NI帝商香港/カンボジアに的/新縫製拠点作り加速

2012年10月19日 (金曜日)

 【香港18日=溝川彰】帝人フロンティアの香港繊維法人、日岩帝人商事香港は、アセアンでのアパレル生産能力を拡充する。現状はほぼ全量ベトナム生産だが、カンボジアにターゲットを定め、2013年には工場へのミシン貸与などを通じて協力工場を組織化する。

 同社の繊維取り扱いは年間約42億円。うちアパレル製品は37億円を占める。イタリアを中心とする欧州向けが50%、日本30%、米国その他20%という市場構成にある。今上期4~9月は欧州向けが前年同期比3割減と債務問題を背景に大きく落ち込んだが、米国、日本向けが堅調で全体として前年並みを維持した。

 商品は合繊機能素材を用いたメンズを中心としたカジュアルジャケットを得意とする。イタリア向けは1着8万~10万円という高価格帯の商品で、「小ロットの手の込んだ商品をこれからも手掛けていく」(治田兼一社長)考えだ。

 現在、ベトナムの6工場で主に生産しているが、生産背景を広げる。その候補がカンボジアで、すでに綿パンツで発注を始めた。(1)縫製工場労働者の賃金は残業代ほか付帯経費を含めて月額100ドル程度と最も安いミャンマーに比べても遜色ない(2)縫製以外に主な産業がなく労働者の確保が容易(3)欧州、日本はゼロ税率適用という税制面の有利さがある(4)外資100%の投資を認めている(5)工場で中国語、英語が通用する――などがメリットという。

 日本市場向けでは、14年からの消費税2段階引き上げを控えて、アパレル企業、小売店はよりコストの安い国での生産を求めている。消費税が引き上げられても小売価格は上げられないという空気が強い。「中国のコスト高を含めて新たな生産地を求める動きが加速する」(同)とみて、アセアンでの生産背景作りを急ぐ。