/黒基調に一新のデザイン/新機種を国内初公開
レクトラ・ジャパンは今回のJIAMに最新版Vector(ベクター)を国内初公開し、その全貌を明らかにする。最新版VectorFashion(ベクターファッション)シリーズに加え、カーシート裁断用、コンポジット裁断用の全シリーズが一新される。JIAMでは一枚切りから積層25ミリまで、多彩なアイテム・素材・裁断量に柔軟に対応できるVectorFashion iXを出展する。
新Vectorは、まず、デザインを一新した。黒を基調にした洗練されたデザインはテクノロジーを象徴。裁断機に求められる高品質・生産性・コスト削減におけるパフォーマンスはもちろん、今回は一つひとつのデテールに焦点を当て、一段と完成度を高めた。
例えば、今回新しく搭載されたダイナミック・バキューム・コントロールは、生地への圧力を常に一定に保つよう自動調整されるため、裁断した切り口から空気が漏れても、生地の保持が緩まず、裁断精度を維持でき、最大15%の省エネが可能だ。
また、裁断ヘッドに搭載されたカメラが、延反位置をモニター表示し、オペレーターは移動することなく、画面で位置確認ができる。その際、延反位置を確認済みでないと裁断が開始できないなど、人為的エラー防止に貢献する。
さらに新しく搭載されたタッチスクリーン式の操作パネルは、裁断工程に沿った操作を感覚的に、簡単に行えるため、さらなるエラー防止に貢献する。
レクトラでは、「リーン・マニュファクチャリング」の考え方を新Vectorの開発に導入した。ムダを省き、ミスを防止することで、アパレル裁断工程の改善に取り組む。
また、生産量や重ね枚数、稼働率が比較的少ない日本の縫製工場には、量産用の機能を制限したVectorFashion Q25を新たに提案、初期投資・ランニングコストの低減に貢献する。自動車用、コンポジット裁断用の機種もそれぞれ、特化した新機能を搭載し、同時に発表する。
デジタルファッション(4-231)/カスタムメード縫製システム披露
3Dパターン作成ソフト「ルックステーラーX」やデジタルファッションコーディネートシステム「ハオレバ/ドレスタ」などを展開するファッション関連デジタルソリューション企業、デジタルファッション(大阪市中央区)は、グンゼと取り組むカスタムメード縫製システムなど最新のデジタルファッションソリューションを紹介する。
グンゼと実用化したカスタムメード縫製システムは、消費者の体型を3Dスキャナーで測定し、さらに消費者は使用する生地や色柄、アパレルパーツを自由に選択。これらデータが瞬時に縫製工場に伝えられ、ガーメントの製造を開始する仕組みだ。高速計算によるデジタルツールと高速通信を活用することで完全カスタムメードのアパレル生産が可能になる。
「自動裁断や高速縫製など日本のアパレル生産技術は世界一であり、今回紹介するようなシステムは日本以外では不可能。デジタルツールを使うことで日本の縫製技術を生かす方法を提案したい」と森田修史社長は強調する。そのほか、最新のデザインシミュレーションシステムも多彩に出展する。
コニカミノルタ/進化する「ナッセンジャー」/ブランド発信も強化
コニカミノルタはインクジェットテキスタイルプリンター「ナッセンジャーPROシリーズ」で巻き出し・プリント・乾燥・巻き取り機能が一体となったオールインワン型「ナッセンジャーPRO60」を発売した。
最新機種は水系・独立駆動方式の新開発インクジェットヘッドを搭載。スピード性能と環境性能が向上し、サンプル作成、少量生産用に最適。最高プリントスピードは毎時60平方メートル、多品種・少量生産に適したプリントスピードを実現している。最大プリント幅は1850ミリまで、布厚は10ミリまで対応する。インクジェットテキスタイルプリンターとしては初の9色インクに対応している。
昨年開催された世界最大の繊維機械見本市「ITMA2011」での初公開を経て、海外で先行販売を行い、イタリア、トルコ、インドなどのテキスタイル産地で導入が増えている。
「テキスタイル捺染市場では単一品種生産向きの伝統的スクリーン捺染生産方式から、販売現場のニーズに対応するオンデマンド・多品種生産向きのデジタル捺染方式が、主流になりつつある」と同社。デジタル捺染は環境負荷の低減、流通在庫を削減するなどのメリットに加え、多種多様な新しいデザインによる高付加価値化も可能になる。
展示会などでは最終製品の展示を増やし「ナッセンジャー・クオリティー」として認知度向上も強化していく。
セイコーエプソン(5-331)/小型・軽量の新型インクジェット捺染機
セイコーエプソンはこのほど開発した新型のインクジェットデジタル捺染機「シュアプレスFP―30160」を披露する。同社のフラッグシップ機「モナリザ」と同等の高画質・印刷安定度を持ちながらも、モナリザの2分に1の体積、3分の1の重量を実現した小型・軽量のエントリーモデル。
描画部からベルト搬送部、生地送り、仮乾燥、巻き取り機構まで小型軽量化することで標準販売価格1500万円を実現した。インクジェットヘッドには、エプソン独自開発の「マイクロピエゾTFヘッド」を捺染機で初めて搭載することで1秒間に4万発ものインク吐出が可能で、高いドット着弾精度で高画質と高速印刷を両立した。540×720dpiモードで毎時35平方メートルの高速捺染が可能だ。
モナリザとデータ互換性も確保。このためシュアプレスFP―30160でサンプル生産し、モナリザで量産するといった運用も可能だ。シンプルな機構と操作性、メンテナンス性にも優れる。来年1月からの販売を予定する。